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転生農民はステ上げしたい  作者: 雨丸 令


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2/2

第2話

 それから一ヶ月。〈薪割り〉での成功でモチベーションを爆上げした俺は、毎日のように〈薪割り〉をし続けた。来る日も来る日も、狂ったようにコツコツと。


 ――その成果がこれだ。


――――――――――――――――――――

名前:エイジ 年齢:五歳 性別:男性

所属:コルメリア王国東部ヴェルギン伯爵領コパス村。

生命:4(1up)

筋力:4(1up)

敏捷:3

技術:4

魔力:0

能力:斧術3(2up)

特性:異世界知識 ステータス表示

称号:転生者

――――――――――――――――――――


 ……うん。なぜか思ったより数値が上がらなかった。


 一応上昇してはいるよ? 生命と筋力は1ずつ上がってるし、斧術なんて2も上昇してくれてる。五歳の子供としては、かなり逞しい身体に成長できたと思う。


 けど言ってみればその程度というか。なんだかしょっぱいというか。


 努力量と成果が全然釣り合ってない気がするんだよな。


 魔力に至っては0から動く気配がまるでしないし。


 もちろんこれはあくまで現実。ゲームじゃないんだからそう劇的に成長する事は有り得ないと分かってる。無理をすれば相応に身体に負担が掛かるって事もね。


 けどステータスがある以上、裏ワザがあるんじゃって疑うんだよな。


 とはいえ上がってはいるので、これからもコツコツやり続けるが。


 まあそんな感じで、俺はあまり順調とは言い難い日々を過ごしていた。





 けどそんな俺の日常に横やりを入れてきた人物がいた。父さんだった。


「エイジお前、少し頑張り過ぎじゃないか? 積極的に〈薪割り〉を手伝ってくれるのは嬉しいけれど、お前は子供なんだ。もう少し遊ぶ時間があっていいと思う」

「……それ、本当に父さんの意見? 誰かに言わされてるんじゃなくて?」


 殊勝な言葉。まるで子供を想う出来た父親みたいな台詞だ。


 一瞬、なにを言ってるんだお前? と思ってしまった。


 幾ら俺が望んだとはいえ、〈薪割り〉をやらせたのは父さんなのに。


 けど俺は知っている。俺が子供なのに〈薪割り〉をし過ぎている事に、母マルタが心配して父さんにやめさせるよう怒っていた事を。父さんは俺の好きにさせればいいと言っていたけれど、母さんの剣幕が凄くて逆らう事が出来なかったという事を。


