第七十四話 ギルド出張所増築(一)
ギルド増築に際して俺に手伝って欲しいとギルドから指名依頼が来たので、一定期間内に依頼を受けなければ冒険者ギルドから登録を抹消と言うのがあったのを思いだし、どうせならレイ達と一緒に受けてもいいか聞いた所、俺への指名依頼以外の他にも仕事はあるのでそちらを受けてもらえるのなら大歓迎だとの事だった。まずはどんな仕事なのかその仕事の内容を聞いてみる事に。
「それで俺への指名依頼の内容とレイ達ができるような仕事について教えて貰えますか?」
「ちょっと待ってくださいね」
皮紙に書かれた依頼書を数枚取り出し内容説明を聞くと、俺への指名依頼は増築に必要な木材の調達が主で、木材に関しては近場の木は学校建設のために使う予定なので、もう少し奥の場所でダイロが選んだ木なら伐採しても構わないと村長から許可を得ていたという事で、そちらの伐採と運搬作業と他にも細々した作業をして欲しいとの事だった。
「それでルカ達にもでもできそうな仕事はどんなのがありますか?」
「そうですね~、えーと、レイさんにはこれと、ラウくんにはこれと、ルカちゃんにはこれ辺りでどうですかね」
レイはダイロが倒す方向に印を付けた木を魔法を使っての伐採作業(当初伐採も俺に頼もうかと思ってたらしい)、ラウは木を切ってる間の周囲警戒とダイロの護衛(これに関しても俺に……って俺に頼りすぎじゃない?)、これにより俺は切った丸太を『倉庫アプリ』に入れて村へ運ぶ運搬作業だけとなった。
ルカに関してはギルドで書類整理(あくまでも部外者が見ても構わない物だけ)の手伝いではどうかという事になり、報酬金額の相談などをしてから孤児院に戻りレイ達と相談してから返事をすると言ってギルドを後にして孤児院に戻りレイ達に相談する事にしたのだが。
「――めんどい……リンが一人でやればいい……私は布団の中がいい」
「レイ、たまには運動した方がいいぞ。あんまりダラダラしたしかつ続けてるとオークになっちゃうぞ」
「そうだぜレイ姉、たまには外で遊ぼうぜ!」
「お兄ちゃん、それはちょっと違うよ。遊ぶんじゃなくて、働くんだよ。でもリン兄さん、レイ姉さんは私に魔法とか教えてくれてますから……」
「いや、それは分かってるんだけどさ。たまには身体を動かそうって、レイ! 人が話してる時に寝るんじゃい! 大体一日何時間寝てるんだよ! 起きてる時間の方が少ないんじゃないのか? 冬眠しそうな勢いだな」
「……冬眠いい……採用」
採用されてしまった……って、採用じゃねぇよ! なんかレイのダメっぷりが加速してってないか? 初めて会った時は無口ではあったけど、もうっとこうちゃんとしてたと思うんだけど……これからはもうちょっと厳しくしていった方がいいかも知れないな、とりあえずレイは強制労働決定だ。
その後ルカとラウにも話をすると、今は特に急いでするような仕事も無いし構わないとギルドの依頼を受けるのを承諾してくれた。
レイも『ラウやルカみたいに』とまではいわないけど、もう少しやる気を出して欲しいな……一応、冒険者としては先輩にあたるんだし、あんまりだらしない姿は見せないで貰いたい。ルカは大丈夫だろうけど、ラウが真似したら困る!
渋々ながらレイも了承し、翌日揃ってギルドへ向かい、そこでルカと別れダイロを加えて木材調達のため森で伐採をする事になった。
「それじゃレイはダイロさんが印をつけた木を切っていってくれ、その間ラウは周囲警戒しててくれ」
「……リンは?」
「俺は切った木をアイテムボックスに入れて村へ運ぶ」
「強い魔物が出るといいな~」
「ラウ、今回は狩りが目的じゃないんだから魔物なんて出ない方がいいんだぞ。それと、魔物が出たからってレイとダイロさんをほったらかしにして深追いするような真似はするなよ」
レイがいればどうにでもなるとは思うけど、ラウにはただ戦う以外の事も経験させたいからしっかり二人を護衛して貰おう。
とは言え、既に念のため辺りに索敵機能を使って魔物がいない事は確認済みなのだが、ある程度緊張感をもって仕事をさせたかったのであえて言わないでおいていた。そんな事を考えている間にダイロは次々と木に印を付けて行き、そしてレイが木を切り始めた。
「……ん『ウィンドソーサー』――あ」
「レ、レイ!」
レイが印のついた木を半透明な円盤みたいな風魔法で木を横一文字に水平に切ってしまい、切られた木は指示した方向ではなく、まるで狙ったかの様にラウとダイロがいる方へ木が倒れて行ったので慌てて『倉庫アプリ』を起動し、倒れて来ていた木に触れて『倉庫アプリ』に入れた。
「レイ、気を付けてくれよな。まさかの魔物じゃなくお前が原因で怪我人が出るとこだったぞ」
「……ん、ごめん……気を付ける」
レイはさすがに自分が悪かったと反省している様だった。
「おい、嬢ちゃん! 真横に切っちゃダメだぞ! ちゃんと印が示した方向に倒れるように斜めに切ってくれ」
「……結構めんどい……そして寒い……リンがやればいいのに」
「俺は運搬係でレイは伐採係なんだけど……逆にするか? レイがその丸太を一人で持って運んでくれるのか?」
「……私は……木を切るために……ここにいる!」
ここであえてラウの護衛係と交代するかとは言わない。ここら辺の魔物はそれほど強くないからレイなら瞬殺だろうから、護衛の方が楽そうとか言い出しそうだったからね。
