第二十話 デイジーたちの帰郷
ライラ一家を見送りった後ギルドへ向かい、とりあえずデイジーにリュースからもらった魔法のことを内容はぼかして話すことにした。
「デイジー、ちょっとリアンナに試したい治癒魔法があるんだけど……できれば他言無用で」
「それでリアンナが治る可能性があるならやってみて欲しいけど危険はないの?」
「その魔法がたとえ失敗しても副作用が無いことは保障するよ」
「…………うん、わかった。お願い」
悩みつつもデイジーは俺を信用してくれたみたいだし、何とかその信用に答えたいところだけど……俺はただリュースからもらった治癒魔法を使うだけだからな……。
診療所に移動しスマホを出してリュースにもらった治癒魔法をリアンナに使うことにした。『魔法アプリ』にあった魔法は『#@¥”$・』となっていて全く読めなかったんだけど魔法名をタップすると頭の中に使い方が流れ込んで来たので、早速リアンナに治癒魔法をかけると、リアンナの身体が淡く光り、光が収まった後リアンナの様子を見たが症状には変化は見られなかった。
「効果が見られないか……でも、すぐに効かなくても一ヶ月は様子を見ないとわからないからまだ諦めないでくれ」
「分かったわ。これで少しでも治ってくれるといいんだけどな……」
その後、午前中は昨日と同じようなと基本的な修行をし、昼食を食べていたときにデイジーとの話の中で午後からは実際に魔物と戦闘してみよかという流れになったので、食べ終わったら武器など必要な物を買い出しに行くことにした。
色々と武器を試してみた結果ロングソードですら筋力が足りず重くて満足に扱えそうもなかったので結局剣はショートソードを使うことにし、槍は150cm程の短めのものに穂先が両刃のナイフみたいになったものを選んだ。防具に関しては今のままでも問題がなさそうだったのでそのままということになった。ちなみにショートソードでの戦い方も何故か短剣術の内に入るらしかった。
「ただ魔物と戦うって言うのもなんだから、ついでに依頼がないか見て行かない?」
「分かった。どんな依頼を受けるのかはデイジーに任せるよ」
結局受けた依頼はレッドボアの牙x5収集とロックリザードx3討伐の二つで、生息地は北門の先にある岩場だったんだけど、デイジーがいうには俺の剣の腕ではまだちょっときついかも知れないということで、とりあえずは途中で弱い魔物相手に練習してから依頼をこなそうということになった。
北門を出て少し行った先の草原で、まずはスライムやアルミラージを探してショートソードで戦うことになった。
スライムとの戦闘で剣でポインターが使えないか試してみることにした。結果、いつものレーザー光とは少し違う揺らいだ光の筋のようなものが身体から少し離れた所から狙った場所に出ていて、それをなぞるように剣を振るとある程度イメージ通りに攻撃ができた。
これはいいな! 剣だとポインターは意味が無くて使えないかと思ったけど結構使えるじゃないか。
その後も魔物相手に剣とポインターを組み合わせた戦い方を練習していると、初めは揺らいでいた光の筋が次第にはっきりした線となって見えるようになってきて攻撃のキレが増したように感じられ、慣れてきたのでいよいよ岩場の方へ向かうことにした。ちなみにシューティンググラスを一々切り替えるのが面倒なのと、目線で動きを読まれないんじゃないかという理由でサングラスモードしか使わなくなっている。
岩場に移動し、まず初めに戦ったのはロックリザード、名前の通りで岩の鎧をまとったような恰好をしていたトカゲで以後気はそれほど早くなかったのだが、この岩の鎧が硬くて攻撃が通らず、逆にこっちの手が痺れてしまい槍でも倒せそうもなかったのでとりあえずハンドガンで倒してしまおうと思ったのだがハンドガンの弾丸すら弾かれてしまい焦っていた所をデイジーの援護で立て直し、水の魔法が効きやすいというアドバイスをデイジーから聞いて『魔法アプリ』に『水の矢』と打ち込み画面をタップし、ロックリザードの眉間目がけて『アクアアロー』と唱えて魔法を撃つと、さっきまでの硬い岩が嘘のようにあっけなく『アクアアロー』が貫通して倒すことができた。
「う~ん、やっぱりダメだったか~。いや、私だと追い込まれた時に闘気が使えたりしたことがあったからリンも同じ状況になったらもしかしてと思って、あえてロックリザードの弱点とか闘い方言わなかったんだよね……ゴメンね」
「デイジー……先に説明してくれよな。て言うか、俺は魔力ないんだからどんなに頑張っても闘気は使えないって!」
この世界では魔法や能力などが一度使えたことがあるだけでは習得したことにはならないらしいく、理解し意識して使えるようになって初めてその力を得れるということなのだが、偶然でも一度使えればきっかけくらいにはなるとのことだった。
それにしてもブロンズクラスで倒す様な魔物になるとハンドガンが通用しないのも出てくるんだな……闘気が使えれば武器強化できるのにな~……待てよ、闘気はダメだけど魔法なら武器とかに付与魔法とかできないかな?
