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第八十六話 駅犬車での旅

 駅舎へ行き、窓口でギルドカードを引き換え札を出して予約確認をしてもらい、確認後手荷物の検査を受けてから乗車札を受け取り指定された犬車の方へ向かった。ちなみに、予約した時に持ち込める荷物は元の世界に換算すると一人トロリーバッグ二つ分くらいまでの量でそれを重さは100kg以内、それを超える場合は別料金となると説明を受けていた。


「えっと、あれかな?」

「……ん~、多分、そう……じゃない?」

「レイ、その言い方――と言うか言葉の区切り方だと行程なのか否定なのか分かり難いぞ?」

「むー! あの犬車が、私たちが、乗るやつだと、思う!」


 そこには制服を着た駅員らしき中年男性がワゴン車より少し大きいくらいの四輪箱型馬車とそれを牽く大きなライドドッグを繋ぐ作業をちょうど終えた所だった。


「おはようございます。すみませんが、この札の犬車はここで間違いないでしょうか?」

「おはようございます。札を拝見します――はい、こちらで間違いございません。本日はご乗車ありがとうございます。座席は札の下の方に書かれている番号と同じ番号の座席がお客様の座席となります。お荷物がおありでしたら貨物室へ積みますが宜しかったでしょうか?」

「いえ、手荷物だけですので大丈夫です」

「それでは出発まで少々時間がありますのでしばらくお待ちください」


 一度自分が座る座席を確認してから外に出て改めて今日乗る犬車を眺めた。駅犬車の車両を牽くライドドッグはコーレアにいたメルよりも一回り大きい大型のライドドッグ(犬種? が違うらしい)、犬車の点検をしていたさっきの駅員に聞いたところ今回俺たちが乗る犬車を牽くのは雄のバズと言うらしい、メルはかわいい感じだったのに対してバズはシュッとしててかっこいい感じだ。まだ出発まで時間があったので許可を得てバズを撫でさせてもらう事にした。


「バズ~、今日バズが牽く犬車に乗せてもらうんだけどよろしくな」

「わう? ――わん!」


 これまたメルのフワモフな毛並みと違ってサラモフと言った感じだな。うん、これはこれで悪くない、悪

くないぞ! おっと、耳を触るのはダメか。

 

 耳をフニフニしようとしたら威嚇されてしまった。残念、もっと仲良くならないと耳は触らして貰えないようだ。ちなみにレイは自分の座席を確認してからそのまま自分の座席で休んでいる。


 さて、まだ撫でたりないけどあまりしつこく構いすぎて嫌われてしまうのも嫌だし、このくらいで我慢しておくか。


 その後、まだ出発まで時間があったので駅員に犬車の事などを聞いてみた。

 御者は御者台では無くライドドッグに鞍を付けて直接乗って操作するらしい、これはライドドッグが大型であるため犬車にある御者台からではライドドッグが邪魔になって前方がよく見えないためであるらしい。

 犬車は10人乗り(客席のみ)の大型の犬車で、メルくらいのライドドッグだと二頭立て、バズのような大型のライドドッグでも一頭立てなら今回乗る犬車のサイズが限界でこれを超えると二頭立てになる。

 犬車には商人の中年男性、両親と子供が二人の4人家族、若いカップル、姉弟(俺とレイの事らしい)の計9人が乗り(残り一人分は商人の男の荷物)御者1人、護衛は4人で犬車の左右と後ろに護衛が腰を掛けて乗れるタラップがあり普段はそこに座って辺りを警戒する。しかし、視界の悪い場所、魔物や盗賊がよく出るとされる場所、坂道(特に上り坂)などを通る場合は犬車の速度を少し落とし、護衛の者は歩いて辺りを警戒しつつ進む事になると説明してくれた。


