第七十六話 ギルド出張所増築(三)
ギルド出張所増築作業三日目、この日は子供たち学習教室のためルカが抜け、代わりにレイがギルドの仕事を手伝う事になった。
「レイ、ギルドの仕事の手伝いとかちゃんとできるのか?」
「……外より中の方が温かいら……まだ頑張れる」
レイの言葉に本当にちゃんとやれるのかちょっと不安だったが、任せるしかないとして、ラウは大工達と一緒に床と天井の板を張るのと階段を作る作業をし、ダイロはギルド出張所の一階の増築部分と繋がる部分の壁を撤去する作業をし、俺はライアスのギルドへ窓に使うガラスや屋根瓦などを取りに行く事になっていた。運ぶ際、特にガラスは割れやすいから絶対にアイテムボックスに入れて運ぶよう念を押され、屋根瓦もガラスほどではないが割れる事があるので、余裕があればアイテムボックスに入れてくれとの事だった。
ちなみに天井と天井裏には、わらと防音防虫効果のある草を乾燥させたものを混ぜたものをを敷き詰めていくらしい。
「今日はライアスからそれらの資材を持って帰ってきたらリンくんの仕事は終わりです」
「兄貴、俺もついて行こうか?」
「おっと待った。おめぇさんは今日も俺たちの手伝いだろ! 勝手に仕事の変更されちゃ困るぜ」
「そうだぞ、ラウ。昨日帰る時に今日の仕事について確認してたのにちゃんと聞いてなかったのか? ま、とにかくそう言う事だからしっかり働けよ」
「……分かった」
ライアスのギルドへ行くと倉庫へ案内され、そこにあった窓ガラスと屋根瓦を持って帰る事にしたのだが、予想以上に屋根瓦が大量にあった。
そう言えばどれだけの量になるのか詳しい事確認してなかったな……しかし、屋根瓦は素焼きなんだな、ソリで運ぶと割れちゃいそうだし、ちょっと多いけど全部『倉庫アプリ』に入れて持って行くか……いや、でもあんまり多く物が入ると知られるのも……でも木が丸ごと2本入るんだからこれくらいなら……。
結局割れたら勿体ないと言う貧乏性な所が勝ち、倉庫にあった窓用のガラスと屋根瓦を全て『倉庫アプリ』へ入れ、その後食料品なども少量仕入れたがそれは『倉庫アプリ』には入れずに木箱に詰めてそれをソリに積み村へ戻る事にした。
道中ログウルフが何匹か出てきたが『ロックバレッド』でヘッドショットを決めて瞬殺した。
さて、このログウルフはどうしたもんかな? 倒したことは話さずに『倉庫アプリ』につっ込んどくか、それともソリのスペースを開けて積んでいくか……よし、ちょっと狭くなるけどスペース開けて積んでくか。
倒す時間よりソリのスペースを開けて積む方が時間がかかったが、それでもそれほど遅れることなく村に戻り、瓦は増築部分の位階に置き、ガラスはギルド出張所の方へ置いた。そのあと改めて増築部分を眺めてみるとかなりの大きさであることを実感した。
こうして改めて見るとなんか思ってたよりでかいな。どう考えても増築部分だけで出張所の倍以上あるんだけど……もう増築とか言うレベルじゃない様な気がする。
最早ギルド出張所が物置小屋の様にまで思えてしまった。時間も遅いので窓ガラスと屋根瓦を『倉庫アプリ』から出して今日の仕事は終わりとし、窓ガラスや屋根瓦の設置などは翌日する事となった。
レイに関してはどうなる事かと思ったがちゃんと仕事をこなしたらしい。レイはやれば何でもそつなくこなせてしまうタイプのようでちょっと驚いてしまった。ただし、ほぼ会話の無い状態だったのとゴールドランクの冒険者にこんな仕事を頼む事に気が引けていたこともあり、マルトとしてはかなり気まずかったらしいのだが、そこはレイだから仕方がないとあきらめてもらうしかない。
コーレアに来てからだらけた姿しか見てなかったけど一応高ランク冒険者なんだよな。仕事となれば一応はやる辺りは腐ってもゴールドランクの冒険者と言ったとこなんだろうか?