その後レイはダイロが書いた印を見て倒す方向をしっかり確認してから、そちらの方へちゃんと倒れるように切っていた。
「そう言えば聞いてなかったんですけど、何本持って行くんですか?」
「言ってなかったっけか? ギルド増築分に今切ったのと同じぐらいのやつが6本と学校建設用についでに奥から切ってきてくれと村長から頼まれてる分が5本だ」
学校建設に使う木材は近場の林から調達予定だったが、どうせ奥で木を切るのなら近場の林は間引き程度で済ませて奥からも何本か切ってこようとなり話し合いの結果奥から5本を学校建設用に切る事に決め、運搬や加工にかかる費用は今回ギルド増築用に切った木の対価としてギルドが支払う事となっているらしい。
ちなみに、ダイロは村の仕事としてではなくギルドから雇われている形をとっているそうだった。
「枝とかは切らなくてもいいんですか?」
「本来なら運ぶのに邪魔になるからここで枝打ちしてからそりで運ぶんだが……おめぇさんがアイテムボックスで運んでくれるって事だから枝打ちせずに丸々運んで向こうで枝打ちする事になっとるぞ」
太い枝はそのまま木材として使えるし細い枝や葉とかは薪などに使うから結局全部村に持って帰る事になるそうだ。
まぁ、一々切った枝を集めて持って行くってのも面倒だから向こうで切って貰う方がこっちも楽だし切った時に出るおがくずも使えるからなおさら村でやった方がいいな。
あまり多くの丸太が入ると知られるのは問題があるだろうと思い、丸太を2本だけ『倉庫アプリ』に入れて俺は村へ先に戻り、レイはダイロが印を付けた木の伐採作業、ラウはダイロが印を全て付け終わるのを待ってからダイロの護衛をしつつ村に一緒に戻る事になっていた。
俺は村に戻りギルド出張所脇の広場にもっと来た木を出してすぐに伐採現場に戻った。何故かラウもついてきたけど。
「……リン、終わってる」
「レイ、その言い方だと俺が終わってるみたいに聞こえて嫌なんだけど」
「……リン、斬り終わった」
「いや、だからそれだと俺が――おい、ちょっと待て『切る』じゃなく『斬る』って……わざとか? 初めからわざと言ってたのか?」
「兄貴、どっか斬られたのか?」
「いや、斬られてないから。はぁ~……ま、いいや。アイテムボックスに木入れちゃうから二人ともちょっと待っててくれ」
ふと『倉庫アプリ』に丸太がどれくらい入るのか気になりダイロもいない事だし少し試してみると丸太5本が限界で6本目を入れようとしたら警告音と共にシューティンググラスにエラーと言う表示が出た。
5本か、結構入るもんだ。そして容量を超えて物を入れようとするとこういう風になるんだな……いまさらながら『倉庫アプリ』の最大容量を初めて実感できたな、もっと早く試しとけばよかった。とは言え、人前で大量な物を入れてる姿を見せれば余計なトラブルが起こると思うし気を付けていかないとい、け、な、い、し? ……あれ? でも今『倉庫アプリ』に結構物は入ってるんだから丸太5本が最大容量とは言えないか『倉庫アプリ』が空の状態なら丸太6本分以上かも知れない。
とは言え、ここで『倉庫アプリに』入ってる物を全部出して容量確認する気にもならなかったので丸太2本を『倉庫アプリ』に入れて戻る事にした。
「よし、待たせたな。終わったから村に帰ろう」
「おう!」
「……帰って布団に」
「レイ、帰ってもまだ仕事あるからな?」
村に帰ると最初に丸太を置いた時と同じの広場に丸太を出し、ダイロの指示の下レイとラウは枝打ちの手伝いをする事になり、俺はさっき切った木をまた取りに行く事になっていたが、とりあえず休憩する事になり
ダイロに枝打ちをした後はどうするのか聞いたら、ギルドがこういう大工仕事に特化した魔法を使う大工を雇って木を乾燥させ製材作業をするとの事だった。
魔法って便利だな~、本当なら切った丸太を製材するには一年くらい乾燥させるとかするはずなのにな。てか、戦闘関係以外の魔法使いもいるんだな。
こういう魔法は製造魔法と呼ばれているが魔法を使える者のほとんどは冒険者か国に使えるので製造魔法の使い手と言うのは戦えるような魔法を使う事ができない者がほとんどだと言う。
冒険者が小遣い稼ぎでこういうことしないのか聞いた所、生活に使うような魔法ならまだしも本格的な製造魔法を使うのは戦闘をする者のプライドが許さないという事で、戦闘魔法と製造魔法を両方覚える者は余程の物好きを除いていないらしいく、そんな物好きはバカにされがちだという事だった。
どっちかというと俺は戦う事に魔法を使うよりこういう生活に根付いた事の方に使った方が有意義な魔法の使い方だと思うんだけど。
もしかしたら、この世界の技術が発展していないのはこういう意識の違いが原因なのかもしれないな。
「それじゃそろそろ仕事再開すっぞ」
「俺は残ってる丸太をどんどん運んできますね、レイとラウもしっかり頼むぞ」
「おう!」
「……」
ラウは元気よく返事をしていたが、レイはいかにもやりたくないと言う顔で返事もしなかった。それでも、レイも一応冒険者なんだし受けた仕事はちゃんとやるだろうと信じ俺はまた丸太運びの作業に戻っていった。
ちなみに丸太運びは俺だけでレイとラウは製材作業などの手伝いとなっていた。




