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役者は揃いて頁を捲る‐‐ドロシー・クールル 1

「フンフンフーン、フンフーン」


 鼻歌を歌いながらドロシー・クールルは箒に跨り空の散歩をしていた。場所は上空千メートル、黒の三角帽子は風に揺れ、夜明け前の月が彼女の横顔を照らし、仰々しいゴーグルにふんわりとした月明かりが反射している。


 彼女は慧眼の魔女。全てを見通す魔法の瞳を持つ者だ。彼女の魔眼は万物の本質を一目でこれ以上に無い程に見抜く。本気になれば未来すらも見通すことが出来た。


 けれど、ドロシー自身持て余すほど魔眼は、普段このゴーグルで制限されている。これが無ければ圧倒的情報量に脳がパンクしてしまうからだ。


 ドロシーはこの無骨なゴーグルを気に入っていなかったが、これを自分が付けるように成った事自体については誇りを持っていた。


 数多の相手と対決し、死に体になりながらも勝ち取ったのがこの魔眼なのだ。お洒落でないとはいえ、ゴーグルくらい何でもない。


 何故、ドロシー・クールルがこの魔眼を欲したのかについて特別な理由は無い。強いて言うならば単純な知識欲だった。ただ純粋な知識欲。知らない事を知り、未知の現象を解明する。そもそもドロシーが魔女に成った理由でさえ、世界の理を知りたかったからだ。


 魔眼を手にしてドロシーは色々な事を知った。今この星で生きている人間の中でドロシーほどこの世界に詳しい人間は居ないだろう。


 さて、ドロシーがこんな夜明け前の空を散歩している理由を一言で説明すると〝婚活〟だった。


「あたしのダーリンはどっこかしら~?」


 うっとりとドロシーは左手を伸ばしその小指へと視線を注いだ。


 すると、そこから薄らと赤い糸が伸びている。


 これはつい昨日生まれた運命の赤い糸。とうとうドロシーのフィアンセが決まったのだ。


 ドロシーは持て余しているが自分の魔眼を信じていた。彼女が生涯を賭けて勝ち取った両眼が選ぶ運命の相手。はずれであるはずが無い。


「待っててねー、あたしのダーリン♪」


 ウフフと笑いながらドロシーは小指から伸びる赤い糸の先に居る未来のフィアンセへと箒を走らせた。

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