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異世界転移をしても配信をする!  作者: 綴り手のツヅ
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異世界転移されてみた

 え~どもども

 今日も始まりました"睦月竜斗チャンネル"、ヒロイン担当の"ネオ=ルミナス"で~す☆

 今宵も主人公さん達の物語を綴るね♡

 ……やっぱ止めようこの挨拶…


『めちゃくちゃ良いじゃん』

『次から言って欲しい』

『ネオちゃんに綴られたい(意味不)』


 嫌だ!めちゃくちゃ嫌だ!!

 なんでサブの私に挨拶が必要なんですか!?

 一応メインは竜斗さんなのに!?


『可愛いから』

『可愛いが過ぎるから』


 か、可愛い……そんなことありません!!ねぇ、そうですよね竜斗さん!!


「可愛いよネオ」


 う、うぅ~…///は、反則です…///


『俺ら非リアの前でイチャイチャしやがって』

『照れてるネオちゃん可愛い』

『如月は禿げろ』

『一生イチャついてろ』


 そ、そんなことよりも今日はとあることに挑戦したいと思います!

 とりあえずですね…

 あ、あれ?どこだっけ??

 え~と、確か【ボックス】の中にあった気がするのですが…??

 あっれれ~おかしいぞ~??


『唐突の死神w』

『あざといのに可愛いのズルすぎ』


 え?私だけの【ボックス】じゃなくて竜斗さんとの共有に入ってる?

 あ、本当だ

 ありがとうございます竜斗さん!


『カップルじゃなくて新婚さん?』


 まだ結婚してませんよ~だ!!

