<第6話> 俺と邪龍さんの100日戦争:百日目
もう何日が経ったかわからない。
一年経ったかもしれないし、二か月しか経ってないかもしれない。
だがどちらにしても、俺には時間の感覚が薄れてきていた。
戦いは終わらない。
俺は29本目のバトル・アックスを打ち込んだ。
戦闘用の斧が邪龍の鱗に打撃を与える。
そう、俺は敏捷さと機敏さを増し、回避行動の末に攻撃に転じていた。
これは闘いだ。
一方的な攻撃ではない。
このころになると、鎧の耐久値回復の頻度が落ちた。
俺の強さが極致に達しつつあるということだ。
砕け散るバトル・アックス。
大きな破片が邪龍から俺を隠すほんの数秒で、俺は斜め後方へととぶ。
中距離なら武器はトマホーク。
これはたしか12本目。
邪龍の右目に向けてスイングする。
回転を描くトマホークは、しかし邪龍の翼にはじかれる。
中・長距離武器はあまり得意ではない。
武器でもそれぞれ習熟度がわかれてくる。
使えば使うほど、俺はそれに優れていく。
体が学んでいくのだ。
その場その場に適応しようとする。
体が勝手にダメージを強さに変えてくれる。
俺は――強い。
★
チャクラム、弓、クロスボウ、
手裏剣、スリリング、斧、多節棍、
狼牙棒、メイス、トンファー、鎖鎌、
ポールアックス、薙鎌、竹槍……
俺が知っている武器から、知らない武器までありとあらゆる武器をつかった。
架空の武器は創り出せなかった。
竜殺しの剣なんてあったら、とか思ったが、そうはうまくいかないらしい。
だが着実に俺は成長している。
今ではもうほとんどダメージを受けていない。
百発の攻撃のうち、うけても五発だ。
その間に、俺は二十発攻撃できる。
回避してさらに回避、そうして隙を見つけては新たな武器をためしたり、練度をあげていく。
俺の反射スピードもすさまじく上昇した。
膂力もあがるので、ハンマーの打撃力も格段に上がったことだろう。
――いける。
俺は確信していた。
そのときはすぐ訪れた。
俺が何万回目かの叩きつけ攻撃を受けたときだ。
邪龍の尻尾が俺の岩壁で押し付けた。
俺の体が岩壁にめり込み、また俺の体に沿って穴ができる。
そのダメージが俺の中であふれたのだ。
極限までにダメージがたまって、俺の強さが極大になった。
さらに、それを超過したダメージのエネルギーがあった。
即座に態勢を整え、右手に黒色のジャベリンを生み出す。
「死ね」
789本目のジャベリンだった。
俺の能力値すべてが上限に達し、そのうえに超過エネルギーがジャベリンに込められていく。
投擲された槍はまっすぐに龍の額へと向かっていく。
目を狙っても無駄なことはわかっている。
だから額だ。
やつは額をかばわない。
必ず受け止めるのだ。
まるで俺を確かめているかのように。
俺のジャベリンが邪龍の額を貫き、一直線に穿った。
邪悪なる龍が腹を見せるようにして、倒れていく。
勝ったのだ。
俺は勝利した。
渾身の一撃であるジャベリンは見事邪龍の額に穴をあけた。
邪龍の鮮血が噴水のようにしぶきをあげる。
それが勝利の祝福であるかのように、俺の鎧にしみわたっていく。
俺はないはずの心臓が高鳴るの感じていた。
胸に右手をあてて、さわってみるとわかる。
初めての勝利だった。
俺はこれまでの人生において、これほどまでに打ち込んで、
努力して、結果を勝ち得たことはなかった。
俺は、いつの間にか笑っていた。
夜が明ける。
百日目の夜が、今明けようとしていた。
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クラディウス
愛称:クロード
種族:動鎧
属性:虚無
装備:なし
スキル:ダメージ経験値獲得
特性:???
称号『エルジェイド専属騎士』