第三十七話 手袋はチートアイテムでした
翌日、西門の先にある草原でラウに狩りをさせて、俺は林の方へ移動して周囲に人がいないのを確認してからタクティカルグローブの機能実験を開始した。
まずは、どれだけの防御機能があるのかを試すべく大木の枝にロープをかけて、そこに直径20cm、長さ50cmほどの木を括りつけて鐘突き棒のようなものを作り、振り子のように勢いよく揺らして左手のグローブで棒を受け止めてみた。
こんなの普通に受け止めたら吹き飛ばされたり骨折するはずなんだけど……当たった感覚はあったけど、思ってたほど衝撃を感じなかったな。
試しに小さく揺らして右手で受け止めてみたらめちゃくちゃ痛かった。次に、棒に短剣をつけて揺らしグローブで受けてみると短剣の刃がタクティカルグローブに刺さることなく手の平で止まっていた。
おお、防刃能力も高いな。魔力も残ってるし、もっと大きく揺らしてみるかな?
ちょっと怖かったが、棒を大きく揺らしグローブで受け止めてみると――『バキッ』と大きな音がして棒が割れた。
「え? えええーー! わ、割れたぞ!」
あっれ~? まさか割れるとは思わなかったな……ん、割れた? ……ちょっと、あそこにある大岩で試してみるか。
近くにあった高さ2mほどある大岩を左手で思いっきり殴ってみると――岩に左手がめり込み、当たったとこを中心にしてヒビが入り、そして岩は砕けてしまった。
……これって、どういうことなんだろうな。防御機能があるとはあったが、攻撃に使えるなんて情報はなかったんだが……てか、衝撃吸収って攻撃を受ける時に対してだけで、こっちから殴るときは衝撃を与えれるんだな。
ま、まぁいいや、防御だけかと思ってたけどこれなら攻撃にも使えそうだからちょっと試してみるか。
タクティカルグローブを攻撃に応用できるか試してみることに決め、相手になる魔物はいないか探してみることにした。
魔力探知で魔物を探してみると、ちょうど近くにグレーウルフらしき反応が三つあったので、タクティカルグローブだけだとちょっと不安だったので一応右手に短剣を持って戦闘をしてみることにした。
こちらに気づき突っ込んできたグレーウルフを右にかわし、首に左手の手刀を思い切り叩きつけたら地面まで突き抜けてグレーウルフの首を半分ほど切断してしまった。
は? 『気絶すればいいな』程度に思って手刀を叩きつけただけなのに、なんで切断? あ、まだいるんだった、危ない危ない。
残りの二体を見ると、仲間が倒されたことで警戒しているのか一定の距離を取って唸り声を上げて威嚇してきたいたが、一体が右の方へ移動したのでそちらを見ていたらその隙にもう一体の方が飛びかかってきた。
飛びかかってきたグレーウルフに対して左のカウンターパンチで頭蓋を砕いて倒し、その隙をつくように後ろから近寄ってきて嚙みつこうとしていた最後の一体に対して身体をひねって左の裏拳を放ったが後方に飛びのかれかわされてしまった。
しばし睨み合っていたがグレーウルフが突然草むらに走り出したので、逃げたのかと思ったら木々の間を隠れながら左に大きく回り込んでから一気に飛びかかってきて左前脚の爪で攻撃してきたので、左手で受け止めて力を込めて握ったらグシャっと簡単に握りつぶせてしまった。
左前脚を潰されて逃げようと暴れ出したので頭を左手で上から地面に押し付けてそのまま爪を立てるように指に力をこめたら指がズブズブと肉を突き抜け頭蓋まで達し、そしてバキッという頭蓋の割れる音と共にグレーフルフは絶命した。
……やばい、これのどこが防御用だよ……かなりのチート品だぞこれ。だけどスマホの魔力が結構減ってるな、魔力の使用量を抑えるように使わないと魔力切れになっちゃうな。あ、他に魔力吸収の機能もあったんだけ。魔力か……そういえばラウが魔法使ってるとこってみた事なかったけど使えないのかな? そういえば『あんな長い詠唱呪文覚えれねぇ!』とか言ってたっけ。簡単なのでもいいから何か魔法が使えるなら実験を手伝って欲しいんだが……もうすぐ昼だし、昼食を食べてるときにでも聞いてみるか。 ラウを呼び、昼食を食べて終わってから簡単なのでいいから魔法が使えないか聞いてみると、前に使った時には戦闘で使えるほど威力がなく、無詠唱もできなかった。さらに、その詠唱文も今はもう忘れてしまったから使えないとのことだった。
「なぁ、火を出すくらいならできないか?」
「そのくらいならできるけど、正直言って『着火』よりちょっとすごいくらいのもんだぜ」
それでいいからと火を出してもらうと、ライターの火くらいの物だった。その火を魔力吸収を念じタクティカルグローブで触れると火が吸い込まれるように消えた。
「な、なんだよそれ! あ、兄貴、いったい何が起こったんだ?」
「えっとな、これも秘密のことなんだけど、このグローブでお前の魔法の魔力を吸い取った」
「なぁ兄貴、俺は魔法に詳しくねぇんだけど、魔法って吸い取れるものなのか?」
「……多分、普通はできないんじゃないかな?」
これ、リュースは気が付いてなかったのかもしれないけど使い方によってはかなりチートな手袋だぞ。まだ試してないけど、飛んできた魔法を防いだり吸収して無効化できるんじゃないかな? ま、防御できる限度があるので過信は危険だろうけどな。
午後からラウは狩りを続行、俺はタクティカルグローブの機能実験をちょっと休んで林を探索することにした。
いや~、今まで狩りとかスマホの実験とかしててここら辺をじっくり探索したことなかったんだよな。よく見ると食べられそうな木の実や野草が結構あるし、一応『鑑定』で毒がないか確かめてから少しとっておこうかな、ルカへの土産にもなるし。
食べれる木の実や果実、山菜なんかを採取して『倉庫アプリ』に入れていると、アマヅラのツタを発見したので少しだけ切り取って『倉庫アプリ』に入れておくことにした。
まさかこの世界にアマヅラがあるとはな、これならカエデやシラカバも探せばあるんじゃないか? って、季節が合わなければ見つけてもダメか……あ、そういえばこの世界っていうか、この地域に四季とかあるのかな? 見た感じちょっと葉が色づいてきてるから初秋っぽくは感じるんだけど……夕食の後にでも二人に聞いてみるか。
その後も山菜採取や出てきたボアなど狩ることを帰る時間になるまで続けて、ギルドで依頼の受注と報告、肉と魔石以外で売れる素材の買い取りをしてもらい、途中で夕食や食材を買ってから宿の部屋に戻り夕食を食べた。
「なぁ二人とも。ちょっといいかな?
