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「結婚してください!」


10歳の少女が、泣く子も黙る様な人相、さらにはクマのように大きい大男に求婚をしている。はたから見ればおかしな光景だろう、しかし彼女の気持ちは真っすぐだった。この人と結婚したい。


すると男は言った


「君が将来、きれいな大人になっても同じ気持ちだったら今度は私からプロポーズをしよう」


この時、微笑みながら私の頭をなでてくれた彼の顔が頭から離れない。





「このときのアヴィング様ったらこの世のものとは思えないほどの美しさだったのよ!」

「アメリアってば何回この話をすれば気が済むのよー」


友人のソフィアがあきれたようにぶつぶつ言っている。何回でもいってやりますとも!当時10歳だったアメリアももうそろそろで18になる。そう、大人の仲間入りする日がそろそろ迫っているのだ。この日をどれだけ待ち望みにしていか。そんな感情から、想い人との思い出を友人に一日3回くらい話しているのだ。でも許してほしい、8年だ。彼に恋焦がれてから私は磨きに磨いた、きれいな大人になるために。

毎日保湿、筋トレ、マッサージはもちろん、血迷ってカタツムリを顔に乗せたりもした。(効果があったのかは今でも謎)今では皆と変わらないちゃんとした淑女になっているはずだ!


「でもなんであなたみたいな子が野獣と恐れられてるアヴィング様なのかねー」

「何回も言ってるでしょう」

「野獣のような鋭い目」

「悪を見逃さない正義の目」

「人の顔を握りつぶせそうな手」

「どんなものでも受け止めてくれる手」

「そしてなんて言ってもあの、ぶつかっただけでも人が殺せそうなあの体!」

「何を言ってるの!あの誰にも倒せないような、縦と横にも厚いく芯の通った屈強な体こそ最高な肉体美でしょう!?」

「あーはいはい。何回も聞いたけど、どこであなたの感性はひん曲がってしまったのか」


皆さんもうお判りでしょうが、私は筋肉フェチというものだ。もともと、私は子供のころから騎士団長の父が好きだったせいか、筋肉のついた殿方が好みだった。しかし、ソフィアの言うとうりこの世界では筋肉がついているということはあまり良いイメージがついていないのだ。この世界では魔法というものがあり、汗や泥まみれにながら近距離で体を使った戦い方をする騎士よりも、遠距離からスマートに攻撃をし、敵を投げ飛ばすことのほうが美徳とされている。さらに、魔法が使えるのはほとんどが貴族のため、高貴な生まれの人たちが集まる。しかし、騎士団は魔力の使えない、平民上がりの人が多く軽視されがちだ。そのため、騎士団の地位は魔法騎士団よりも低いのだ。みんなの憧れである魔導士は魔法を扱い、体を酷使することはないため筋肉をつけない。また、女性は体のでかい男性が高圧的で怖いと感じる人が多く、巨体は恐怖の対象であるのだ。つまり、筋肉があるのははっきり言ってモテないのだ。


「でも仕方ないかー、アメリアには運命の相手なんだもんね」


そうなのだ、私は運命の相手に出会ってしまったのだ。



少し昔にさかのぼるが、私はよく誘拐される子供だった。父に恨みを持つという人に誘拐されてしまうのだ。当時は、10歳でひ弱だった私は、今回はもう家に帰れないんじゃないかと絶望していた。

そんな時、運命の相手に出会った。


「大丈夫かっ!」


そう、アヴィング様が誘拐された馬車を追っていち早く助けに来てくれたのだ。彼は22歳ながら、期待の新人と呼ばれているのも頷けるほどの剣の持ち主であった。あっという間に倒された誘拐犯は、その後きた騎士員に達に回収されていった。彼の美しい容姿とあまりに完璧な肉体美にやられ。そして私は勢い余って求婚してしまったというわけだ。その後も、私は彼に何度もアプローチするも、答えはいつも同じだった。最初こそは一目ぼれだったが、だんだんとともに時間を過ごす機会が増えていくうちに彼のやさしさにふれ、日に日に愛が募っていくばかりだった。そしてある時、彼は戦争の遠征に駆り出されてしまった。そして5年たった今彼は勝利の報告とともに父と帰ってくるのだ。今回の戦争では


「とうとう明日大人になるのよ!気持ちは変わってないって手紙も送ったし、とうとうアヴィング様と婚約することができるわ!」


待ちきれないと言いながらベッドをぐちゃぐちゃにする私は、淑女失格ですか?



そして待ちに待った、成人の儀当日。そこには、国王や王太子様もいて会場は大いに盛り上がっていた。早くアヴィング様来ないかしらなどと考えていると、途中父が来て合流した。しかし、肝心のアヴィング様がまだ来ていなかった。


「お父様、アヴィング様はまだこちらに来ないんでしょうか?」


まだ準備しているのかしら?


「あー……そろそろ来ると思う」


と、なんとも歯切れの悪い返事に不満を持ちつつも、ひたすら待つことしかできなかった。


「アメリア様よろしければ私とファーストダンスを踊ってくれませんか?」


突然、見知らぬ上流階級と思われる方から申し出があった。


「すいません、ファーストダンスは誰と踊るのか決めていますので。」


すると、その男性は悔しそうな顔をしながら去っていった。

心なしか、周りがが騒がしい気がする。

何かあったのかしら?


そして儀も終盤に差し掛かったところで、ようやくアヴィング様が到着した。

昔よりも体が鍛え抜かれているわ!ますます美しくなって、誰かに取られたりしないかしら!?もはや彫刻だわ………。

などと、久しぶりの再会に舞い上がっていた。しかし、いつまでたってもアヴィング様がこちらに来ることはなかった。

いつになったら誘ってくださるのかしら?何回か目が合ってるし、私に気づいていないわけではないわよね?

ダンスは男性が女性を誘うものという暗黙のルールが存在し、私はひたすら待っているしかなかった。もう皆が帰りはじめ、人がいなくなっていったところで私はとうとうしびれを切らし彼のところへ行った。


「お久しぶりですアヴィング様、お元気な姿を見れてうれしいです」


「ああ、アメリアも変わりないようでよかった」


そう笑う顔を見て内心ニヤついていたがていた私だが、もう大人になったのだ、淑女の仮面をかぶりなんとか顔面崩壊の危機を脱したのだった。


「手紙を送ったはずですが、中身は読まれましたか」


そういうとアヴィング様は急にきまり悪そうにした。

嫌な予感がする。


「……すまない、私はあなたとは婚約できそうにない」

ゆるく投稿していきたいと思います。

誤字などがありましたらコメントお願いします。

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