第八十二話 戦闘訓練
雪解けが進み、ライアスから他の町へ行く駅犬車が再開されるまであと少しとなってきた。
元々青狼族の件が無くても街道が通れるようになったら他の町へ行く予定だったので、もう少ししたら当初の予定通りコーレア村を旅立つための準備を始める事にし、旅に必要な物などは基本的にライアスで揃える事にして、今後の戦闘を考えてまずはレイに色々な魔法を教えてもらう事にした。
「……リン、呪文はいいの?」
「呪文はいらない、俺には呪文の意味が理解できないし、俺が使う魔法はスマホを通してだから呪文は意味がないんで実際に使って見せてくれるだけでいいよ。あ、騒がしくして魔物が寄ってきても何だし、威力とかは弱目で頼む――あ、魔法名だけはちゃんと言ってくれ」
「……うん、了解」
初めはレイが魔法を使う所を見て覚えようと思っていたのだが、スマホで動画撮影しておけば後で一人でも映像を確認して『魔法アプリ』を試す事ができると気が付きいったんレイには待ってもらいスマホの『カメラアプリ』の動画モード選び撮影準備をしてから改めてレイに魔法を見せて(撮影させて)もらう事にした。
「……とりあえずこんな感じ、かな?」
「ありがとう、参考になったよ」
「……そ、じゃ寒いから帰る」
「ああ、お疲れ――あ、待った!」
攻撃魔法だけしか見ていないことに気が付き、自分の身を守るための防御系の付与などの攻撃系以外の魔法も使ってもらった。
撮影終了後、寒いから帰りたいと渋るレイを説得し実際に魔法を使う所を見てもらい、おかしなところがあれば随時指摘してもらう事にした。
攻撃系の魔法は問題なく再現できたので、次に防御系を使う事にした。目の前に防御壁を出す魔法は問題なくできたが、体に鎧の様に纏わす魔法を試したが失敗、剣や防具を強化するような付与魔法も失敗、理由は分からなかったが魔力の鎧を作る魔法と付与系全般が使えないらしい。
「なんでできないんだろ?」
「……この魔力鎧って言う魔法は魔力消費が激しい、そのせいで出来ない可能性もあるけど……たぶん普通は自身の体に流れている魔力を外側に放出して仮想鎧として固定する魔法だけど……リンに魔力が無いから、できない?」
「あれ? これって魔力を纏う感じじゃないのか……確かにそれじゃ体内に魔力が流れてない俺には使えないか」
「……ちなみに、私はこれ苦手、一説には身体強化の魔法の一種だとも言われてる」
近接職が良く使う魔法で、攻撃された部位に合わせて瞬間的に展開して防御する、攻撃の時は全身に展開して魔力鎧で攻撃を弾きつつ相手へ近づいて攻撃するかそのまま体当たりする使い方が一般的らしい。
身体強化の一種でその運用法、猪突猛進と言った感じの攻撃法……ラウ向きの魔法な気がするな……魔力鎧をまとって敵につっ込んで行く姿が容易に想像できる。
「リン?」
「悪い悪い、なんか魔力鎧ってラウにぴったりの魔法じゃないかと思っちゃってな」
「う~ん、確かに、そうかも」
その後、確認のためもう一度動画を確認し一通り魔法を使い、おかしなところが無いかレイに確認して貰っておかしなところを修正していき何とか全て形となった。
「……もういい? 帰っていい?」
「ああ、助かったよ。後は自分で練習できるから帰っても大丈夫だ」
「……じゃ、がんばって」
レイのやつ、最近は他人の目が無ければ俺とは結構普通に喋れるようになって来たな。
――さて、練習するか。
レイが返った後も練習し、『魔法アプリ』で違和感なくイメージ通りの魔法が使える様になったころにはもう夕方になっていたの急いで村へ帰り何とか夕食に間に合わせる事ができた。
翌日は一人で昨日魔法の練習をした場所へ行き、俺がイメージ可能な銃火器を参考にしたオリジナルの魔法を作成する事にした。
まずはいつも使ってる弾丸系のバレット魔法を改良して、着弾すると燃え広がるナパームバレット、着弾すると周囲を凍結させるフリージングバレット、着弾すると爆発するエクスプロージョンバレット、放射状に広がるショットシェル、長距離スナイプバレット、非殺傷として当たると麻痺するパラライズバレット、ポイズンバレットは作れなかったと言うか毒効果のある魔法自体作る事ができなかった。
レイも使ってなかったし、毒魔法って存在しないのかな? 帰ったら聞いてみるか。
次に手榴弾と時限爆弾をイメージした魔法を『魔法アプリ』で作る事にした。まずは基本となる普通の手榴弾のイメージでハンドグレネード。
ん~、威力は問題ないけど、もっと爆発音を押さえた感じの方がいいかも知れないな。さて、この基本を元に応用して色々作っていくか。
爆発すると周囲を燃やすナパームグレネード、爆発すると周囲を凍結させるフリージンググレネード、爆発すると爆風で周囲を吹き飛ばすウィンドグレネード爆発と同時に無数の鉄針が周囲に飛び散るニードルグレネード。
あ、殺さずに捕らえるような捕縛用とか逃走用に使える感じの魔法もあった方がいいな。
非殺傷用として爆発はせずに効果だけ発揮する、閃光のフラッシュグレネード、音響のサウンドグレネード、その2つを足したフラッシュバン、煙幕のスモークグレネード、催涙弾を参考にしてティアグレネードはただの煙幕にしかなず、スモークグレネードと同じものになってしまった。
さらにそれぞれを地雷として使う応用魔法も試し、マンガかなんかで見た事のあるでシャボン玉爆弾を参考に空中浮遊機雷のフローティングマインも作り上げた。
とりあえず魔法に関してはこんなもんかな? なんか思いついたとしてもスマホにメモでもしとけばいいし、今日作った魔法の練習して今日は終わらすか。
作った魔法を何度も練習してスムーズに使えるようになってから練習を終了させて孤児院へ戻った。夕食後、レイに毒何かの状態異常を起こす魔法は無いのか聞いてみたら、麻痺魔法と言うのはあるけどそれは雷撃魔法の一種で俺が求めているような毒の効果による麻痺ではなく感電による麻痺であった。
「毒魔法は無いのか……」
「……私が知らないだけで……あるかもしれない……特に魔族が使う魔法は特殊なのが多いって聞くから……魔族になら……もしかしたらあるかも?」
「なるほど、魔族か……亜人族とかには使う種族いないのか?」
「魔法じゃなく……野生動物と同じ感じで……毒攻撃する種族は……いたはず……あと、一応……獣人族にも毒を持った種族がいる」
獣人族にもいるんだ。あれか、毒蛇的な種族かな? あれ、そう言えば蛇の獣人族っているのかな?
