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デュエリスト

作者: キュウ

デュエリスト

それは決闘者。

しかしなぜ

何故僕たちは、決闘などをするのだろうか?

そんな必要がどこにあるのだろう? ただの紙切れにどうしてこうも、左右されなければならないのか。

それとも、

ただの紙切れだからこそ、左右されなくてはならないのだろうか?

僕は一枚のカードを手に取り、じっと眺める。


ひらひらと、蛍光灯の光を反射して眩しい。

自分にさえ聞こえない、とても小さな声で、その名を呟いてみる。

……

もういちど、呟いてみる。

……

もういちど

……

叫び声、轟音、ライフの減る音、てぃろりろりろり

今日もどこかで誰かがデュエルをしている。

友のために、誇りのために、命を賭して、世界を救うため

……

呟いてみる。

外に出る。

靴の音、風の音、竜の咆哮、ぐぅるおろろろろろお

てぃろりろりろり

呟いてみる。

……

また。

まただ。

ふと目に入った河川敷、少年と少年がデュエルをしている。

またああして、世界の半分や、あるいはすべてが賭けられている。

今月に入って何度目だろう? あれのせいで世界が滅亡したのは? 

悪に覆い尽されたのは?

壊れている

そう思う。

この世界はどうしようもなく、どうしようもないほど壊れている。

……。

思えば、俺がはじまりだった。

あのとき、世界を賭けたりしなければ……

しかし後悔しても、遅い。遅すぎる。この世界はすでに、どうしようもないくらいに壊れている。

ブオールルルブ・モビトビコズトン

トン

くしゃっと、

くしゃっと握り締める。ブオールルルブ・モビトビコズトン

そうこれは、……じゃない。

ブオールルルブ・モビトビコズトン

トン

ポン

それ。

まったくそれ。

だから僕は……。

「ジョ……」

ジョ……

僕たちはどうしてこんな、こんな紙切れのために、世界を賭けたり、自分の大切なにかを賭けたりしなくてはならないのだろう。

お前が勝手にそうしただけだと言われても、僕には納得ができない。

俺達はきっとそうするしかなかったし、他の誰だってそうしただろうから……。

いや、

そうじゃなくて、僕たちは他になにも思いつかないし、他のやり方を知らないし、それに、気付いたらもうそうなってしまっていたのだから。

僕のせいじゃない。

てぃろりろりろおぶ(く)ーーん

ライフゼロ。

僕は話しかける。友に。

……

そう、

こうしなければならなかった。ただの紙切れなんかじゃなく、友達と話して。世界を賭けたりせずに、正義に興奮したりせずに、食べ物を食べ、四季を感じ、風の音を聴いて、もっと正直に。

そう生きるべきだった。

僕は「ジョ……」話しかける。

ジョ……

夏の終わりの蝉の音のように、弱弱しく途切れる声。ジョ……

夏が終わる。寒い風が吹き始め、木の葉をちぎって去って行く、秋が来る。もう来ている。

僕は話しかける。友に。


カードの中、目を瞑って眠っている友に。

ただの紙切れ。

ジョ……

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