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おかえりなさい

 そもそも、オレが赤ちゃんの存在を璦奈の心に宿してしまったのだろう。

 

 

 璦奈は、少し前まで生理不順だったらしい。

 

 そして、もしかしたら妊娠も難しいかもしれないということで、しばらく治療して薬を処方されていたらしい。

 

 

 だが、最近生理はきちんとくるようになり、妊娠も可能かもしれないと先生から言われたのだと。

 

 それを璦奈は、妊娠できるかもしれないという言葉を、妊娠したと脳内変換してしまったらしい。

 

 脳の誤作動だ。

 

 

 そもそも璦奈は、おばあさんの入院に、自分の不妊、そして透の病気、さらにはオレの移植提供と、次から次にいろんなことが起きて、すべてが処理しきれなかったのだろう。

 

 透からは、病気のこと口止めされていたし、オレも璦奈と透のこと、付き合っているのだと勘違いしていて距離をとってしまっていたし…

 

 それがよくなかったのだろう…

 

 オレと璦奈は、付き合ってすぐにこういう状態になってしまって…でも、璦奈の中では…ずっとオレとの交際が続いたままだったのだ。

 

 

 だから、そのまま脳内ではオレと璦奈は付き合っていて、赤ちゃんができたと思い込んで…

 

 でも、生理がやってきたことにより、璦奈は流産してしまったと勘違いしたのだ。

 

 では、なぜほんとうに妊娠していないのに、お腹が膨らんだのか?というと、想像妊娠でも、つわりやお腹の膨らみがでる人もいるのだとか…

 

 そして璦奈は、そのまま精神科病院へ入院したのだ。

 

 璦奈は、オレが赤ちゃんはまた戻ってくるよって言ったから、その言葉に救われたみたいだ。

 

 オレがお見舞いに行ったその日から、璦奈は元気を取り戻したらしい。

 

 オレも璦奈の病院に直接あいにいくと笑顔だし、携帯に返事もくれるようになった。

 

 もうしばらくすれば、退院できるそうだ。

 

 

 透も、リハビリなんかをして頑張っている最中だ。

 

 

 

 璦奈が退院して、落ち着いたらプロポーズをするつもりだ。

 

 だか、オレたちはまだ学生だ。

 

 婚約しつつ、赤ちゃんを迎え入れる状態にしなければならない。

 

 なので、きちんと勉強をして働いて自分たちが親になる準備ができれば、ハッピーウェルカムになれる。

 

 それまで、璦奈としっかりしていかねば。

 

 

 で…

 

 透と冴木さんに、大まかに話はした。

 

 二人は、璦奈が妊娠していると思っているので。

 

 残念だけど残念じゃないね‼︎と、二人は応援してくれた。

 

 そんな二人の笑顔をみて…

 オレは、二人を疑ってしまったことを正直に話して謝った。

 

 そしたら、意外にもすんなり許してくれた。

 

 透は…

 

 透は、病気のこと本当はオレにも、もっと早く知ってもらいたかったのかもしれない…

 

 でも、オレが言わせない空気を…

 

 心のドアを…閉めていたのは、オレの方だったのかもしれない。

 

 これからは、なんでも相談してもらえるような頼れる人間になりたい。

 

 そう強く思うようになった。

 

 

 

 で…

 です…

 

 ずっとモヤモヤしていた憎きアイツってやつを直接聞いてみることにした。

 

 

 憎きアイツとは…

 

 

 

 …

 

 

 病気のことだった。

 

 二度と再発しないよう、冴木さんが全力サポートするって、言っていたらしい。

 

 で…

 

 前にオレが病室に入ったとき二人して顔を赤くして、みた?ってオレに聞いてきたのは、ただのイチャイチャシーンを見られたかと思ったとのことだった…

 

 …見なくてよかった。

 友達のイチャイチャを目撃したときの、気まずさは半端ないからな。

 

 お互いに。

 

 

 

 これからオレと冴木さんは、病気のパートナーと病気に向き合い支え合って生きていく。

 

 そもそも、オレや冴木さんもいつ病気になるかわからない。

 

 お互い様だし、支え合うのは当然だ。

 

 いや、オレの場合は今までの反省を生かして、もっと璦奈に向き合わなくてはならない。

 

 オレのせいで精神的に参ってしまった部分もあるから…。

 

 てか、大部分がオレのせいなのだ。

 

 璦奈は、夜があまり好きじゃないと幼い頃よく言っていた。

 

 オレは…璦奈をずっと夜にとじこめていたことに気づかなかった。

 

 こわかっただろう…辛かっただろう…

 

 

 

 この反省をどう挽回するか、それは璦奈の些細な表情を見逃さないことだ。

 

 もう、大切な人を自分の手で苦しめるなんて絶対にしたくない。

 

 

 

 璦奈は、無事に退院して元の状態に回復しつつある。

 

 

 なので、オレは改めて璦奈にプロポーズをした。

 

 

「璦奈、オレこれから勉強頑張っていい職につけるように頑張る。だから、いずれ結婚してもらえますか?その時、またプロポーズしてもいい?」

 と。

 

 璦奈は、笑顔で受け入れてくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 数年後

 

 

 透は、無事に回復してオレと同じ大学でバスケをできるくらい元気になって成人した。

 

 透は、冴木さんとも順調に交際している。

 

 

 

 

 その後、璦奈もすっかり元通りに回復した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「寮梧〜‼︎赤ちゃん、赤ちゃん!かえってきたー‼︎」

「おー、ホントかよ⁉︎赤ちゃん…赤ちゃんがかえってきたのかっ…そうか…おかえりなさいだなっ…璦奈、ありがとうなっ…」

 

 土砂降りの涙が溢れ出た。

 

「もぅ、寮梧が泣くから…わたしまで泣いちゃったじゃん」

「うっ…嬉し涙は、特別だ。別腹みたいなもんだよ。おかわり自由だぞ」

「なにそれ〜」

 

 

 

 あれから数年後、オレは璦奈と結婚して念願の赤ちゃんを授かりました♡

 

 

 

 

 

 

 おしまい。

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