「「なんだ(でしょう)」」
「この世界に季節ってのはいくつあって、どんな感じのがあるんだ?」
ガウリィオ大陸で住んでいた地域と、ゴラウしか知らないけどという前置きはあったが春夏秋冬がちゃんとあり、冬には雪も降るらということを教えてくれた。
四季あるんだな~何月から何月までが春とか何だろうな――ん? ……あ、そういえばスマホに『カレンダーアプリ』あったな……別に要らないアプリだと思って存在忘れてたな。
『カレンダーアプリ』を起動して確認すると今日は8月12日(金)だった。そして、四季の事をルカに聞いてみると。
春は3月から5月、夏は6月から8月、秋は9月から11月、冬は12月から2月と、元の世界と微妙に違った。
その後、ラウはルトがついて勉強、俺は『倉庫アプリ』内のアマヅラを錬成した樹液を鍋に入れ煮詰めてアマヅラシロップっていた。そしてシロップが完成したので三人で味見をすることになった。
「甘ぇ……なぁ、兄貴。これ本当にさっきのツタから作ったのか? ツタが甘いってなんか変だな」
「リン兄さん。これ優しく上品な甘さで、とても美味しいです!」
結構好評かな? さらりとした甘さで、後味はすっきりで雑味なし。砂糖やハチミツとも違う独特な甘みのあるシロップって感じだな。初めて作ったけど思ってたよりうまくいってよかったな、この分だとサトウカエデを見つけれればメープルシロップもいけそうだ。
さて、甘いもの食べたからしっかり歯をきれいにしとかないと虫歯になっちゃうな……あ、歯磨き! そういえばこの世界の歯磨きに使う歯ブラシって作りが雑でしっかり磨けないから今まで身体ごと『浄化』かけてたけど、歯ブラシ作ってみるかな~?
歯ブラシと言う新しいモノづくりをする事に決めてこの日は就寝することにした。
翌日はタクティカルグローブの使い方に慣れるために、地上で狩りを行っていた。そしてその帰りに。
あ、そういえば歯ブラシ作ろうと思ってたんだっけ……何か歯ブラシに使える素材とかないかな? そういえば、元の世界で豚毛とか馬毛の歯ブラシがあるって聞いたことあったな。馬はいるから手に入るとして、豚か……豚……あ、オーク! オークの毛なら代用できるかもしれないな。雑貨屋で歯ブラシの柄になる物かって後で作ってみるか。
そういえば、歯磨き粉もいるよな? なにがいいか……んー、ホタテの貝殻を粉にして出来た歯磨き粉ってのを聞いたことあったな。市場の方で貝殻を手に入れて錬金すれば粉にできるだろう、そこに塩も少し加えればいいか。
「兄貴……また変なこと考えてんだろ」
「ん、いや。別に変なことは考えてないぞ? それより夕食を買うついでに雑貨屋寄ってくぞ」
市場で海産物を売っている所に行きホタテの形などを説明して近いものを見せてもらいもらえないかと聞いてみると。
「兄ちゃん。こんなゴミ欲しがるなんて変な奴だな、くれてやってもいいんだけどよ……さすがに、なんか買ってってくれねぇとなぁ」
『倉庫アプリ』に入れておけば鮮度が落ちることもないので、ついでに良さそうな魚介類をいくつか選んで買い、貝殻を大量にもらうことができた。
ついでに調味料や食材をなんかも色々買い込んでおくかな~。ラウは肉が好きだから多めに買って時間を見つけて調理しておこうかな。
露店で夕食用にいくつか料理を買い、雑貨屋でも材木や鉄板などを買って宿に戻り、食事の後はいつも通りラウはルカと勉強、そして俺は歯ブラシと歯磨き粉の作製をすることにした。
作製っていってもな~『倉庫アプリ』に入ってる材料を錬金するだけで、ある程度作れちゃうから簡単なんだよね。簡単すぎてついつい色々作りたくなっちゃうな。とか思ってる間にできたな。
「なぁなぁ、二人とも。ちょっとっといいかな?」
「ん、何だ兄貴。今度はどんな変なもの作ったんだ?」
「リン兄さん。いつも見たこともない変なもの作るからちょっと楽しみです」
なんか二人ともひどくね? 『変』とか言うなよな……まぁ、この世界の人から見たら『変』でいいのかもしれないけど……結構傷つくぞ。
歯ブラシと歯磨き粉の使い方を説明し、寝る前と朝起きてから歯磨きをすることを日課にするように教えた。