ギルド出張所増築作業四日目、この日俺は大人たちの学習教室をするため増築作業は休み、ラウは大工たちと間柱と壁部分に竹小舞(竹を格子状に編んだ物)を張る作業をし、ルカは引き続きギルド出張所での仕事、レイは午後から(盛大にごねられた結果だけど)ラウたちの仕事を手伝う事になっていた。
ったくゴールドランクの冒険者として少しは見直しかけてたのに、やっぱりレイはレイなんだな。
学習教室は午前中で終わり午後からはやる事と言えば孤児院の手伝いくらいでそれも今は間に合ってると言われてしまっていた。他に特にする事が無かったので何をしようかと昼食を食べながら考えていた。
さてと、なにしようかな~……あ、そう言えばこの前スマホのレベル上がった時にリュースへメールしようと思ってたのにすっかり忘れてたな……幸いこれといって急いでする事も無いんだし、忘れない内にとっととメール出しとくか。
メールには近況報告と元の世界の知識をこの世界で使ったけど問題ないのかと、今更ながら魔力が使える様にはならないのかも質問しておいた。
ま~どうにかできるんだったら初めからやってるだろから期待はできないな。さて、いい時間だし夕食の手伝いでもするか。
ギルド出張所増築作業五日目、大工の指示の下、屋根瓦を敷く作業を始める事になったのだが安全帯は無いのか聞いた所屋根から落ちる様な奴は大工は務まらないという返事が返ってきた。俺は大工じゃないんだけど? 別に高所恐怖症と言うわけじゃないけどこの高さは普通に怖いんですが!
ちなみにラウはこのくらいの高さなら別に落ちても大丈夫だと屋根から飛び降り空中で一回転して見事な着地を決めていた。
俺が同じことをしたらただの飛び降り自殺になってしまいかねないな。ま~、タクティカルグローブ(左)で盾を出すとか『魔法アプリ』で風魔法を使って落下速度を軽減するなどすれば行けそうではあるけど、好き好んで落ちたくは無いし、とっさにできるか分からない。
仕方が無いのでロープを腰に括り付けて屋根の一部にロープの端を引っかけてできるだけ下に目を向けない様に作業をする事にした。
一応確認したけどロープ切れないだろうな……こういう考えがフラグになってロープが切れて屋根から落ちてしまったりしてな。 ま、いざとなったらスマホとタクティカルグローブ使えば最悪死ぬ事は無いだろ。
結局屋根から落ちる事も無く無事に作業を終え、ギルド出張所で翌日の作業内容を確認していたときに、雨戸を作るという事だったので、二重にしてそれぞれ上下に分割させ下の部分を上にスライドさ下の部分を開放できるようにし、内側の下の部分は木枠に竹すだれを取り付け、網戸代わりのように使えると言う案を簡単な図を描いて説明してみた。
「成程、この程度なら割と簡単に作れそうだな。あ、でもこりゃ窓の方も同じようにスライドさせれるようにしなきゃいけねぇな」
「いいですね。これなら網戸を閉めたままでも下のとこをずらせば部屋に明かりや風を取り入れる事ができます」
多少の手間はかかるが実用的だという事で提案した雨戸は採用され、使い勝手がよければ村に今ある窓と雨戸をこの方式に変える事も考えるとの事だった。
ギルド出張所増築作業六日目、俺はライアスまで資材や備品などを取りに行き、大工達は外壁は防腐剤と塗料を塗った板を下見板張りをして、窓に雨戸を取り付ける作業を、この作業は骨がいるから大工たちだけでやる事になっていた。ダイロは家具の作製をしてルカはレイに教わりながら照明の魔道具の作製、ラウは力仕事が必要な場所を周る事になっていた。
今回ライアスから物は布団や大量の布類がメインで他には宿となる各部屋に設置するストーブと煙突なんかもあった。
荷物をソリに積んでギルドを出ると今回は魔物が出てくることも無かったので前回より早くコーレア村へと戻れた。ギルド出張所の倉庫へ持ってきたものを種類別に分けて棚などへしまっていった。
「リン君お疲れ様」
「お疲れ様です」
「今の作業終わったら今日はもう上がっていいからね」
「分かりました。それでレイとルカはちゃんとやってますか?」
「いや~レイさんは凄いね、あんなに手際よく照明を作ってく人始めて見たよ! ま~、作り方をすぐに覚えちゃったルカちゃんも凄かったけど」
この日の作業は終了となった。
よし、今日の作業終りっと。それにしても、レイって魔道具も作れたんだな。何気に多才な奴だ。
お、あれって土壁の上に板張ってんのか? 竹小舞作ってたから土壁になるんだろうなとは思ってたけどさらに板も張るのか?
