2.平穏カムバック
「見つけましたわ、大罪人フラウ=クラウディア!貴方を拘束します!!」
「はぁ!?な、なんで!?」
そう女の子が叫ぶと、四方向から拘束魔法が飛んできてあっという間に身体の自由を奪われてしまった。
全くもって状況が理解できない!!
突然拘束されたのだが!?
物陰に隠れていたのかローブを纏った男達が出てきた。
どうやらコイツらが魔法を放ったらしい。
ローブの男達はニヤニヤと笑いながら近付いてきた。
キツく絞められ胃から食べた物がこんにちはしそうだ。
辺りを見渡すと、どんちゃん騒ぎをしていた酒場が水を打ったように静まり返っていた。皆、只事ではない雰囲気に様子を伺っているようだ。
気付けばロドニー君やカイ君も魔法ではないが縄で捕らえられていたが、本人達は酔っ払って爆睡している。
「やりましたね、聖女様!!!」
「聖女様、さぁ早く!!この薄汚いネズミを牢屋に入れましょう!!これでこの国…いや、この世界は安泰ですぞ!」
「皆様、落ち着いて。相手は大罪を犯した極悪人。冷静に対処しましょう」
聖女様…???
聖女様ってあの世界を救う聖女様???
本でしか読んだことがないが、《聖女様》とは、聖なる光の魔法と奇跡的な癒しの力で世界を平和に導くと云われている伝説の存在だ。
御伽噺の世界だけかと思っていたが、まさか聖女様という存在がこの世界にいるとは思ってもいなかった。
そんな高貴なる御方の前で身体を拘束され膝を着いている私…。
本音を言うと、この拘束なんて3秒もかからずに外すことは出来るし逃げることも可能だ。
…寧ろ今すぐこの状況から逃れたい。
だが此処で私が大暴れしてしまうと、騎士団の皆に迷惑がかかってしまう。
ただでさえ、目立った行動や問題は起こすなと日頃から強く言われているため、今は大人しく従った方が良さそうだ。
もしかしたら何かの勘違いかも知れないし。
「あの、私はこれからどうなるのでしょうか?明日も朝から仕事があるのですが…」
「貴方を今からレイヴ南東の地下牢獄へと収監しますわ。もう一生出られないと思って下さいませ」
「は!?一生とはどういうことですか!!?」
「口を慎みなさい!!大罪人と話すことなどありませんわ!」
「待ってください!!聖女様、私は罪を犯した記憶がございません!せめて罪状を教えて下さい!!」
「この期に及んで何を言っているのかしら…良いでしょう、教えて差し上げます。貴方は今まで私の大事な婚約者候補の男達を誑かし、侍らせていましたのよ!!私という婚約者がいながら傭兵の女の世話ばかり!!大目に見ていましたがもう我慢なりません!!!私はただ、あの方々に愛されたいだけなのにッ!!!酷いですわ!!」
ポロポロと涙を流す聖女様。
そんな聖女様を見て、取り巻きの人達がアワアワと焦っていた。
要約すると、イジメか?と疑いたくなるくらい普段構い倒してくるあの男共は実は聖女様の婚約者候補で。
聖女様という特別な女性がいながら別の女を優先していて…?
今までは聖女様も大目に見ていたが、遂に堪忍袋の緒が切れ会いに来たと…。
──つまり私は間女ってこと?