なに言ってんだよ?
透に居場所を聞いて、オレは全力疾走した。
電話は、繋いだまま。
璦奈にぜってー触れんな‼︎って約束して。
そして璦奈の姿をみつけるなり、オレは璦奈を抱きしめた。
「璦奈…大丈夫か?」
「うん…わたしは、大丈夫…」
わたしは?
ってことは、⁇
「おい透‼︎どういうつもりだよ⁉︎」
透の胸ぐらを思いっきり掴んだ。
透は、真っ直ぐにオレをみて
「オレはお前が嫌いになった」
ってこたえた。
…なんか透…
「だからって璦奈を巻き込むなよ」
「オレは巻き込んでなんかない。そっちが勝手に…」
璦奈は、俯いたままだった。
「璦奈…どういうこと?」
「それは…ごめんなさい」
なんなんだよ?
なんで二人してごめんなさいなんだよ‼︎
璦奈が透を好きなんじゃ、しょうがねーじゃんか…
「そういうことか。」
オレは、もうこれ以上話しても無駄だって感じたから、その場を後にした。
あれからオレは、璦奈とも透とも話していない。
あの二人が一緒にいるのを、何度か見かけた。
でも…
オレには、どうすることもできない。
…
勝手にすりゃいいんだ。
…
璦奈の祖母は、無事退院したとオレは母親から聞いた。
オレには、もう関係ない話だ。
そもそも璦奈は、透といい感じなのだろう。
ってことで、部活に全力で挑んだ。
…それがよくなかった。
捻挫しましたね…
病院は、嫌いだけど…骨が折れてるかもしれないから、きちんとみてもらいなさいって保健の先生がうるさいから、仕方なく病院へきた。
結局のところ骨は、異常なかった。
さて、帰るか。
痛い足の方を庇いながら立ち上がると、大丈夫⁇って、目の前には優しく支えてくれる璦奈がいた。
えっ…
そして、璦奈の横には少し離れて透がいた。
…
なんで…二人して病院にいんだよ?
ふとオレの視線に、婦人科という文字がみえた。
…
おい…こいつらって…
もうそこまで進んでたのかよ…
だからあのとき、二人してごめんって言ったのかよ?
「あ、大丈夫…だから」
オレは璦奈をそっと振り払った。
そして透と目が合ったけど透は、なにも言わなかった。
オレもなにも言わず、目を逸らした。
それから一カ月くらいが経った。
璦奈は…たぶん妊娠しているんだろう。
二人で婦人科の前にいたし。
璦奈は、学校にはきちんと登校している。
でも、透は…
たぶん透は、バイトに忙しいのだろう。
きっとお互い、両親に言えないでいるんだ。
だって、璦奈が両親に話したらオレの母親が、聞いた聞いた⁉︎ってオレに言ってくるはずだから。
二人でやってけんのかな…?
…どうでもいいか。
それは、二人の責任だもんな。
それから一カ月が、また過ぎようとしていた。
久々に学校で、透を見かけた。
…
おいおい…
すげー痩せてんじゃんか。
大丈夫かよ…
朝から晩まで働いてんじゃねーのか?
…
心配になるほど、げっそりしてんじゃんか…。
それにふらついてるじゃねーか。
…
「おい、透…大丈夫かよ。」
「あー…やっぱり…学校なんか…くるんじゃなかったわ…」
ろくに話もできねーじゃん‼︎
「あ…寮梧…透くん具合悪くなっちゃったんだ」
璦奈が駆け寄ってきた。
「璦奈、透は大丈夫なのかよ⁉︎」
「…それは…あのっ…」
「いうなよ。オレは大丈夫だから」
「でも‼︎もう無理だよ‼︎時間ないじゃない‼︎」
…
そうだよな。
出産は、待ってくれないもんな。
…
「オレがさ…オレも手伝うよ」
ほんとは、二人なんか許せないけど…でも、このままじゃ、後でオレが後悔するんじゃないかって思ったんだ。
「寮梧…いいのかよ?オレだぞ⁉︎部活も学校も…寮梧の彼女も…オレは…オレは…こんなオレなんか見捨ててくれていいから…」
「たしかに璦奈を奪ったことは、許してない。でも、オレにとったら透は大切な友達だし、璦奈も大切な幼馴染だから…」
…
「寮梧…」
璦奈は、泣いていた。
「璦奈…寮梧…今までごめんな。オレさ…寮梧が羨ましかったんだ。全部持っててさ…醜い嫉妬して、二人を巻き込んじまってさ。誰…にも言わないでこのまま…消えとけばよかったな。寮梧のおひとよしには、完全に負けたわ」
そういうと、透も涙を流してオレの手を力なく握った。
「透…痩せたどころか、細すぎだろ!」
…
「オレ…もうすぐいなくなるからさ…璦奈返すよ…まぁオレたち付き合ってないけど」
「は?何言ってんだよ⁉︎」
付き合ってないだと⁉︎
返すってどういうことだよ‼︎
続く。