愛おしさのある世界なら
「あーら、あーら、そんなにアタチがいいんですかー?」
おどけるような口調で、抱いている白猫に問いかける。ちなみにこの目つきが悪くて白っぽい猫の名前はアリス。アリスと命名した理由は特にないけれど、人間らしい名前にしてみた。にーにー鳴いているのが、また可愛らしい。
初めてこの猫っぽい猫(意味不明)とご対面した時は、ツンツンして懐いてくるどころか爪で引っ掻いたりしてきたものだけれど、今ではご覧の通り、漫画に出てくるような熱い勝負とかはしていないけれど、私に服従してにゃーとかにーって私に対して完璧に油断しているのが丸見えだ気をつけないと死ぬぞ。え、なんで死ぬの。
「あ、そうだ」アリスがにゃ、と訝しむように私を見つめる。「これよこれ」昨日デパートで購入したあるモノをビニール袋から取り出した。黒色の、首輪。本革製で銀のプレートに『alice』と彫って貰っているので、自然と値は張った。でも敢えて言うけれど、私は良い処で生まれたから、お金とか金銭的には困らないの。ビバ、金持ち。
敢えて言うけれど、首輪は取り外し易いように工夫されていて、後ろの接続部分を取り外せば直ぐにアリスの首に掛けることが出来た。
「あぁ……なんかいいわねぇ」
ワタシが購入したちょっと高めの首輪を付けてチョロチョロ動き回る姿がまた愛らしい。きゃわいい。もー食べちゃいたい。「食べちゃうぞっ」確か隣の部屋には浪人生がいた気がする。こんな甘ったるい独り言を徹頭徹尾聞かれていたら殴られそうだ。「ぶっとばすぞ!」たぶん彼は有言不実行な筈。む、壁に小さく開いた穴から隣の部屋の浪人生が口汚くアリスたんとアタクシを殴ると宣言してきた、ふざけるな殺すぞ。「ごめんなさいっ」素直に謝罪する私ってえーらーいー。ついでにアリちゃんかーわいい。アリちゃんって言うと蟻ちゃんになって蟻でも飼っているのかと邪推されそうで蟻如きとアリスたんたんを一緒くたにすんじゃねぇ! って言いたくなる。
「きょーは何が食べたい?」
「にゃー(あなたの好きなものっ)」
「えー、じゃあ私はアリスを食べちゃおーっと」
「にー(きゃー、こわーい)」
敢えていうけれど、括弧の中身は私の創作だと思うわ。