深夜0時、いつものバカ4人がなぜか超シリアスなソ連の話で全員泣く件
ケン
「……。おい、起きてるか全人類。今夜はちょっと様子がおかしいぞ。ネットでとんでもない噂が流れてんだ。『16bit・アタックの作者、昼はこんなバカ番組の台本書いてるくせに、夜になると別名義で、チェルノブイリを題材にした超シリアスなソ連スパイ小説を書いている』ってな!しかも読んだ奴が全員、開始5分で真顔になって、最後は泣いてるらしい!ギターのケンです、16歳!同一人物の情緒、どうなってんだよ!?」
ユカ
「(超ハイテンション)わっしょーーーい!!ねえケンくん、私も読んだよ!Nコード N6304LT!『妹の最期の嘘を、世界の真実に書き換える』ってやつ!わっしょいって言おうとしたのに、一回も言えなかったの!こんな番組ないよ!こんばんは!わっしょいを封印された女、ユカです!」
アサ
「高城アサ、16歳。……ふふ、いい着眼点ね。うちの番組で毎晩ネタにしてる『チェルノブイリ』『冷戦』『大統領』――あれの"元ネタ側"を、作者は真顔で30話書き切っているのよ。今、私の手元には、その姉妹作へのアクセスを1クリック500円で仲介する『感涙課金プラン』の契約書があるわ。泣きたいリスナーは、私の口座にプラグイン(入金)してから読みなさい」
ケン
「するな!リンクは無料で貼るわ!えー、URLはこれだ。『
https://ncode.syosetu.com/n6304lt/
』。全30話、完結済み。……アサ、お前が課金ゲート設置する前に言っとくからな」
アス
「……えへへ。みなさん、こんばんわぁ。アスですぅ。あ、今、ケンくんの背中に、いつもの妖精さんがいないんですぅ……。かわりに、白い花が一輪、しずかに咲いてますよぉ……。ジャスミン、っていうんですって。牛さんが、教えてくれましたぁ……」
ケン
「(少し黙る)……アス、お前、なんで今日に限って的確なんだよ。そう、その"白い花"がキーなんだ。あらすじ、読むぞ。1986年、チェルノブイリで、主人公の妹が死ぬ。21歳。被曝で皮膚が剥がれ落ちる中で、妹は最期に言うんだ。『事故じゃない。あれは、誰かにやられた』」
ユカ
「(声を落として)……重ッ。うち、ここで完全にわっしょい引っ込んだ」
ケン
「兄貴はKGBに入る。妹の言葉を、世界の真実にするために。……でも4年後、自分で証明しちゃうんだよ。犯人なんていなかった。ただの事故だった。妹の言葉は、被曝と恐怖が見せた幻だったって」
アサ
「(いつもの冷徹さが、少しだけ緩む)……で、その男はどうするの。真実がないなら、諦めるの?」
ケン
「逆だ。『真実は妹を救わなかった。ならば、真実に義理はない』――こう言うんだ。『私は数学者だ。証拠が存在しないなら、証拠に見えるものを配置すればいい』ってな」
アサ
「……待って。それ、私のロジックの、100倍怖いバージョンじゃない」
ケン
「そうなんだよ!お前がいつも『金で世界をハッキングする』ってふざけてるだろ?この男は、たった一つの精巧な嘘で、本気で冷戦を終わらせにいくんだ。金属プレート1枚、テープ1本、資金の流れ。それだけで。しかも利用するのが、大国に別の嘘をつかされそうになってた、15歳の女の子」
ユカ
「(小声で)……うちらと、同い年じゃん」
アス
「……えへへ。あ、その女の子の頭の上には、¥マークじゃなくて、涙が一粒、浮いてますぅ……。でも、こぼれる前に、自分でぬぐってましたよぉ……。えらい、ですねぇ」
ケン
「そうなんだ、アス。その子はな、大人に用意された嘘を読み上げる代わりに、自分の意志で"別の真実"を選ぶんだ。ここが泣ける。……で、今夜のテーマ、いつもなら『16歳の禁断の"もしも"会談』だろ?でも今日はやめだ。代わりにこれだ。『16歳が、真顔で1作品を推す夜』」
アサ
「……珍しいわね。あなたが物販抜きで何かを勧めるなんて」
ケン
「今日はいいんだよ。……この話、最後どうなると思う?主人公、17年かかるんだ。17年遅れで、ようやく人間に還る。白い花の下で」
ユカ
「17年!?わっしょい何回分だよ!」
ケン
「(笑って)だろ。でもな、その17年が効くんだよ。嘘って、よくできてると、作った本人より長生きするんだ。1人の兵士の指先が動かなくなって、1人の少女の13年が変わって、1つの国が作り替えられる。全部、たった1つの嘘の上に建ってる」
アス
「……牛さんが言ってましたぁ。『嘘は、担ぐと、担いだ肩から腐るよ』って……。でもこのお話の人は、腐る覚悟で、ずっと担いでたんですねぇ……」
ケン
「(静かに)……アス。お前、今日ノーベル賞取れるわ」
アサ
「(ため息)……いいわ。今夜だけ、課金ゲートは外してあげる。私が黙ってこの作品を『無料で』勧めるなんて、番組始まって以来の大事件よ。リスナー、記録しておきなさい。日付は2026年7月24日。高城アサが、金にならないことを言った日」
ユカ
「(ちょっと泣きながら)ねえケンくん……なんでうちら、深夜0時に、防音室で、ソ連の話で全員しんみりしてんの……」
ケン
「知らねえよ!俺だって笑わせに来たんだよ、本当は!でもな、たまにはこういう夜があってもいいだろ。……というわけで、今夜の課題図書。『妹の最期の嘘を、世界の真実に書き換える ~KGB数学者が設計した、たった一つの陰謀~』。Nコード N6304LT、URLは『
https://ncode.syosetu.com/n6304lt/
』。全30話、完結済み」
ユカ
「(鼻をすすりながら)作者、二重人格説あるよね……昼はうちらでバカやって、夜はこれ書いてんの、情緒どうなってんの……」
ケン
「(笑う)戻ってきたな、ユカ。……よし、じゃあ最後は、いつも通りいくぞ。今夜は爆音じゃなくて、静かな一音だけな。準備はいいか」
(ケンがギターを一音だけ、ポーンと鳴らす。いつものカオスなセッションはない。ユカが小さく「わっしょい」と呟き、アサが無言で頷き、アスが窓の外の見えない花を指差す。10秒間の、この番組で一番静かな余韻)
ケン
「……これが、俺たち16歳の、今夜の全力だ。笑えなかったけど、いい話だった。読んでくれよ。白い花の下まで。……お相手は、今夜だけ真面目なギターのケンと!」
ユカ
「わっしょいを封印した、ユカとぉ!」
アサ
「高城アサと」
アス
「アスでしたぁ。えへへ、白い花、忘れないでねぇ」
ケン
「最後に一発……は、今夜はナシだ。そっと閉じるぜ。また明日、この汚い部室で会おうな」
全員
「16bit・アタック……!」




