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悪の鎧騎士物語  作者: うろこ
6/25

<第6話> 俺と邪龍さんの100日戦争:百日目



 もう何日が経ったかわからない。

 一年経ったかもしれないし、二か月しか経ってないかもしれない。

 だがどちらにしても、俺には時間の感覚が薄れてきていた。


 戦いは終わらない。

 俺は29本目のバトル・アックスを打ち込んだ。

 戦闘用の斧が邪龍の鱗に打撃を与える。

 そう、俺は敏捷さと機敏さを増し、回避行動の末に攻撃に転じていた。

 これは闘いだ。

 一方的な攻撃ではない。

 

 このころになると、鎧の耐久値回復の頻度が落ちた。

 俺の強さが極致に達しつつあるということだ。


 砕け散るバトル・アックス。

 大きな破片が邪龍から俺を隠すほんの数秒で、俺は斜め後方へととぶ。

 

 中距離なら武器はトマホーク。

 これはたしか12本目。

 邪龍の右目に向けてスイングする。

 回転を描くトマホークは、しかし邪龍の翼にはじかれる。


 中・長距離武器はあまり得意ではない。

 武器でもそれぞれ習熟度がわかれてくる。

 使えば使うほど、俺はそれに優れていく。

 体が学んでいくのだ。


 その場その場に適応しようとする。

 体が勝手にダメージを強さに変えてくれる。

 俺は――強い。




   ★




 チャクラム、弓、クロスボウ、

 手裏剣、スリリング、斧、多節棍、

 狼牙棒、メイス、トンファー、鎖鎌、

 ポールアックス、薙鎌、竹槍……


 俺が知っている武器から、知らない武器までありとあらゆる武器をつかった。

 架空の武器は創り出せなかった。

 竜殺しの剣なんてあったら、とか思ったが、そうはうまくいかないらしい。


 だが着実に俺は成長している。

 今ではもうほとんどダメージを受けていない。

 百発の攻撃のうち、うけても五発だ。

 

 その間に、俺は二十発攻撃できる。

 回避してさらに回避、そうして隙を見つけては新たな武器をためしたり、練度をあげていく。


 俺の反射スピードもすさまじく上昇した。

 膂力もあがるので、ハンマーの打撃力も格段に上がったことだろう。


 ――いける。

 

 俺は確信していた。

 そのときはすぐ訪れた。


 俺が何万回目かの叩きつけ攻撃を受けたときだ。

 邪龍の尻尾が俺の岩壁で押し付けた。

 俺の体が岩壁にめり込み、また俺の体に沿って穴ができる。


 そのダメージが俺の中であふれたのだ。

 極限までにダメージがたまって、俺の強さが極大になった。

 さらに、それを超過したダメージのエネルギーがあった。


 即座に態勢を整え、右手に黒色のジャベリンを生み出す。


「死ね」


 789本目のジャベリンだった。

 俺の能力値すべてが上限に達し、そのうえに超過エネルギーがジャベリンに込められていく。


 投擲された槍はまっすぐに龍の額へと向かっていく。

 目を狙っても無駄なことはわかっている。

 だから額だ。

 やつは額をかばわない。


 必ず受け止めるのだ。

 まるで俺を確かめているかのように。

 俺のジャベリンが邪龍の額を貫き、一直線に穿った。


 邪悪なる龍が腹を見せるようにして、倒れていく。

 勝ったのだ。

 俺は勝利した。

 渾身の一撃であるジャベリンは見事邪龍の額に穴をあけた。


 邪龍の鮮血が噴水のようにしぶきをあげる。

 それが勝利の祝福であるかのように、俺の鎧にしみわたっていく。

 

 俺はないはずの心臓が高鳴るの感じていた。

 胸に右手をあてて、さわってみるとわかる。

 初めての勝利だった。


 俺はこれまでの人生において、これほどまでに打ち込んで、

 努力して、結果を勝ち得たことはなかった。



 俺は、いつの間にか笑っていた。



 夜が明ける。  

 百日目の夜が、今明けようとしていた。





――――――――――――――――――――――――――――――――――――

クラディウス

愛称:クロード

種族:動鎧(リビング・メイル)

属性:虚無

装備:なし

スキル:ダメージ経験値獲得

特性:???



称号『エルジェイド専属騎士』


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