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入学式(1)

グレン男爵家の養女でも聖女でもないただの平民のユリアだった10歳の時、私は誘拐された事がある。

私が狙われたのではなく、誘拐組織が拐った子供のうち一人が私だった。拐われていたのは五〜六人だったと思う。

薄暗い部屋で下卑た笑いをあげている男達の姿に、私はただ震えていた。

そんななか、拐われた仲間の一人が近くに寄って来いと手招きしてきた。

「三つ数えるから、壁の方を向いてるんだ。できたら目もつぶれ。いいな」

私達は訳は分からないが、自信有り気なその子の言葉に従って壁に向かう。

その子が小さな声で三つ数えると、後ろで閃光が光った。誘拐犯達の悲鳴に続きガシャガシャと鎧が鳴る。振り向くと騎士が雪崩れ込んで来ていた。


「「「大人しく縛につけ、悪党共!」」」

「畜生!」


誘拐犯の一人がナイフを抜いてこちらに向かってくる。

おそらく私達を人質にするつもりだろう。

怯える私達の前に誰かが立ちはだかる。

さっきの子だ。

その子はナイフにも怯まず男の顔に拳を叩き込む。


「皆んな、ケガは無いか?」


そう言って振り向きにっこり笑う。

端正な面立ちに、私は思わず絵本に出てくる王子様を連想してしまった。

しかしその頬には先程のナイフで抉られた傷がついていた。

私は思わず駆け寄り、その傷に手を添える。

手が僅かに光り、その子の体が薄く輝くと傷は時を巻き戻すように消えていった。

私が初めて聖魔法を使った瞬間だった。


「驚いたな、聖魔法か…」


自分でも驚いている私の肩にその子の手が乗る。


「ありがとうな」


幼なさを残し、はにかんだ様に笑うその子に私のハートは撃ち抜かれた。私の初恋だった。


そして、私達を救ってくれた騎士の羽織るマントの紋章を見て私の記憶がフラッシュバックする。

紅い竜の紋章。

「紅薔薇の令嬢と白百合の聖女」のローゼンブルク家の紋章。

平民ではあるが稀有な魔法である聖魔法を使えるユリアはグレン男爵家の養女となり王立学校に入学。様々な虐めに耐え玉の輿に乗ると言う、いわゆる「乙ゲー」。

ローゼンブルク侯爵家のコンスタンシアは王子ルートのラスボス。選民思想の持ち主で平民を同じ人間と思っていない傲岸不遜な性格…しかし激戦地であるロシマを領地とするローゼンブルク家は軍家として王家の信任も篤く、コンスタンシアに歯向かえる者は王家しかいないと言う最強の女帝。

エンディングは、ユリアは王子の婚約者になりコンスタンシアは国外追放、ローゼンブルク家はお取り潰しになるのだが、三割の確率でユリアは「国を惑わした魔女」として火炙りになる。


記憶が妙に生々しいが、この時はまだ「まさかねえ」と思っていた。

しかし、この時に使った聖魔法が元で由緒ある(後で知った!)グレン男爵家の養女となり王立学校に入学するとなると符牒が合いすぎる。

もしゲームの世界通りなら、バッドエンドは火炙りだ。

幸い、ゲームの通りならコンスタンシアは糞野郎だ。地獄に落としても私の心は痛まない。

ガッツリ罠に嵌めて国外追放の憂き目に合わせてくれる!

情が移らない様に接触は控え、初恋のあの方を攻略してムフフな展開に。そして面倒事は避けて田舎でスローライフでも……


私の人生指針は決まった。


そして王立学校の入学式で、私は運命の再会を果たす。


「よう、ユリア。無事に入学してきたな」

「あ、あなたは……」

「この頬っぺたの傷、消してくれたよな? もしかして覚えてないかい?」

「いえ、覚えております。ですが」

「じゃあいい。今取り込み中だから後でな」

そう言うとコンスタンシアは喧嘩の輪に戻って行った。


……………私の初恋を返せ!!!


前話のサブタイトルを変えました。

少し短いのですが、切りがいいので今回ここまで。

次回はコンスタンシア目線です。

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