まず、ハンドガン(CZ75B)を具現化し、『魔法アプリ』を使ってハンドガンに多種の属性付与を試し、ロックリザートを撃ってみた所、急所を狙えば一発で倒せたので威力を上げることには成功したのだが……。
『具現化アプリ』を起動してハンドガンを出し『魔法アプリ』に切り替えて打ち込みハンドガンに属性付与をすると言う方法だと、手順が多く使用可能状態までに時間がかかり過ぎるため、相手がこちらに気が付いてないときならいざ知らず、相対した時には到底そんな事をしている時間は無いため使い所が限られるものだった。
「へぇ~魔力付与もつかえるんだ~。便利だね」
「便利だけど、攻撃までに時間がかかりすぎるんだよね……あ、念を押すようで悪いんだけど魔道具の能力のことは他言無用でお願い」
「分かってるわよ。死んでも誰にも言わないから安心して、どうしてもっていうなら誓約書を書いてもいいわよ」
「いや、デイジーを信用するよ」
デイジーのことは信用するとして……魔力付与で上がった威力は申し分ないんだけど、とっさのときに使えなそうだから急襲もしくは狙撃以外だとちょっときついかもな、何かいい方法はないか?
色々考えた結果、『具現化アプリ』で『CZ75B火』と打ち込んでロングタップして試してみたが、エラーとなってしまい失敗してしまった。
それならいっそ『魔法アプリ』単独でどうにかならないかと『ファイヤーアロー』の矢の部分を銃の弾丸に変換してイメージしつつ『火の弾丸』と念のため威力を押さえたイメージで打ち込み『ファイアバレット』と唱え魔法を放つと、ロックリザードの頭に見事命中貫通し倒すことができた。近づいて確認してみると、眉間から後頭部へ直径約5cmほどの穴が開いていて、スマホを見てみると今の魔法の使用で『ファイヤーアロー』の二倍近い魔力を使ったようだった。
う~ん、なんか魔力が結構減っちゃったし、もうちょっと効果的な攻撃方法を考えないといけないな。てか、こんな魔法の存在は情報にないから多分オリジナルだよな? こんなことできるなんて『魔法アプリ』の説明になかったんだが……ま、便利だからいいか。
「何か名前が違ったけど、今のって『ファイヤーショット』とはどこが違うの?」
「似たようなもんだよ」
なるほど『ファイヤーショット』か……確かに小さい火の塊を敵に一直線に飛ばすというのは見た目が同じかもしれないな。
その後もロックリザード相手にあれこれと試して十体を倒す頃にやっと威力をある程度維持しつつ貫通力を押さえ魔力の消費も少ない『ファイヤバレット』ができるようになったので、今後は強そうな魔物相手には『〇の弾丸』火だと火事の危険があるかも知れないから土か風で戦う事にして、残りの依頼であるレッドボアも依頼の牙x5は槍を中心に使って倒し町に戻りギルドで依頼報告した。
それから三週間ほどは、午前中はギルドに行きリアンナの様子を見てから演習場でデイジーと修行し、午後からは依頼をこなしつつ魔物とできるだけ近接武器での戦闘を心掛けて戦うという毎日を過ごしていた。
そんな日々の中、リアンナの容態が徐々に改善して行き、目に生気が戻り、自分のことはできるくらいにはなっていて、少しづつではあるが会話することもできるようになって来ていた。ある日の訓練終わりに、デイジーに話しがあると夕食に誘われた。
「リンの修行もすでに私がいなくてもいいくらいに強くなったし、リアンナもだいぶ回復してきたからそろそろ故郷に帰ろうかと思ってるの」