 まぁ…いづれは…その…したいですけど


『まだ??』

『なんか倒れた音したぞ』

『旦那が死んだw』


 さて、気を取り直して今回挑戦する事は~


『わくわく』

『旦那が倒れたことは無視するんですねw』


──"魔王討伐"です!!


~~~~~


 一週間のうちようやく休みに入れるという最高な日、金曜日。明日と明後日の休みにほとんどの人間は休息を求めたり友達と遊びに出掛ける予定を立てたりする。


 それは東京にある、とある高校に通う"如月竜斗"にはあまり当てはまらないものだった。何故なら、それは竜斗の高校生になってから続いている趣味に関係する。


 実は、竜斗は高校生になり、入学祝いとして両親から一台の最新機種のパソコンとカメラを貰い、そこから両親の応援もあって配信者になることにした。


 そして、現在ではチャンネルの登録者は百万を越え、ほとんど全てのアーカイブのグッド数は一万越え。事務所に入ることなく個人で活動してきた中ではトップレベルと称しても何もおかしくないほどに成長していたのだ。


 中にはそれで付け上がる人も居るのだが、竜斗はそんなことしないよう両親に教育してもらっていたので、誰にも配信をしていることを教えていないし傲慢にものを言うこともない。


 ちなみに、竜斗は"睦月竜斗チャンネル"というほとんど本名と変わらない名前で活動している。普通に馬鹿だ。また、いつもの配信では伝統工芸品を作る祖父が特別に作ってくれたお面を付けているため素顔は誰もわからない。


 それはそれとして、本来なら最高だと感じるはずの金曜日は特に特別だと思うことなく自分の教室の扉を開けた。


 そして教室の端にいる複数名の生徒から向けられる軽蔑の視線を無視して自分の席へと座る竜斗。こんなところで配信をしてきて鍛えたスルー力が発揮するのは少し複雑だった。


「さてさて昨日はどんなゲームしてたんだぁ?なぁ竜斗君よぉ??」

「どうせ変態だしエロゲだろ」

「間違いねぇ!キモオタ乙~」


 ただただ一校時目の授業の準備を進めていると、教室の端で話していた"水無月直人"、"本谷上矢"、"佐藤正木"の三人が竜斗の机を取り囲み、いつも通り馬鹿にしてくる。


 確かに竜斗はオタクの部類ではあるが、それは単純にアニメや漫画が好きなだけであってたくさんグッズを集めるかと問われれば否と答えるレベルだ。それにエロゲなんてしないし、見た目も体格も平均的で目立った特徴はない。


 何故彼らが竜斗のことを目の敵にして侮蔑の言葉を吐いてくるのかというと、単純に竜斗に様々な面で負けている故の"ただの嫉妬"である。


 普段の素行は悪く、休みでも外に出ては他所に迷惑をかけたり、俗に言う不良な彼らは自分より勝る存在を嫌い、その中でも一番弱い竜斗に目を付けたのだ。


 それは彼らの弱い所であり、自分達に他のクラスメートから軽蔑の視線を向けられていることに気付いていないことはいっそのこと哀れにすら思えた。


 ただ、誰かが竜斗を助けようとすればすぐに標的が向くので誰も手を出すのを躊躇ってしまう。無駄に喧嘩してきてるので三人は強いのだ。


 まぁ竜斗は別に何か思う訳でもないので別にそれでも構わないと思っているのだが。


 それから三人からの嘲笑をスルーし続けて数時間後経って昼休みになり、竜斗はバックから手作りのお弁当を取り出した。


「ねぇねぇ竜斗君」

「あれ?どうしたの弥生さん?」


 お弁当の包みを広げ、いただきますの挨拶を始めようとすると、竜斗に声を掛けた女の子が一人。


 名前は"天寺小雪"。学校の才媛と呼ばれ、同時に最大美少女とも呼ばれる女の子だ。


 母がロシア人らしく、ハーフが故のとても綺麗な銀色の髪は神が与えた物のように思える。そして透き通った蒼眼は慈愛の念が込められていて、スレンダーでありながら女の子特有の身体的特徴があって、性格も良し勉強も良し運動だって出来る理想を追求したような完璧な女の子である。


「一緒にご飯食べない?」

「いいよ。そんで今日も色々話そっか」

「うん!」


 そんな物凄く完璧で皆の憧れである彼女にも秘密って程ではないが隠していることがある。そう、実は──


「でね!やっぱ最強のヒロインって最高だって思うんだ~!!」

「分かる!圧倒的な力で主人公を守るヒロインは格好いいからな!」

「それそれ!!」


 最近の学校では珍しく解放されている屋上で、とあるアニメに出てくるめちゃんこに強いヒロインについて語り合っていた。


 他にも、錬成の魔法で最終的に最強に成り上がる異世界系の物語だったり、スライムに転生する物語だったり、馬の擬人化だったり、レールガン打つ主人公だったりとたくさんのアニメについての話で盛り上がっていた。


 そう。竜斗もさることながら小雪もオタクであり、尚且つ秋葉原のオタクもビックリするレベルで最近から昔のものまで認知しているのだ。そのため、同じオタク同士ということもあり、二人は仲が良かったりする。


 ちなみに唯一クラスメートの中で竜斗が配信者をしていることを知っている人物でもある。真なるオタクというのは約束を破らないのだ。


「それはそうと本当に大丈夫なの?」

「なにが?」

「み、水無月…く…んにいじめられていることだよ」

「…名前呼びたくなさそうだね」

「だって友達を馬鹿にされてるのは許せないかな…」

「てかあれっていじめになるの?」

「へ?」


 あまりにも検討違いな竜斗の返答に普段の小雪からは発せられない素っ頓狂な声があがる。


 誰がどうみても竜斗が水無月達にされていることはいじめだと考える。馬鹿にされて笑われたり、ちょっとした悪戯をされたり、たまに殴られたりと完全に字面だけ見ればいじめだ。


 にもかかわらず竜斗はいじめとさえ思っていないようで、若干竜斗の高すぎるスルー力に引き気味である。


 その後、二人は一緒に教室に戻ると、そこの異様さに驚き固まった。


 それは他のクラスメートも同じようで、全員同時に教室の床を見つめていた。


 普段ならただの何の変哲もない床のはずなのに、いつもとは違い、二人の大好きなアニメや漫画でしか見ない"魔方陣"が浮き上がっていた。


 クラスメートの反応からそれが誰かが遊びで書いた訳ではないのは確かだ。それに床に最初は書かれていたのに、二人が教室に入ってすぐに腰くらいの高さまで空中に浮遊してきた。


「皆早く逃げろ!!」

「皆早く逃げて!!」


 オタクであるからこれからの展開を読めた竜斗と小雪が驚愕の衝撃からすぐに硬直から抜け出し、全員に逃げるよう呼び掛けてすぐに扉を開き避難経路を設立しようとする。


 だが──


「あ、開かない!?」

「窓も開かないのかよ!!」


 小雪が扉を開けようとするがピクリともせず、それを見た竜斗が窓を開けようとしてもそれでもまったく動かない。


「皆さん、固まって!!」


 混乱して動けない、又はパニックに陥っているクラスメートに同じく教室に居た担任の先生が一喝を入れて複数で集まるように指示する。


 それに従ってそれぞれが一番近く、又は仲の良いメンバーで固まり、竜斗と小雪は覚悟を決めた表情を浮かべてだんだんと広がっていく光を迎える。


 光が完全に教室を覆うまでの間に最後に竜斗が思ったのことは


──"明日の配信どうしよ"


 といったあまりにも気楽なものだった。

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