 普段は頼りになる父さんだけど、母さん相手だと弱いんだ。


「……バレたか。マルタに言われたんだ。エイジは働き過ぎだ、他の子達と遊ばせてやれって。悪いなエイジ、父さんは母さんにだけは逆らえないんだ。絶対にな」

「キメ顔で言われてもカッコよくないって。……むしろ、超ダサい」


 “そうか、ダサいか……”。父さんが落ち込んでるけど、それどころじゃない。


 え、マジで他の子供と遊ばなきゃいけないの? 子供って言うけど、俺と同年齢だと五歳だぞ五歳? 会ったところで、絶対に話が合わないと思うんだけど。


「お前の気持ちは分かるぞ、エイジ。お前は他の子達と比べて、明らかに精神年齢が高いからな。きっと他の子達と仲良くなれないんじゃないかって心配なんだろう」

「まあ……うん。そうだね。だいだいそんな感じかな」


 仲良くなれるより話が合うかどうかを心配してるんだけど。


 ……言わなくてもいいか。そこまで大した違いじゃないし。


「とはいえ、一度会ってみなきゃ実際どうなのかは分からないぞ? なに、仲良く出来ないなら出来ないで別にいいんだ。とにかくチャレンジする事が大事だからな」

「……分かったよ。会ってみる。上手くいかなくても怒らないでよ?」

「おぉ! そうかそうか、会ってくれるか! マルタに良い報告が出来そうだ」


 まるでもう上手くいくのが決まったみたいに喜ぶカルナン父さん。


 調子のいい姿を見て、母さんはなんでこれと結婚したんだ? と疑問に思った。





 そして子供達と会った訳だが、――案の定。俺とは話が合わなかった。


「離せよサーシャ! エイジはおれと一緒に冒険者ごっこすんだぞ!」

「いや! エイジくんはわたしとおままごとをするの!」

「……あ、あの。エイジくんに読んで欲しい絵本があるの。……ダメ?」


 ……というより、話をする前に俺の取り合いになったと言った方が正しい。


 赤い髪に緑の瞳、明るく活発な笑みを浮かべた少年カイト。

 金の髪に青い瞳、不機嫌そうに頬を膨らませた少女サーシャ。

 黒い髪に紫の瞳、おどおどと絵本を差し出す少女スミレ。


〈コパス〉で暮らす俺と同い年の少年少女三人。同い年でありながらこれまで接点のなかった俺が彼らの興味を引いた事で、彼ら三人による取り合いが発生したのだ。


 三人が猛烈な勢いで迫ってきた時は、いったい何事かと驚いたよ。


「なあエイジ、冒険者なら誰が好き? 俺は断然〈鉄剣衆〉だな!」

「エイジくんはお父さんね! わたしと夫婦になるの!」

「お姫様が好きなの。……エ、エイジくんに王子様になってほしい」


 しかし落ち着いてくると、三人は一斉に俺に向かって話し始めた。


 勘弁してくれ。俺は聖徳太子じゃないんだぞ? たくさんの人の会話を同時に理解するなんて、そんな超人染みた真似は出来ない。俺はまだ、ただの一般人なんだ。


 その技術を習得するには、特殊な訓練を受けないと。……うん? 訓練?


 ――そうか訓練だ、三人との時間を訓練として活用すればいいんだ!


〈薪割り〉を本気でやった結果〈斧術〉が手に入ったように、例え遊びであろうと本気で取り組めば、その行いに見合った能力を手に入れられるかもしれない!


 そうと分かれば、早速三人を説得して本気の遊びをしなければ!





「よし、じゃあ最初はおれが鬼な! みんなかくれろ~! いーち!」

「ふん! カイトなんかには絶対見つかってやらないんだから!」

「あ、あわわ。あわわわわわわ……! いったい何処に隠れたら……!?」


 閃きを得た俺は、その閃きが確かか確かめるべく三人と遊んでいた。


 今やっているのは〈かくれんぼ〉。古くから大勢の子供達が楽しんできた由緒正しい遊びだ。ルールも〈時間内に鬼に見つかれば負け〉というシンプルなもの。


 シンプル故にこそ奥が深く、一度やり始めれば三人も案外楽しんでいた。


〈かくれんぼ〉を始める前。三人で一緒にやろうと説得するのは苦労した。


 なにせ全員が全員自分のやりたい事をやりたがっている。他の人に譲ってあげようなんて配慮はまったくのゼロで、俺の説得にも中々首を縦に振ってくれなかった。


 しかし根気強く話し、なんとか全員に納得して貰った。


 カイトにはこう言った。

「冒険者ごっこがしたい? たった二人でパーティーと言えるのか?」


 サーシャにはこう言った。

「おままごとがしたい? なら子供やペット役も必要だろう?」


 スミレにはこう言った。

「絵本を読んで欲しい? 声を使い分けた方がより臨場感が出るぞ?」


 もちろん実際にはもう少し丁寧な言い回しをした。流石にこんな乱暴な言い方はしない。けどおかげで全員の理解を得て、今一緒に〈かくれんぼ〉ができている。


「くっそー、エイジだけ見つからねぇ! エイジー、何処だー!?」

「ふん。わたし達を見つけられたからって、エイジくんも見つけられるとは思わないでよね! カイト如きの捜索力じゃあ、一生かかっても見つからないんだから!」

「……は、早く一緒に絵本読みたいな。カイトくん、まだ見つからないの?」

「うるせえ、近くでごちゃごちゃ言うな! 集中できないだろ!?」


 ――そしてその成果を今、俺は自分の目で目の当たりにしている。


――――――――――――――――――――

名前:エイジ 年齢:五歳 性別:男性

所属:コルメリア王国東部ヴェルギン伯爵領コパス村。

生命:4

筋力:4

敏捷:3

技術:4

魔力:0

能力:斧術3 隠密(new)

特性:異世界知識 ステータス表示

称号:転生者

――――――――――――――――――――


 能力の欄に新しく、〈隠密〉の文字が刻まれている。


 親切にも(new)と書いてくれるおまけ付きだ。


「は、ははははっ。やった、自力で能力を手に入れたぞ!」


 こんなに嬉しい事は他にない!


 カイト達にも感謝しなきゃいけないな。三人に会う事がなければ、きっとこの気付きを得るのにもっと遅くなっていたはずだ。どれだけの時間を無駄にするか。


 明日から忙しくなるぞ! もっともっと能力を手に入れなければ!


「はははは、ははははははは、はーっはっはっはっはっはっは!」

「あー! 見つけたぞエイジ、こんな所に隠れてたのか!? どうりで見つからないわけだ。次〈かくれんぼ〉する時は、おれがここに隠れさせてもらうからな!」

「おバカ。宣言したらすぐ見つかるでしょ? カイトってほんとバカ!」

「スミレはエイジくんにならすぐ見つかってもいいかな。……えへへ」

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