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駿河湾のスルメ

作者: める252
掲載日:2026/06/18

私はスルメ。駿河湾のスルメ。

いや人間だけどね。比喩だよ、比喩。


伊豆で生きてる普通の人。

最近、この駿河湾でイカが取れるらしい。


イカ?イカって刺身がいいかな。

この時期はヤリイカだね。


そう今は冬だった。


味のしない空気。

私は迷っていた。スルメでいるべきか。

それとも回遊魚になるべきか。


人生って塩味。でも甘みがある。

私は漂っていたかった。


でも現実が目を逸らすなと突きつけてくる。

そう雨だ。


あの日も雨だった。

私が全てを失いそうになった日。


綱渡りで生きているな私。

噛みごたえのある人生だ。


でも私は決めた。

温泉を巡る。伊豆に生まれた。当たり前じゃん。


頭の中でまとまんないよ。

私の脳はくるくる回遊魚。

でも芯はしっかりある。そうスルメ。荒波には負けない。


こんなふうに過去を振り返っているのは理由がある。

私は人生を賭けた戦いをした。


そして負けた。だから温泉が必要だ。

理由はない。そうしたいからだ。


私は車に乗り込む。

初心者マークを2つつけた中古車。相棒だ。


修善寺へ行く。ここは温泉がある。

1200年前から知ってる。


目的は一つ。そう。温泉だ。


私は温泉が好きだ。いや好きだったかもしれない。

雨がフロントガラスを叩く。


駐車場に停める。緊張した。

あの場所をみる。まだ見れない。


歩く。歩く。歩く。

近づく。


雨が私を止める。

干からびた脳に打ち付ける。


顔を上げる。見つめる。

しょっぱい。甘い。なんでだろう。


崖を下る。止めない。止めたくない。


あった。


私がスルメになった場所、忘れられない場所。

そして、孤独になった場所。


名前を呼ぶ。静かに響く。

当たり前だ。当たり前のことだけど。

肘に血が滲む。








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