第七十五話 ギルド出張所増築(二)
丸太の運搬が終わり、次に土台に使う石や敷石に使う分の小さな石などを川から拾ってくる仕事をする事になったのだが、大工の人に聞いた形と大きさの石を選んで取ってきたつもりだったがこれではダメだと言われ大工の一人を連れて再度川へ石を拾いに行った。
「ほら、ちょっとこれ見ろや兄ちゃん。この石とさっきの石じゃここの角度やこの部分が全然違うだろ? ほらよく見ろよ――〈15分経過〉――っつうこったから、これとそれは全然違うんだ。大体石ってぇのは同じ形の物は二つとねぇ――〈10分経過〉――だから石選びは大切なんだぞ」
「ヘ、ヘー、ナ、ナルホドー」
正直言って俺には同じような石にしか見えない、何がどう違うのか全く分からん! でも、何かしらこだわりがあるんだろうし、黙って石拾いを続けとこう。下手に聞き返したらさらに石に関する話が長くなりそうだし。
「――これ?「違う!」え、じゃ、じゃあこっちの方の石かな?」
「違うっつってんだろ! 何聞いてやがったんだよ! ……ったく、どうにも兄ちゃんにゃ石を見る才能が無ぇ様だな。
そういや兄ちゃんはアイテムボックス持ちだったな「はい」ふむ、そんじゃ俺が指示した石を片っ端からアイテムボックスに入れて行け、そんくらいなら問題なく出来んだろ」
「……はい」
石を見る才能ってなんだ? 全くもって欲しいと思えない無い才能なんだが。
結局、大工が指定した石を次々と『倉庫アプリ』へ入れて行き、何とかギルド増築分に必要な石を拾いを終わらす事ができた。
言われた石を『倉庫アプリ』に入れるだけの簡単な仕事だったのになんか思ってたより疲れてしまったな……主に精神的に。
時間的にこの後仕事をする事も無いだろうから村に戻ったら石を置いて孤児院に戻ってゆっくりと休もう……あ、みんなの様子を見てからの方がいいな。
村へ戻るとラウが製材が終わった木材を指示に従い用途別に積み上げている最中で、レイは魔法を使って増築する予定の場所に積もっている雪の排除をしており、このあと整地作業の手伝いもするらしい。
整地作業に使う魔法は製造魔法には入らないのかな? いまいち製造魔法と戦闘魔法の境界線が分からん……何が違うんだろうな。
「よう、レイ。頑張ってるな」
「……頑張り過ぎてる……明日は休みたい」
「んー、まぁ俺とラウだけでも大丈夫だと思うから明日は休んでいいぞ」
俺が明日は休んでもいいと言ったとたんレイはいきなり元気になり大工達が驚くほどの速度で整地を進めて行き、整地作業が終わるとすぐに孤児院へ戻っていった。
……いや、まぁ、ちゃんと仕事はしたんだからいいんだけど……初めからしっかり働いて欲しいもんだな。
とりあえず今日の仕事が終わったのでルカを迎えにギルド出張所へ行くと、マルトが疲労困憊といった感じでぐったりと机に突っ伏してるのに対してルカは平気な顔で働いていた。
「リン兄さん。お疲れさまです。あ、お兄ちゃんもお疲れ」
「ルカ、俺は次いでかよ!」
「マルトさん。大丈夫ですか?」
「ははは、大丈夫……とは言いにくいけど大丈夫だよ。いや~、それにしてもルカちゃんは計算速いし読み書きもちゃんとできて話し方も丁寧で聞きやすい、それに見た目もかわいいし年齢さえ成人に達してたらギルドの受付嬢になって欲しいくらいだよ。いや、むしろルカちゃんがギルドマスターになった方がいい位かも?」
何があったか知らないけど気落ちしているマルトに『倉庫アプリ』からリンゴジュースをコップに入れて出してやって明日の仕事の確認をし、そろそろ帰ろうかと考えていたらちょうど仕事の終わったラウが来たのでみんな揃って(レイは先に帰りやがったが)孤児院へと帰っていった。
「「「ただいま」」」
「あら、おかえりなさい。お仕事ご苦労様」
「レイのやつはちゃんと帰ってきてますか?」
「えっと、結構前に帰って来たわよ」
ちゃんと帰ってきてたな。って、寒いのが苦手なレイが散歩してたりどっか行ったりするはずもないか。
「そうですか。それで、レイのやつは今何やってるんですか?」
「たぶん……寝てる、かな?」
……レイ、仕事終わったから帰って来るのはいいんだけど、現在俺達はギルドの依頼をやってるからあまり孤児院の方の手伝いができないんだからレイもその辺を考えてちょっとは孤児院の方の手伝いをしろよな。まったく、レイは孤児院の居候と言う自覚が無さ過ぎだ。
「す、すみません手伝いもしないで、あとで言っときますんで」
「いえいえ、大丈夫ですよ。ま~、ちょっと掃除を手伝って欲しかったですけど、それも別に急ぐ程の事では無かったですし……」
「……レイは明日仕事が休みなんで孤児院の手伝いをするように言っときます」
夕食の後、部屋へと戻るレイを呼び止めて明日午前中は休んでてもいいが午後からは孤児院の手伝いをするように言い聞かせておいた。
なんか作業以外の事で(石の話とかレイの事とか)色々疲れてしまったな、明日速いんだしとっとと寝るか。
ギルド出張所増築作業二日目、大工達が持ってきていたギルドが設計士に頼んで書いて貰っていた設計図通りに加工した木材を組み立てる作業をする予定で、俺とラウはそれを手伝う事とになった。ルカは昨日と同じ様にギルド出張所の方で書類整理などを、そしてレイは前日の訴え通り今日一日休日となっていた。
「それじゃレイ。俺たちは仕事に行ってくるからお前は午前中ゆっくり休んでろよ~。ま、言われなくても休むんだろうけど、だらだらすんだろうけど。でも、いくらゆっくり休んでろと言われたからって一日中だらだらすんなよ? 昨日も言ったけど、午前中だけだからな! 午後からはちゃんと孤児院の手伝いをするんだぞ!
