学科試験を乗り越えよ(1)
私もシアも学科試験はかなり高得点を取れる。
言っておくけど前世の知識があるからではない。
確かに理数系は日本の方が進んでいるけど、歴史や魔法学は日本での知識は全く役に立たないのは理解頂けると思う。
ではなぜか?
勉強の大切さと学習の方法を知っているからだ。
それが災いした。
数学の授業中、あまりに暇なのでシアと自主的に自習をしていたところリーバス先生に見つかったのだ。
普通に注意すればいいのに後ろから声をかけてきやがるから、驚いたシアが思わず裏拳を一発。
その拍子にリーバス先生のカツラがズレた。
「わあ、ハンサムだ」
「ユリア君、煽てても誤魔化せませんよ!」
「いえ、半分寒いなあと」
教室のあちこちで噴き出していた。
リーバス先生の顔が怒りで赤く染まる。
「せ、先生。ゴメン! 驚いたモンでつい。お怪我ありません?」
更に何人か噴き出す。
不審に思っているとユリアが笑いを抑えてプルプルしながら呟いた。
「シア、その言い方だと『お毛がありません』に聞こえる…」
リーバス先生の怒号が教室に木霊した。
かくして授業は潰れ、私とシアはババラ先生に呼び出しをくらった。
目の前のババラ先生の口元には笑みが、額に青筋が浮かんでいる。すっげえ器用だと思うが目の当たりにすると恐怖しかない。
「コンスタンシア。ユリア。二人にホーク王子とマーティモンド・ヒートの教育係任命を言い渡します。
そして、この二人の平均点をあなた達の前期試験の点数とする事にします」
「ええ!? バーバラ先生、私達に赤点を取れとおっしゃるんですか!!」
「あたし達に恨みでもあるんですか!!」
「私はありませんよ。でもね、当校のカリキュラムが始まってから貴女達が潰した授業が何回あると思います?」
「「え〜〜と」」
「どれだけの先生方にご迷惑をおかけしましたかねえ」
「「それを言われると…」」
「カリキュラムが遅れ、他の学生達にも」
「「返す言葉もございません…」」
「それに、あなた達は他の学生と違い、卒業後の身の振り方に憂いはありません。シアは最悪で王妃に。さもなくば侯爵家を継ぐ。ユリアはその補佐でしょう?
卒業さえすれば成績は影響しませんよね。
だからと言って他の学生達に迷惑かけて良いわけがないのは理解できますね。
ですのでリスクを背負ってもらいます」
「「嫌あああああ! 留年は、嫌あああああ!!」」
「そうならないようにあの二人を鍛えなさい」
「じゃあ、バーバラ先生ならできるって言うんですか!」
「できる訳ないでしょ、そんな事。あの二人なんですよ!」
「じゃあなんで私達が!」
「あなた達は優秀です。試験を受ける意味がないくらい。
しかし、人を教え導くことは色々な気づきがあります。
きっとあなた達の成長に繋がることでしょう。
これはあなた達のためなのです」
「……尤もらしいことを言ってますけど本音は?」
「王子の留年の責任を取る人間が必要でしょう?
私じゃない誰かが」
「「…………」」
前期試験までまだ一ヵ月以上ある。
希望を捨てちゃいけない…
諦めたらそこでゲームオーバーだ…
泣いても何も解決しない…
苦しくったって…
悲しくったって…
……だけど涙が出ちゃう。女の子だモン
「バカ言って現実逃避してないで、やれる事やるよ」
一足先に正気に戻ったシアが発破をかけてきた。
「やれる事って…合宿でもする?」
「良いねえ。来週から初夏祭で十日の連休だし、うちの訓練用の別荘で合宿といこうか」
「訓練用?」
「魔獣の森の奥にあるからちょっとやそっとじゃ逃げ出せないからね。アイツ等の合宿には打って付けだよ」
「魔獣の森? 危なくないの?」
「街道を外れなきゃ襲われる事はないさ」
こうして私達は魔獣の森の奥にあるローゼンブルク家の別荘で合宿をする事になった。
シアは食料の準備なんかのため一足先に別荘へ。
私はバーバラ先生の許可と王家やヒート家への折衝及び逃げようとするホーク王子とマーティの捕獲にあたる。
三日後、初夏祭は遊びたいと駄々を捏ねる二人を縛り上げて私達は魔獣の森に向かった。
少し短いですが、今回ここまで
なる早で次話を投稿しますのでご勘弁を