5.Side:????
side:????
協力してくれた暁には、彼女の情報を教える。
この事実だけが今、私が持っている最大の武器だ。
ここでチャンスを逃せばもう彼女と接触する事は実質ハードモードになるだろう。
おっとりしているように見えて実は用心深彼女だ。
もうあと一押しなければ…。
──ぱさり。
フードを外せば窮屈だったピンクブロンドの髪が解放され背中で揺らめいた。
月明かりに照らされてまるでキラキラと光っているようだ。
そのしなやかな髪に釘付けになったフラウは、あまりの美しさに目を細めた。
「貴方は…聖女様?」
「はい、私は聖女ですがアナタを犯罪者扱いした聖女とは一緒にしないで下さいね。アレは私の妹でティシーっていいます」
「聖女様は二人いるってこと…?」
突然の告白に動揺しているフラウ。
「実は双子なんです。聖女が双子だってことは私達が16歳になるまでは隠してきたの。先日の誕生日パーティーで公にしたけどね」
唖然としているフラウに思わず「ふふっ」と笑いが漏れてしまったが本人はそれどころではないようだ。
それはそうだ。今日初めて聖女という存在を認識しただけでも混乱しただろうに。しかも、聖女が双子だったなんて。
「聖女は生まれつき特別な力を持っているのよ。私は『未来視』、ティシーは『魅了』。私はある程度の未来なら見ることができてその未来を修正することも可能よ。ティシーは眼で相手の精神を掌握して自分の思い通りにするわ」
私の双子の妹・ティシーは本当に恐ろしい子だ。ある程度、魔眼に対抗出来るものには効果は薄いが一度その能力に飲み込まれてしまえばあとはティシーの思い通りだ。
それで何人もの犠牲者を見てきた。
魔力の流れ的に婚約者達には、魔眼を常時発動しているらしいが何故か効いていない。
魔法壁や防御魔法を使用した跡は一切無い為、不思議で仕方ないが…。
今はそんな事気にしている場合ではなかった。
「だからアレの眼を見つめたら駄目よ?身体が思うように動けなくなるからね。ちなみに私の能力を知っているのはアナタだけよ」
「ッなんでそんな重要な話を私にしたの?もし私が聖女様を攫うような悪いヤツだったら…」
フラウは絶対そんなことはしない。
だってこんなに優しい子、他にいないもの。
「そんなことありえないわ。だって私はアナタを誰よりも理解しているし一番信用しているもの。この先も私を裏切るようなことは絶対にしない」
「それは、未来視で見たからってこと?」
「…えぇ、私の能力は今まで一度も外したことはないわ」
ふと、張り詰めていた空気が和らいだ気がした。
フラウは目尻を下げ「ふぅ」と一息つく。
「そっか、…取り引きの内容は?」
「ただ一つ、私を守ってほしいの。何者からも。この先、アナタを助け出した後に私は命を狙われてしまう」
「…ッ!!!それは、私を牢屋から出してしまったから狙われてしまうという事ね…?」
主に狂犬4匹に命を狙われる羽目になるのだが…。そこはフラウに盾になってもらおう。
「だから全てが終わるまでは私の騎士になって守り抜いてほしいわ。傭兵の仕事はそのまま続けてもらって構わないわよ。助けが必要な時に呼び出すわ」
歪に動き出した歯車はもう留まることを知らないだろう。
私はこれから様々なイベントを見届けなければならない。
「安心して、私と行動を共にすれば自ずと記憶の欠片が見つかるわ。星のお告げよ」
格子から見える満天の星の海。
輝きを放つ星々はまるで私達を祝福しているみたいだった。
隣を見るとフラウの目には同じような眩い光が視えた。
「分かった…聖女様に従う、早く記憶を取り戻したいしね。改めて、私は傭兵のフラウ=クラウディア。聖女様のお名前は?」
「私は、リシテア=ディ=シャルローゼ。これからよろしくね私の騎士様」
──《意地悪な双子の姉は裁きを受けてバッドエンドを迎えてしまう》
これがこの世界での私の役割だ。
どのルートでもバッドエンドを迎えてしまう私と序盤で処刑される筈のフラウ。
この二人が生き残るとなると…さぁ、どうなる?原作では無かった展開だ。ここからは、未知の世界ということもあり正直足が震えるが私には力がある。
必ずハッピーエンドに辿り着いてみせる。
だって推しにはシアワセになってほしいしね。
こんにちは、いつもご覧頂きありがとうございます。
早くヤバイ男達を登場させたいですがもうちょっとかかりそうです…m(_ _)m
もう少々お待ちくださいませ。