「そうか……ま、リアンナのためにも故郷に帰って療養した方がいいかもな。で、いつ頃故郷に帰るんだ?」
「準備とかもあるし、一週間後くらいかな?」
デイジーに故郷に戻る前に『倉庫アプリ』にあるダルクの首を故郷で弔ってもらうために渡せないか聞いたところ、デイジーはアイテムバックなので入らないがリアンナならアイテムボックス持ちなので入るはずなんだけど、まだそれを頼めるような精神状態じゃないからもうちょっと様子を見てから相談してみるということになった。
ちなみに俺の修行の方は、無理な鍛え方をしてアキレス腱を切ってしまって、それを『魔法アプリ』を使って『回復』で治した時に『これなら身体が壊れても治せるんだから限界超えて鍛えてもいいんじゃね?』と思い、骨折しようが脱臼しようがお構いなしに『魔法アプリ』で治す、鍛えて壊す、また治すということを一日に何百回と繰り返し、ブロンズクラスと言って恥ずかしくないくらいには強くなることができていた。
デイジーに言わせると自殺行為で変態的な方法だとかなり引かれていたけどね。それで、自殺行為とはどういうことかと聞いてみると、普通の回復魔法は筋肉痛まで回復させることはできないらしく、大体そんなに魔法を使ったら疲労で倒れるのが普通らしかった。
何故だと色々考えた結果、これはこの世界の人は筋肉痛を疲労と認識しているせいで、俺は筋肉痛は筋肉の損壊から起こっているものと考え、その筋肉を修復することをイメージして『魔法アプリ』で『回復』を使っているから回復できているということに思い至った。それに、『魔法アプリ』だといくら魔法を使っても疲れるということが無かったので何も考えずに回復魔法を使いまくっていた。しかしこれからは少し注意して使って行った方がよさそうだ。
それから二日後の朝、いつものようにギルドへ向かい、診療所の病室にリアンナの様子を見に行くと、そこにリアンナの姿が無かったので、どういうことかと不思議に思っているとデイジーとリアンナが病室に入ってきた。
「リン、来たわね」
「リンさん……。この度は助けていただき、しかも治療までしていただいたのに、いままでお礼も言わず大変失礼しました」
「いえいえリアンナさん。そんな事より、元気になられたんですね。よかったですよ」
リアンナに治療魔法が効いてよかったと話していたら、デイジーが申し訳なさそうに話しかけてきた。
「あー、それでね……急で悪いんだけど、今日、というかこれから故郷に帰ることにしたわ」
「それはまた急だね。……寂しくなるな……あ、そうだ。」
デイジーにダルクの首のことを相談し、リアンナにも話してあるから問題ないと言われたのでダルクの首を渡し、収納してもらうことになった。
リアンナは覚悟はしていたようではあったが実際に目にすると泣き出してしまったが、精神を閉ざすことなどは無く次第に落ち着きを戻し、ダルクの首を大事そうに『アイテムボックス』に入れていた。
門まで見送りに行くと言ったのだが『いや、ここでいいよ』といわれたのだが、せめてとギルドの外まで出て見送った。
「リン! 私たちの故郷は北の方にあるミレイアって村だから、近くを通ることあったら寄ってね」
「リンさん、今回のお礼をさせていただきたいので是非寄ってくださいね」
「ええ、近くを通ることがあれば寄らせてもらいます」
「……いつまでも話してると帰れなくなっちゃうから行くね。ありがとう、またね」
「ありがとうございました」
「道中、気を付けて。さようなら」
二人と握手をして、姿が見えなくなるまで見送った。




