調子
透も璦奈も辛い状況だ。
オレは、透の親友でもあり璦奈は幼馴染だ。
二人には、裏切られたとは言え…
大事な仲間だからな。
オレがどっちも守ってやるからな。
しばらくすると、準備ができたよと看護師さんがオレを呼びにきた。
看護師さんに言われるまま、看護師さんの後ろをついて、オレは検査室へと向かった。
「あの…適合する確率って…」
「うーん…なんとも言えないけど、難しいのは、確かかな。でもね、透くん嬉しかったと思うよ?患者さんってね、心のケアもだいぶ重要になってくるの。だから、検査受けてくれるだけでも、ずいぶん心の治療になっていると思うわ。じゃあ、この椅子に座って」
「はい」
平日だけど、静かな病院。
そして少し冷たい部屋の空気。
…なんで病院って白が基調なんだろう?
「あの…病院って白が多くないですか?」
「あー、清潔感とかあるみたいなんだけど、最近はベージュとか使う病院が増えているみたいね。安心する色なんだって。だから、やっぱり心のケアに繋がるのよね。寮梧くん、お見舞いたくさん来てあげてね。透くん、最近塞ぎがちだったから心配していたの。」
…
塞ぐよな。
オレだって、いきなり癌だって言われたらどうなるかわからないもんな。
透にも…言えなかったかもな。
…
ましてや、知らないとはいえ…いつのまにか透に彼女がいたら、さらにいえなくなりそうだな。
…
オレは…透を攻めるべきじゃないのか…な。
いや、病気なら何してもいいってこともないだろう…。
そもそも璦奈は、どんなつもりなのだろう。
透の子どもを身ごもるってことは、透を好きだったんじゃないのか?
オレのことまだ好きなら、そんなこと普通…しないよな?
「はい、採血終わりましたよ」
⁉︎
考えごとをしていたら、あっという間に採血が終わっていた。
結果は、すぐにはでないからまたきてねと看護師さんに言われた。
まぁ、どうせ透の見舞いに来るからな。
璦奈のこともあるし…
次の日、早速璦奈と病院へ向かった。
「透ー、どうだ調子は?」
「…早速、うるせーのきたじゃん。」
「お、そんなこと言えるってことは、なかなか調子いいんだな」
「…」
調子あんまり良くない…のか?
そうだよな…
今日話せても明日どうなるかわからない状況だし…。
「ほら、お見舞いに透の好きなコーヒーゼリー買ってきてやったよ」
「マジか…もっと早くに寮梧に病気のこといっとけば、毎日コーヒーゼリー食い放題だったのになぁ」
「オレは、パシリじゃねーよ」
「はは…そうだよな。」
「冷蔵庫入れとくよ」
「あ…」
冷蔵庫をあけると、たくさんのコーヒーゼリーが入っていた。
「なんだよ、めっちゃあるじゃんか」
「うん…」
…
よくみると、全部期限が切れている。
…
もう食欲もないんだな…透。
賞味期限は、見なかったことにしてそっとゼリーを冷蔵庫にしまった。
「あ、そういえば花火。明日花火大会あるんだぜ」
得意げな顔でオレは二人に教えてあげた。
「え、そうなの?」
璦奈は、やっぱり知らなかった様子だ。
「おい…寮梧…お祭り行く自慢かよ?てか…夏終わってんだろ」」
「ちげーよ。病院からみえるんだって。数年に一度だけのイベント花火。この日は、面会時間延長なんだって。だから、明日あけとけよな」
「あぁ…明日まで生きてたらな」
「いや、生きてなきゃ困るよ。花火見れねーじゃん」
「そっちの心配かよ…」
って、透は力なく笑った。
力なくだけど、笑う元気がまだある。
そして次の日、璦奈と透の病院へ向かった。
「やっぱり、今日の病院はいつもと違うね」
「そうだな。花火だし面会時間延長だもんなぁ」
「なんか、いつもより患者さんもお見舞いに来た人たちも笑顔だよね?」
「たしかに。やっぱりお祭りとか花火って心が踊るよな」
「ほんとだね」
オレたちも、透の病室へ向かう足取りが、少しだけ軽いきがした。
続く。




