1
陽に近き天界の森。
蒼く煌めく湖水の上に、太陽の女神の社は立っていた。
「ふぅっ……ん。く……ちゅ。ずぷ、ちゅぅ」
「ちゅ……ん。ふ……んふぅ。むぷぅ……」
年端もいかぬ黒髪の巫女が、金色の髪をした、気品ある女性の唇を無我夢中に吸っている。
「ちゅ……ぱぁっ」
舌を絡め、零れる唾液の糸を熱っぽい瞳で見つめながら、物欲しげな顔の巫女。
金色の髪の……白い服、白い肌に金色の装身具と、目映いばかりの女性……言うまでもあるまい、太陽の女神は、青の瞳に羞じらうような色を浮かべるが、
「アマネ様、わたくしも……」
横から別の巫女が、我慢できなくなったか、唇を重ねてくる。
「ふぅっ……! ん、むぅ?」
「ちゅ……ずぷ。ん……どうか、わたくしの精も……」
豊かな髪、豊かな胸。
豊穣神でもある太陽の女神へ、巫女たちは祈りとして、
「ちゅっ。んむ、むー……! ふぅっ、んくぅ。ちゅぷっ……」
「ちゅる……ずちゅぅ。んくぅ、ふ……むぅっ」
祈りとして、唇を捧げるのである。
「ちゅ……♪ んむぅっ! ちゅ……ちゅぷ♪ ああ……アマネ様、もっとぉ……」
「ふぅ、んむ! むー、ちゅっ♪ んっ、わたくしの……も、お受け取り、下さいませ」
「ふぁ……♪ ふふ、もう、皆、落ち着きなさい。太陽は、逃げませんのよ?」
いつの間にか幾人もの巫女たちから、唇を求められて。
女神は頬を赤くしつつ、金糸の睫毛に縁取られた瞳を、微笑みの形にした。
天の音、雨の根、亜麻の禰。
いくつもの意味を孕んだ尊き御名の、あまねく久遠に大地を照らす、太陽の女神。
アマネは、幼い巫女たちを慈しむように、
「ちゅ……♪ んっ」
「ちゅぷ……ふぅっ♪ く、いぅ」
「る、くぅ♪ ちゅ……んーんっ♪」
接吻して、舌を吸っていった。
「ちゅっ♪ ちゅぷ、んん♪ ずちゅ、くぅ♪」
ああ、それは慈愛に満ちた……母の胸にも似た、安らぎの。
あまねく衆生を照らす陽光のごとく、全てを癒す……。
けれど。
「ずちゅぅ♪ ちゅぶ、んぅ♪ ぐぷ、ぢゅぶぅ♪ るっぷ、んくぅ……んっ♪」
「ふぁ!? あ、アマネ、様ぁ、激し……!」
太陽は時に、地を灼き、渇きをもたらすもの。
「ぢゅるぅ! ん、ん……。ふ、ちゅぶぅ。ずぢゅ……ぐぷん♪」
「ひぅっ! んく、は、ぁぁ……!」
「むぅー……! んむぅ!」
やがて、太陽の女神から激しく吸引された巫女たちは、身体をびくんびくんとさせて、
「んふぁ、あ、あぁぁぁぁ……っ!」
気をやっていった。
死屍累々、というべきか。女神に精気を吸われ尽くした少女たちが、上気した頬で荒い息を吐く。
「あらあら。困りましたわ」
所詮人と神では視点が違うのか。
さして困ってもない様子で首を傾げながら、太陽の女神アマネ、
「皆、わたくしの口を吸いたがるくせに、これですもの。もうっ、満たされませんわね」
羽虫たちが光に吸い寄せられるように、少女たちは女神の唇を求めるけれど。
太陽に近づきすぎた翼が、焼かれて墜ちるごとく……すぐに精魂尽きてしまう。
ぺろり、と自分の唇を舐めながら、女神は妖しく笑った。
「ふふ……。吸っても吸っても、精の尽きぬ巫女。そのような者がいるなら、いかなる手を用いても、わたくしの物とするのですが」