異世界感に満ちた変身写真のベストショット
挿絵の画像を作成する際には、「AIイラストくん」を使用させて頂きました。
私こと蒲生希望が通う堺県立大学のゼミには、王美竜さんっていう台南市出身の留学生の子がいるんだ。
この美竜さんは日本語が堪能で、日本文化にも非常に精通しているの。
少なくとも日本の居酒屋文化に関しては、私よりも遥かに詳しいんじゃないかな。
それでも言動の端々に台湾の文化風俗が窺えて、そうした所に私は国際交流の醍醐味を感じちゃうんだよね。
この日の昼休みに美竜さんが話題に挙げた変身写真も、そんな台湾文化の一つなんだ。
台湾の写真館では、衣装やメイクで別人みたいに着飾る「変身写真」って記念写真が流行っているんだって。
「聞いてよ、蒲生さん。こないだ妹の珠竜がお母さんと一緒に変身写真を撮ったんだけど、それが凄いんだよ。」
そうして突き出されたスマホには、確かに物凄い写真が表示されていたんだ。
「これは大胆だね…珠竜ちゃんってまだ中二じゃなかった?」
中学生がバニーガールのコスプレだなんて、親御さんはどう思ったんだろう。
そう考えたんだけど…
「お母さんが面白がって薦めたみたい。だけどお母さん本人もなかなかの物だよ。」
「えっ、そうなの…」
さらっと凄い事を言う美竜さんだけど、驚くのはここからだったの。
何しろスマホの画面に表示されたのは、実に若々しい兎耳メイドさんの画像だったんだ。
とても大学生の娘がいるとは思えないよ。
「私も高校生の頃に何回か撮った事があるけど、あそこまで無茶は出来ないよ。」
そうは言いつつも変身写真をアレコレ示す辺り、美竜さんも満更ではないんだろうな。
確かにメイド服なんかは、日本でもコスプレ衣装として定番だけど。
大阪の日本橋で見かけるよ。
この漢服姿の写真なんか、前にも見せて貰った覚えがあるよ。
本人もお気に入りなのだろうね。
「変身写真って歴史系の衣装がメインだと思ってたけど、割と色んな衣装があるんだね。」
「まあね、蒲生さん。アニメやゲームの好きな人向けに、甲冑や法衣もあるらしいよ。書き割り背景を選べば異世界感のある写真だって撮れるそうなんだ。」
写真館の回し者でもないのに、美竜さんったら妙に得意気だね。
とはいえ異世界感のある写真には、私も興味津々だよ。
マントと鎧を借りて、女冒険者に成り切るのも悪くないだろうな。
それで美竜さんには法衣を着て貰い、女賢者を担当して貰うんだ。
いつか台湾へ旅行に行ったら、そうして遊ぶのも面白そうだよ。
その為の旅費を貯めるべく、講義の合間のバイトを頑張んなくちゃね!