第2話:幸せな食卓
美玲の入った私立中学は女子校で、高校まで持ち上がりであった。中学時代は部活と勉強に励んだ。
母親が厳しく、お洒落には無縁だったが、部活の姿がかっこいいと女子達の間でファンクラブが出来たこともあった。
美玲が高校に上がると、4歳下の海も私立中学を受験したが直前に体調を崩し、海は公立中学へ進んだ。
二人は幸せに暮らしていた。
相変わらず父親は家に顔を出す程度であったが、子供達とは少しではあるが連絡を取り合っていた。
美玲が高校2年になったある日、美玲と海が家に帰ると、いつもはいないはずの父親が食料の沢山入ったスーパーの袋を両手に抱えながら立っていた。
「パパ、どうしたの?」
たまらず美玲達が聞くと
「いつもママにお世話になってるからな。今日はパパがご飯を作ろうと思ってな。」
と父親が返した。
二人は顔を見合わせた。
こんな事は今まで一度もなかったからだった。
その日は初めての一家団らんに美玲も海も喜んだ。
いつもはヒステリックな母親も、久しぶりにいる父親に恋人の頃のようにはしゃいだ。
「じゃあ行くな。」
父親はいつもそう言って家を出る。
仕事が忙しいから事務所で寝泊まりをしているらしい。
しかし美玲はそんなはずはないと思っていた。
海も幼いながらに気づいていた。
多分、愛人の所だろうと。
父親の言葉を信じていた、信じようとしていたのは母親だけだっただろう。