「ん~、何か蛇だと獣人と言うより亜人ってイメージが強いんだが……」
「……ん、亜人族に蛇人族がいる……毒持ちの獣人族は……一部の特殊な鼠人族」
「へ~、やっぱり亜人族なんだな。獣人族の毒持ちは鼠人族か……ん、俺、口に、出してた?」
「……ん『蛇だと獣人と言うより亜人っぽい』って言うようなこと……言ってた」
そうか、口に出しちゃってたか……それにしても鼠人族って、毒鼠なんかいたっけ? ――あ、いたな。確かブラリナトガリネズミとか言うモグラの仲間な奴が、どの程度の毒性化までは知らんけど確か毒持ちだったはずだ。
……それにしても、当たり前だけどこの世界についてまだまだ知らないことが多いな~……てか、結局何だかんだで『魔法アプリ』の方が使い勝手が良いから『具現化アプリ』をあまり使わなくなってきたな……。
翌日からは魔法練習ばかりしている訳にもいかなかったので学習教室や物作り、あとは学校建設用に森から木材の調達などをしていた。
何となく漫画とかでよくある高周波ブレードを思いだし、分からない所はダイロに相談したりして『錬金アプリ』で何本か作ってみたのだが、試作したものは振動が凄くて剣自体がそれに耐えられずに折れたり、折れなくても持っていた手が白蝋病になってしまったので、タクティカルグローブの機能をONにしてみたが魔力が結構な速度で減って行ったりと中々思うようにいかなかった。切れ味に関しても切りやすくはなるがマンガみたいに振り抜いただけで何の抵抗なく切れると言う風にはならなかったので、現段階ではこの剣は実戦ではとても使えるものでは無いと判断した。
おかしい、漫画とかだとあんなに簡単にできてるのにな~、何と言うかうまくできた剣でもチェーンソーみたいにしかきれなかったし……よし! どこが悪いのか分からないからとりあえず保留だな、これからは聞かれたら魔術師と名乗っておこう。
後日、ラウにも手伝ってもらい防御系のウォール系の魔法に爆発反応装甲のイメージを追加したものも作りラウに石を投げてもらって試す事にした。
「それじゃ壁出したら身体強化なしで石を投げてみてくれ」
「おう、兄貴! 全力でいいのか?」
「――まずは半分くらいの力で頼む」
「了解」
結果としては十分満足できる出来で、近接攻撃した相手をカウンターで攻撃するような感じの使い方もできそうだと思ってたより色々と使えそうだった。
思い付きで作ったけど結構使えそうだな。
先日あまり『具現化アプリ』を使ってないなと思ってたのが気になってきたので銃に関してはサイレンサーを付けても発砲音で魔物が寄って来そうなので基本は魔法を使う事にしたが、魔力感知能力が高い魔物などを想定して状況に合わせて『具現化アプリ』での戦闘方法もいくつか試してみた。
野生動物なら発砲音で逃げてくんだけど、魔物は逆に寄って来るんだよな……ん、待てよ。それなら手榴弾をできるだけ遠くに投げてその爆発音でやってきた魔物を離れた所から狩るとか、逆にその爆発を囮に逃げるとかできるか? あ、でもこれも魔法で出来るな。
他にはせっかく便利なタクティカルグローブがあるのでその能力を生かした投擲や剣の練習もする。
銃だと音が大きい、雪崩の可能性もあることから、弓、クロスボウやコンポジットボウなんかを具現化して試してみたが弓を引いて放つのとスマホをタップしてから魔法を放つのに時間的な差がほとんどなく、威力に関しては魔法の方が上であっため弓の使用は止め、遠距離に関しては魔法かタクティカルグローブ(右)による重量軽減効果を使った重目の石やナイフなどを投げる投擲の練習をする。
その後に行ったラウとの組手はウェアラブル端末を使わないとラウに全く勝てなくなっていた。これは俺が練習や鍛錬をさぼって弱くなったわけではなく、単純にラウが強くなったので勝てなくなっただけである。
「もうラウには簡単には勝てなくなっちゃったな」
「でも、魔道具を使われるとほとんど勝てないぜ? それに、兄貴には魔法もあるしよ」
ま~、その魔道具であるスマホが無ければ魔法も使えないんだけどな。てか、スマホが無ければ基本何もできない非力な一般庶民だ。
「その魔道具に頼らなくてもある程度自衛できるようになりたいんだけどな」
どっかに剣術道場みたいなのがあれば基本だけでも教えてもらった方がいいかも知れないな。
その後も暇を見つけては身体を鍛えたり魔法の練習をしたりして旅立ちの準備を進めて行った。