「ちょっと見学して行っていいですか?」
「ん、ああ。邪魔になんねぇとこで見てる分には構わねぇけど……こんなの見てて面白いのか?」
大工たちの外壁作業が気になったので見学させてもらう事にした。壁は竹小舞を二重に張り、間に天井裏と床下に使った物と同じ物を入れ外壁はまず壁土を荒く塗り、乾く前に細長い横板を下から順に少し重なる様に竹釘で張る下見板張りをしていた。
聞いた話だと外壁に使ってる壁土は石灰のような物を混ぜる三和土に近い物のようだった。内壁に使う壁土は一般的によくある壁土らしい。
さすが本職、何気なく土を塗ってるように見える。あんな何気なく塗って行くのを見ると自分にも簡単にできそうな気になるけど、実際は難しいからあんな風に塗れないんだよな。
その後も左官職人並みの大工たちの職人技を堪能してから孤児院へと帰った。
ギルド出張所増築作業七日目、ラウは休日でレイとルカは昨日の続き、俺は大工たちの外壁を作る手伝い……と言っても外壁を作るのは素人では難しいので材料運びくらいしかできない。実際ラウも昨日は材料運びなどしかしてなかったらしい。
昨日の作業を見ててちょっとやってみたい気もするけど、絶対に邪魔になっちゃうからおとなしく材料運びだけしておこう。
ギルド出張所増築作業八日目、内壁は土壁でこれは大工たちが作業する、部屋を仕切る壁は土壁ではなく床や天井裏に使ったわらなどを詰めて板を張る事になっており土壁より簡単なので俺とラウがその作業をし、レイとルカはライアスから持って来ていた備品の確認と整理の作業をし、ダイロは食堂の厨房にかまどと排水口の設置をする作業をしていた。
内壁には外壁とは違って土壁だけで板は張らないんだな。てか、使ってる壁土も三和土のような物とは違うっぽい。
大工に聞いてみたら、内壁は粘土質の土、砂、藁、水で作った割と普通の土壁の材料だった。外壁に使った材料は秘伝の物なので弟子にでもならない限り教える事は出来ないと言われてちょっと残念な思いをした。
弟子にならないとダメなのか~……どうにかして教えて貰えない物だろうか。って、別に左官とか大工を目指してるわけでもないんだし、よく考えるとどうしても知りたいって程でもないな。
ギルド出張所増築作業九日目、俺とラウは内装床として板を張る作業をし、大工たちは部屋の扉の設置とストーブの設置場所を三和土を使って作り、それが終わったら内装床を張る作業をラウに任せて俺はストーブの設置を手伝った。レイとルカは各部屋に照明の魔道具を設置する作業をし、ダイロは厨房の方で石窯を作る作業をしていた。
石窯……ピザが食いたくなってきたな。
ギルド出張所増築作業十日目、俺、ラウ、レイは昨日張った内装床に天然樹脂を使ったワニスを塗る作業をし、ルカはギルド出張所で手伝いをし、大工たちはギルド出張所の方で壁や床の一部の傷んだ所を修復する作業をしていた。
へ~この樹脂を塗る事で床の保護や防水、防汚、防衝の効果があるのか、聞けば他にも板などに塗っていた塗料とかにも混ぜて使ったりと色々な物に使ってるって言うし便利だなこの樹脂。
ギルド出張所増築作業十一日目、足場の解体や細々とした作業をしてついにギルド出張所が完成した。完成と言っても実際には建物ができただけで一部内装や家具などの設置はまだ途中なのだが、それについては内装は大工がし、家具についてはダイロと一部の大工が制作中らしい。他に足りない物などは後日ライアスのギルドまで取りに行くことになっているらいいのだが……多分俺が取りに行く事になるんだろうな。
それにしても、元の世界と比べていい物かどうかというのもあるけど完成まで速かった。やっぱり魔法と言う存在がデカいんだろうな~、普通なら建材作るだけでも結構かかるはずだし。
とりあえず俺達への依頼はこれでいったん終了とななった。報酬については後日まとめて支払われる事になっていたのでまだ報酬は受け取っていないが、多少色を付けてくれると言っていたのでちょっと期待していた。




