冴木さん
透は、最近顔色がいい。
だから、このまま大丈夫なんじゃないか?このまま治るんじゃないか?って、期待してしまう自分がいる。
前よりもだいぶ会話ができるようになり、その話を部活のマネージャーの冴木さんが、どこからか聞きつてけ、オレに
「一緒にお見舞いに絶対行きたい‼︎」
と、お願いしてきた。
絶対に?
まぁ、透と冴木さんはよく部活のとき話してたし、仲よかったもんな。
じゃあ、行こうか!と安易に受け入れてしまった。
これがどうやら…いけなかったみたいです。
早速、放課後お見舞いに行くこととなった。
璦奈も、元から今日オレと行く予定だったので、三人でお見舞いに向かった。
「おーっす」
と、三人で病室に入ると透は目を丸くした。
そして、
「えっ⁉︎な…なん…冴木さん…⁉︎」
と驚いていた。
そんなに驚かんでも…
冴木さんは、ずっと透を心配していたみたいで、お見舞いにこれたことをとても喜んでいた。
そして、なによりも透が…
透がめっちゃ嬉しそうだった。
大丈夫か?
璦奈が目の前にいるんだぞ?
璦奈は、特に二人のことを気に留めていないみたいに感じるけど…
でも、ね?
透くんよ、それはよろしくないよねーって、オレは二人を見入ってしまいましたよ。
透と冴木さんは、なんだか二人の世界に入り込んでる感が強く感じた。
璦奈は、お花のお水交換してくるって言って席を外した。
そして、オレもちょうど看護師さんに呼ばれた。
「もしかして、透くんの好きなこってあのこ?」
なんて、看護師さんは嬉しそうにオレに、たずねてきた。
⁉︎
「えっ⁉︎」
驚いた。
看護師さんから、そんなことを聞かれるなんて…
「あら、違った?透くん好きなこいるって前に言ってて、はじめは璦奈さんなのかなって思っていたんだけど、違うって言っていたから、恥ずかしくて隠しているのかななんて、みていたんだけど、どうやら本命はあのこなんじゃないかってさ。若いっていいわね。透くん、生き生きしてる」
看護師さんは、お邪魔しちゃってごめんなさいねと、仕事へと戻っていった。
…
透…
好きな人いたんだ?
あんまり透とは、恋愛話しなんかしなかったからな…。
でも、透は…
「オレもびっくりだよ…そんなにあっという間に出来んのかよってさ」
「ほんとにそう。憎い」
⁉︎
透と冴木さんの声がした。
えっ?
二人は、なんの話してんの⁉︎
あっという間にできるとかってさ…
冴木さんの憎いってのもなに?
透ってさ…もしかして璦奈の妊娠にやっぱり気づいてたんじゃね?
てか、そもそも…
あの二人って、婦人科の前にいたし…
え、透…
どうすんだよ…
おまえ…
「あれ、寮梧?部屋入らないの?」
⁉︎
璦奈…
「あー、うん。は、入る」
クスクスっと璦奈は笑って
「へんなの」
って言いながら、璦奈は二人のところに入っていった。
「おー、璦奈いつもありがとう」
透がお礼を言うと、冴木さんが新しい水の入った花瓶をみて、わたしも今度お花持ってきてもいい?好きなお花あるの。
と、透に聞いていた。
透は、デレた顔で
「マジ?ありがとう」
なんてデレデレしていた。
そして冴木さんは、璦奈をみて
「よかったぁ」
って微笑んだ。
…
なんで璦奈に…
てかよ、透は璦奈をなんだと思ってんだよ⁉︎
璦奈は、透の為に…
透の苦しみがわかるから寄り添ってくれて…
それで…子どもを授かって一人で頑張ってんだぞ?
なのに、なんでそんな…そんな呑気にデレデレと冴木さんと話してんだよ。
少し戸惑っていると、看護師さんがやってきて、透くん少し検査あるからいいかなぁって、透を車椅子にのせていってしまった。
かと思えばクルッと振り向いて、寮梧くん先生が呼んでるから、そこの部屋入って待っててと、静かな部屋へ案内された。
璦奈と冴木さん…二人っきりだけど大丈夫かな?
二人の心配をしていると、いつもの透の主治医の男の先生がやってきて神みたいに優しい笑みを浮かべて、オレの手をいきなり握ってきた。
これは…いったい…
続く。




