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第4話:晃

父親は、あの一件以来また帰ってこなくなった。

そればかりか母親に金銭を要求しているようであった。



裕福だったはずの生活が、段々と崩れていくのが目に見えた。


夏は家にいたらクーラー代がもったいないからと美玲は図書館へ勉強をしにいった。




美玲が高校3年に上がった頃、父親が久しぶりに家に帰ってきていた。

両親が笑って話している。

どうしたのかと不思議に思っていたら父親が美玲に笑いながら


「パパ、ようやく持ち直したからな。」


と言った。

どうやら金の工面や仕事の歯車がいい方向へ動きだしたようだった。


母親はストレスで痩せ細ってはいたが、顔は笑っていた。

美玲もまた、二人が幸せそうなのを見て一緒に笑った。


「美玲達に苦労かけてごめんな。パパ、頑張るから。」


父親の優しい言葉に、今までの苦労がなんでもない事のように思えた。

去年、無理矢理保証人にさせられた母親の件は、順調に返済されているらしいという事も父親に教えてもらい、美玲は一安心した。



その年の冬、大学受験を控えた美玲は家も一応一段落ついたので、勉強に励んだ。

美玲の親戚は、美玲の家族を良く思ってなかったから今回の件ではどんなに母親が頭を下げても一切協力をしなかった。

美玲は親戚を見返したい一心で勉強をした。そして、県内で2番手の有名大学に合格した。


大学に入学してスグ、美玲は一人の男性と知り合う。

名を晃‐アキラ‐と言う。

晃は1年先輩で、とても優しい人だった。

父親のいない生活をしていた美玲にとって優しい晃は父親のような存在であった。


「美玲ちゃん、新歓コンパの後で1年と俺らの学年で遊びに行くんだけど美玲ちゃんも来ない?」


あまり友達のいない美玲には嬉しいお誘い。大学に入って母親も門限を延ばしてくれたので即OKをした。


「これ俺の番号とアドレスね。」


連絡先を告げると、晃はその場を立ち去った。







新歓コンパ当日、今まで真面目に暮らしてきた美玲は当然お酒を飲んだ事がなかったので少々戸惑い気味だった。

この後晃達と遊びに行くのもあり、お酒は飲まないでおこうと思っていた。



「一気!イッキ!」



突然聞こえてきたイッキコールは、美玲と同じクラスの子達からのものだった。


イッキしている子はグラスの三分の一を残して、もう無理というサインをした。


「友情パワーだ友情パワーだ友情パワーだ〜♪」



イッキをしていた子から美玲にグラスが回ってきた。



「ホラ、美玲飲みなよ!」



入学式の日に友達になった由子が美玲を促した。



(お酒初めてなのに大丈夫かな…)



コールは鳴り止まない。

美玲は残りを飲み干した。



「おぉ〜!」



拍手をもらい、美玲は一安心した。


(苦い…。)


美玲はまずそうな顔をしながら、体がぼーっとしていくのを感じていた。



ふと辺りを見回すと、晃が柱を背もたれにして座っているのが見えた。

新歓は2年が主催なので晃も出席していた。



「晃くん!」

「美玲ちゃん。顔赤いよ。」

「へへ…晃くん飲んでますか〜?」

「美玲ちゃんだいぶ酔っ払ってるね〜…大丈夫?」

「大丈夫ですよ!」



晃は美玲が酔っ払ってしまったのを心配した。

少し話していると美玲はだいぶ酔いが回ってるのがわかった。



お開きの合図がかかった。


「じゃ俺達も行くか。」


晃に促されて立ち上がろうとしたが、美玲は酔いが回って立てない。


「大丈夫か?オイっ…」


晃の声が遠くに聞こえていった。







気が付くと美玲は和室で寝ていた。

周りを見回すと、新歓にいた子が何人か気分悪そうに寝ている。

飲みすぎた子が運ばれてくる部屋だった。



「起きた?」


晃がやってきた。


「晃くん…。遊びに行くんじゃなかったの?」

「お前ぶっ倒れちゃったからさ。心配だし残ったよ。あいつらもいるよ。」


そう言って晃が指さした方には晃の友達が2人、酔っ払ってはしゃいでいるのが見えた。美玲を心配して3人残ったらしい。

美玲のクラスの女の子も何人か残ってくれていた。


皆にお礼を言うと母親から早く帰ってこいとメールがきた。

残ったメンバーは今から遊ぶ事になり、美玲は帰ると伝えた。


「じゃ俺駅まで送ってくわ。」


そう言って二人は駅に向かった。




美玲は優しい晃に惹かれていくのがわかった。

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