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転生農民はステ上げしたい  作者: 雨丸 令


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第1話

 日本で死んだ俺はここ、異世界ヴェリアで生まれ変わった。


 新しい誕生日を迎えた俺の身分は〈農民〉。


〈コルメリア王国〉最東部。〈魔境〉と呼ばれる魔物が群生する超危険地帯、辺境も辺境の村〈コパス〉で暮らす〈農民〉の両親の間に生まれた、生粋の〈平民〉だ。


 その事実を知ってしばらくは落ち込んだけど、すぐ立ち直った。


 ――だってこの世界には、ステータスが存在していたから!


 ゲームや最近のライトノベルによくあるアレだ。自分が保有してる能力を数値や文字で教えてくれる素敵機能。異世界ものといえば、ステータスは必須だよな。


 存在を知った日は、興奮のあまり一晩中寝付けなかった。


 翌日寝不足でぶっ倒れ、母さんを心配させてしまったくらいだ。


 まるでゲームの世界に入り込んだみたいだ。そんな風に気持ちをワクテカと高鳴らせた俺は、第二の故郷〈コパス〉村で最高の異世界生活の第一歩を踏み出した。


 ……はずだったんだが。





「……よわっ。俺、なんかめっちゃくちゃ弱くないか?」


 自分のステータスをじっくりと眺めた俺は、困惑しながら呟いた。


――――――――――――――――――――

名前:エイジ 年齢:五歳 性別:男性

所属:コルメリア王国東部ヴェルギン伯爵領コパス村。

生命:3

筋力:2

敏捷:3

技術:4

魔力:0

能力:

特性:異世界知識 ステータス表示

称号:転生者

――――――――――――――――――――


 これが俺のステータスだ。今日初めてしっかりと見た。


 しかし……うん、弱いな! ものすごく弱い!


 他の人のステータスなんて見れないからハッキリとは分からないけど、この数値は多分5歳児の平均か少し上くらいか? 俺と他の子の能力に大した差はないし。大人の平均は10くらいかな。おおよその感覚だから間違ってる可能性はあるけど。


 それにしても貧弱すぎる。我が事ながら涙が出てきそう。


 しかも能力の欄は空白。辛うじて特性の欄に二つあるだけだ。


 まあ、その二つも直接的にはなんの影響も及ぼさないけど。


 これはダメだ。せっかく異世界に転生してきたのに、こんな貧弱なステータスのままでいたくない。ガッツリ鍛えて、ステータス強者になってみせるんだ。


「頑張るぞー! おー!」


 一人で意気込む俺を、近所のおばあちゃんが優しく見つめていた。





「なに、鍛えたい? 急にそんな事を言ってくるなんて、どうしたんだ?」

「強くなりたいんだ。〈コパス〉は〈魔境〉のすぐ近くにある。いつ魔物が襲ってくるか分からないし、戦う力を身に着けたい。家族や村のみんなを守りたいんだ」


 ステ上げを決意した俺は、すぐさま父カルナンに相談した。


 もちろんステータスを上げたいなんてバカ正直には言わない。ステータスは俺にしか見えておらず、言ったところで変な事を口にしてるとしか思われないからな。


 その点、〈魔境〉から来る魔物は強くなる理由として使いやすかった。


〈コパス〉は俺が言った通り〈魔境〉に程近い村。頻度こそ低いとはいえ、年に十回から二十回は魔物が出て来る事がある。大体は一匹か二匹程度で収まりはするが。


 とはいえ脅威には違いない。戦える者がいるといないで大違いのはずだ。


「エイジ……! まさかお前がそんな立派な事を考えていたなんて! 分かった、父さんに任せなさい。お前の年齢でも出来る、強くなれる方法を教えてやろう」

「やった! ありがとう父さん!」


 勝利のガッツポーズ。


 力強く頷く父さんの姿に、俺は自身の勝利を確信した。





 そんなこんなで父さんに紹介されたのは、〈薪割り〉だった。


「……え? 薪割り? 父さん、本当にこれが鍛錬になるの?」

「疑うのかエイジ? 気持ちは分からなくはないけどな。けど見ろ、父さんのこの盛り上がった上腕二頭筋を! これを見ればどれだけ効果的なのか分かるだろう」


 確かに、父さんの分厚い筋肉は男としてかなり羨ましい。


 やっぱり男なら筋肉が付いていてなんぼみたいなところがあるし、単純にないよりはあった方がカッコいいしな。それに……きっと女の子達からモテるだろ?


 父さんは結婚した今も、村の女性陣から結構な人気があるからな。


 鍛錬方法が薪割りなのは釈然としないけど、騙されたと思ってやってみよ。


「お、いいぞエイジ。その調子だ。中々筋がいいじゃないか」

「……ふぅ、はぁ。これ、結構疲れるんだね」

「そうだぞ? 斧はそれなりに重さがあるし、薪はある程度纏めて割った方が効率がいいからな。やってみると案外重労働になる。でも、鍛錬には丁度いいだろう?」

「そうかもね。――やぁ! ……けどこれ、絶対五歳でやる事じゃないよ」


 薪を割って。セットして。薪を割って。セットして。薪を割る。


 同じ作業の繰り返し。何度も何度も、何度も何度も。


 途中から腕を上げるのが辛くなって、手も痛くなった。腰にも負担がきて、立っている事すらしんどくなった。早朝で少し肌寒いくらいなのに、汗も止まらない。


 それでも一通りやり遂げるまでは、と俺は根性で薪割りを続けた。


 そして――、


「これで、ラストォ! ――やったぁ、終わったぁ!!」

「おめでとうエイジ! 見事最後までやり遂げてみせたな?」


 ――俺は遂に、最後の一本を割り終わった。


 もう疲労困憊だ。立ち続けていられるほどの体力はない。


 ビターン! 俺は背中からその場にぶっ倒れた。


「じゃあ父さんは薪をしまってくる。エイジは休んでていいからな」

「……ありがとう、父さん。お願いね」

「任せてくれ! 父さんも伊達に筋肉を積んでないからな!」


 薪を抱え出て行く父さんの背中を横目に、俺はステータスを開いた。


――――――――――――――――――――

名前:エイジ 年齢:五歳 性別:男性

所属:コルメリア王国東部ヴェルギン伯爵領コパス村。

生命:3

筋力:3(1up)

敏捷:3

技術:4

魔力:0

能力:斧術1

特性:異世界知識 ステータス表示

称号:転生者

――――――――――――――――――――


「……はは、やった。本当に上がった」


 筋力が一つ上昇し、能力欄にも〈斧術〉が増えた。どうやら父さんの鍛錬法は正しかったらしい。大変だけど、これからも〈薪割り〉をするモチベーションが出た。

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