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月花 百合神楽  作者: 百合宮 伯爵
弐の神楽
10/10

3

「ちゅっ……。んむぅ、くぷ。む……ぅん……」


 少女同士、白い指を絡ませながら、唇を吸い合う。

 月界のやしろにて今宵もむつむは、女神と巫女。

 銀の髪に紅の瞳、童女姿の月の女神ツクミと、長い黒髪に夕陽色の眼の巫女、ヒミコであった。


「む……ちゅむぅ。ずぷ、るちゅぅ……、ふ、ぅぅぅ……!」


 ヒミコは、あどけなさを残した顔立ちに似ぬ豊かな胸で、半ば女神ツクミを押し潰すほど強く抱いて、唾液を吸う。


(あ……やっぱり私、接吻これ、好きかも)


 生々しい熱を帯びた銀の蜜を、吸い尽くすべく、女神の口腔内を子犬のように舐め回していると、


「ふぅ……っ、んむぅ! こ、この……、そなた、いい加減にせぬか!」


 ちゅばぁ、と銀糸が垂れる。

 幼子の姿の女神は、顔を真っ赤にして、巫女の胸を押しのけた。


接吻これは、予にとってはただの食事だと、言うたであろうが! 精気を吸う為であって、そ、それを……」


 八重歯を覗かせながら、わなわなと震え、睨んでくる。


「そ、そなたばかり吸って、どうするのじゃ!」


「だ、だって。しかたないでしょ」


 ツクミの唇。美味しいんだもの。

 唇をなぞりながら、そう伝えると、


「……色狂いめが」


「だ、誰がよ!? 言っとくけど、巫女の務めでやってるだけなんだからね! それを、ちょっとでも楽しもうって私の努力、分からないわけ?」


 がばっと、お社の木床に、女神ツクミを押し倒した。


「ちゅっ……♪ な、生意気なこと言ったら、吸わせて、あげないんだから。ちゅぷ、むちゅぷぅ」


「ちゅぱ、ふぁぁ♪ だ、だから、これでは、んっ♪ 予が吸われるばかりでは、ないかぁっ。ちゅっ、くぱぁ♪」


 人界を高きより見下ろす、雲の果て。

 月のお社では今日も、桜色の唇と舌が、女神への奉納神楽を舞うのであった。


 ※ ※ ※


「ふぁ……♪ はぁ、っ、あ……♪」


 着乱れた胸元……白く平らかな胸が、上下する。

 先に倒れたのは、いつも通り、女神ツクミの方だった。


 瞳を蕩かした女神の、愛らしい唇から垂れるよだれ……を、ぺろりと舐め掬いながら、ヒミコは言う。


「ご、ごちそうさまでした」


「……ふにゃ♪ だ、だから、そなたが言うなと……」


 神酒みきより甘い少女蜜だえきの余韻に、しばし浸っていると、ヒミコの胸にふとした疑問が。


「ねえ、ツクミ。他の女神さまも、こ、こんな風に……するの?」

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