 という事は実質15人乗りか、大型ライドドッグってずいぶん力持ちなんだな。


 ちなみに今回の俺の服装は一般的な町民服で、何かあった時の護身用としてナイフを一本(投げる用ではない普通の方)だけ装備して乗る。レイにスマホがあるのにナイフなんか持って意味があるのかと聞かれたが、ナイフと言ういかにも武器ってものを持ってる方が何となく安心できるし、とっさの時にはスマホを操作してる時間が無いかも知れないから用心のためにも持っておいた。

 駅員と話しているうちにいつの間にか乗客が揃い、もうすぐ出発する時間になる事が伝えられたので急いで犬車へ乗り自分の席に座った。


 レイは既に寝てたのか……もう十分すぎるほど寝てるはずなのによくそんなに寝れるもんだな。


 ライアスを出て街道を進んでいた。この日は魔物などと出会う事はなく、ちょっと街道が悪路で多少揺れるだけで特に問題もおきずに進むことができた。しいて言えば天気が良くその陽気で俺まで睡魔に襲われたくらいだった。レイはずっと眠ったままだったけど。


 窓から見える街道は結構な悪路に見えるのに犬車の揺れが思ったより小さい気がするな。魔道具かなんか使ってんだろうか?


 昼になったが駅犬車での移動の時は昼食は食べないのが普通らしい。しかし、普通と言うだけで食べてはいけないという事ではないという事だったのでコーレア村の宣伝のためと燻製肉がどう受け止められるのかを知りたいと言うのもあったので全員に配り(護衛の冒険者は交代で)感想を聞くことにした。


 護衛の男から燻製だとその独特の風味のため単品としてなら問題ないけど、スープとかの具材として使ったりする場合にはその独特の風味がちょっと使いにくいかも知れないと言うのと、酒が塗られてないから長持ちしないのではと言う意見がでた。


 なるほど、旅の携帯食ならいいけど食材としては使いづらいと。あと、アルコール消毒はちょっと盲点だったな。


 結局、そのまま食べる場合は干し肉より美味しいと言う意見が多かったが、やはり他の食材と合わせるとなると考えてしまうと言ったような意見が多かった。


 改良の余地ありだな……暇な時にでもいろいろ試してみるか……そうだ! せっかく冒険者がいるんだから外では普段どんな食事するのかとか聞いてみるか。


 護衛の冒険者たちに一般的な冒険者が野営などで良く食べるものはどんなものか聞いてみると、保存のきく固いパン、干し肉、木の実、ドライフルーツで水は水筒が一つ、水が足りなくなると水場で補給、水場がざんぞん近くにない場合は残りの魔力そを考えて行動に問題ない範囲で魔法で補給、現地で調達した魔物や野草を食べる時に使う岩塩なんかも使う事が多いらしい。

 料理ができるものが仲間にいる場合はパンを少なくして小麦粉を持って行き野営の時に調理する事もあるとの事だった。


 確かに料理できるなら小麦粉は便利かもしれないな。ま、俺の場合は『倉庫アプリ』があるから人目さえなければ食べるものに困んないけどね。


 その後も護衛の冒険者や他の乗客たちと情報収集を兼ねた世間話などをして今回の駅馬車に乗っている人たちの名前なども分かった。


 御者は中肉中背で30歳くらいの男で犬人族のラグルス。

 商人はちょっと恰幅のいい40歳くらいの男で山羊人族のウラグリオ。

 4人家族は全員虎人族で父親は細身で背が高い30歳くらいのスルジ、母親は中肉中背で同じく30歳くらいのファーミ、子供たちはか元気な姉の方が10歳のファミラ、おっとりした弟が7歳のスミラ。

 カップルはどちらも20歳くらいの兎人族で気弱そうな男がドルイで、ちょっと腹黒そうな女がミャリ。

 護衛の冒険者たちはリーダーがゴールドランクで他はシルバーランクの『大地の牙』と言うパーティで、リーダーの体格のいい両手剣の剣士の男が獅子人族のバルゥク、糸目で張り付いたような笑顔が特徴的な30歳くらいの猫人族の男が斥候のレバクルジ、ツリ目で巨乳の20歳くらいの猫人族の女が弓士のコミー、いつも半目で眠そうな感じの30歳くらいの獅子人族の女が魔術師のミリシス。