って事で行ってきます」
「「いってくるぜ(きます)」
「……いてら……もちろん……全力でゆっくり休む! 孤児院の手伝い……善処する」
全力でゆっくり休むってなんだ? そこはかとなく矛盾してる言葉な気がするが、レイが言ってると思うと何故か納得できてしまうな。
……『善処する』か、それってやらないパターンなんじゃないのか? 一応釘刺しておくか。
「おい、レイ。善処じゃなく、ちゃんと孤児院の手伝いするんだぞ?」
「……了……解」
レイが渋々ながらも了解したのを確認し、何時までもここで時間を取るわけにもいかないのでギルド出張所へと向かった。
「「「おはようございます」」」
「おはようございます。今日もよろしくお願いしますね」
お、昨日の様子からまだ落ち込んでるかもと思ってたけど、マルトは復活したようだな……また落ち込まないといいけど。
まずは今日行うそれぞれの仕事の内容についてマルトや大工たちと確認してから、ルカはそのままギルドの仕事を、俺とラウはルカと別れ増築現場へ向かう事になった。ま、向かうと言ってもすぐ側なんだけどね。
「お仕事頑張ってくださいね。特にお兄ちゃん」
「なんで俺だけ『特に』なんだよ!」
「ルカも頑張……いや、程々に頑張ってくれ」
ルカに頑張れなんて言ったら無茶しそうだからな。それにあまり頑張り過ぎるとマルトの精神が持たないかも知れないし……本気でギルマス辞めるとか言い出されても困るし。
増築現場に行くと既に整地した所に基礎となる礎石が敷かれていた。聞くと昨日俺たちが帰った後に土台となる石を敷く作業を終わらせており、今日は加工した木材をくみ上げて行く棟上げの作業をやる事になっていた。
木材の加工はダイロと大工の人達が行っており、俺とラウは加工が終わった木材を運んで指示に従って組み立て作業を手伝って行くこととなったのだが、ラウが組み立て作業をしてる時に力任せに無理やり組もうとして木材を割ってしまいそうになったので組み立て作業はさせずに加工の終わった木材を運んだり木材がずれないように抑えたりさせる事になった。
ラウは力任せの大雑把な仕事ならちゃんとできるんだけど細々とした仕事には全く向いてないんだよな……それにしても、こんな組み立てすらもラウの中では細々とした仕事に入ってしまうと言うのは何ともラウらしいと言うか何と言うか……。
ちなみに、今回の増築部分は2階建ての建物で、1階部分は食堂と職員の部屋、2階が宿として使う部屋とし、中庭も作りそこは訓練場として使用する予定らしい。
そして、柱の組み立てなのだが釘などを使わずいろんな形のほぞとほぞ穴による木組みで接合する建築工法で、昔TVで見た宮大工の特集のやつみたいだなと少し驚いてしまった。とは言っても、TVで見た時のような複雑なものでは無く簡単な構造の木組みではあったのだが。
その後も指示通りに組み立て作業が順調に進んで行き昼となったので昼食休憩に入る事にした。
「おう、お疲れさん。こっちゃぁ棟上げ分の木材加工が終わったぞ」
「お疲れ様です。こっちは1階部分が大体終わったとこですよ」
「そんじゃ休憩が終わったら残りの木材も持って行ってくれ。場所が空いたら今度は床と天井に使う板材を作ってく」
「了解です」
午後からもラウはそのままダイロの所で木材運びをし、大工達は竹で足場を組む作業、俺は引き続き棟上げ作業を続行、慣れてきた事もあり順調に作業が進み予想よりかなり早く棟上げ作業が終わった。
「ダイロさん、棟上げ終わりました」
「お、もう終わったのかよ。じゃ、雪が入らねぇように倉庫においてある白い皮を壁に張って行ってくれ、その間に大工たちとこの後の事を相談しとく」
ダイロが大工達と今日のこの後の作業をどうするか話し合った結果、ダイロたちはまだ板材が十分な量出来ていないのでこのまま作業を続行、俺とラウに関しては依頼分の仕事はきっちり終わらせているので、これ以上の作業をさせるとなると、別途依頼を出さないと行けなくなるのでとりあえず今日は当初の予定であった棟上げが終わっただけで十分だろうという事になり、片づけをしたら念のためマルトに確認して問題が無ければそのまま帰って構わないと言われ、すぐに片づけを終わらせ翌日の作業の確認をしてから、ギルド出張所の方へルカの方がまだ仕事の途中だったのでそちらの方を手伝って終わらせてからルカと一緒に3人で孤児院へ帰った。
それにしても、スマホとタクティカルグローブ(右)のおかげで重機いらずだな。ま、この世界だと魔法を使えば重機以上の仕事ができそうだけど……実際ラウは身体強化で片手で木材持ってたし、しかもそのまま木材を持った状態で足場さえも飛び越して2階まで飛び上がってきたりしてたしな。