 ちなみに年齢に関しては子供二人は元気よく自己申告してきたので分かったが、それ以外はあくまでも見た目から俺がそう感じた年齢である。


「それにしても今まで乗ってきた馬車や犬車と比べて今回の犬車は圧倒的に揺れが少ないな」

「……ん……ぐっすり」


 そうか、レイはぐっすり寝てたのか……一応護衛はいるけど、冒険者としての危機感とかそう言うの無いんだろうか?


「……大丈夫……危なくなれば感じる」

「さすがにその辺は分かるんだな、ゴールドランクだもんな」

「ふふん」


 周りに聞こえない様に小声でゴールドランクと言ったらレイがふんすと胸を張っていたが、なんかむかつく。


「そんなゴールドランク様から見て護衛の人たちはどうだ?」

「う~ん……まだ戦ってる所を見てないから……正しく判断はできないけど……身のこなし方を見るとそこそこやりそうな感じを受ける……街道にそんな強い魔物が出る事はまずないはずだから……多分任せて問題ない、かな?」

「魔物は問題無くても、盗賊とかでたら?」

「……ゴールドランクとシルバーランクで構成されたパーティに……勝てるような実力があるなら盗賊になんてならないはず……もしなっていたとしてもたかが駅犬車一台を狙うなんてまずないし……もし大人数の盗賊団がこの辺にいるなら町で噂くらい出てたはず」


 なるほど、そう言われるとそうかも知れないな。


「……商隊じゃなく普通の駅馬車襲うくらいなら……そこそこの魔物でも狩って裏でさばいた方が儲かる……はず」

「あれ? でも、それなら盗賊なんてやってないで冒険者やった方がいいんじゃないの?」


 罪を犯した者は罪を償った後にその罪に応じた期間は冒険者になる事ができない、盗賊などになる者は冒険者になる事もできない重犯罪を犯した者が逃亡してなるか、生活苦とかではなく相手から物を盗む事に快楽を求めるものや、相手を痛めつけたり殺したりする事を楽しむような性格破綻者くらいらしい。

 ちなみに、どんなに重い罪をしても直接死刑になる事は滅多になく、奴隷に落としてから薬の実験や危険な高山に送り込んだり戦争が起こっている場合は敵の矢や魔法の盾として使われたりとある意味死刑より厳しい刑罰となるらしい。


「そういえばギルド規約に冒険者として登録するのに『犯罪歴が無い事』とか書いてあったっけ――あ、でもそれだとちょっとした盗み、例えばリンゴ一個盗んだとかでも冒険者にはなれないから盗賊になるしかないのか?」

「……いや、重犯罪以外は刑期を終えた後にその罪に応じた期間を過ぎると……犯罪歴が抹消される。ただし……殺人とか罪が重いものは抹消されない。

 ちなみに……刑期を終えて犯罪歴が残っている場合でも……十分に反省していると認められると……冒険者は無理だけど農場とか鉱山(比較的安全な方の)とかで……条件付きで雇ってもらえる場合もある……反省するような人は滅多にいないけど」


 おお、素面な状態でのレイの長台詞って初めて聞いたかも!


 一応、悪徳貴族などを狙う様な義賊(基本的に殺人はしない)と呼ばれる平民に人気のある盗賊もいるが盗賊全体からすれば髪の毛の先程もいないと言われているそうで、基本的に盗賊は死重犯罪を犯す様な凶悪な者たちの集まりと言うのがこの世界の常識らしい。

 盗品などの売買は闇ギルドと言われる組織が管理していて一部に貴族とのつながりまであるとの噂まであるらしい。


 

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