94.風歌たちと練習
「輝さん、風歌さん。よろしくお願いいたします。」
未来の礼儀正しい声。
プ○キュアの衣装にコスプレをして、完全にこのキャラクターになり切っている。
未来のコスプレしているキャラクターはこういう、和を意識した、礼儀正しい女の子だった。
いつも動画を撮影しているという、レコーディング用の部屋も、双子のアトリエには併設されている。
楽譜と、印刷されているコードを見ながら、対応していく、僕と風歌。
風歌のシンセサイザーはストリングスの音がとても美しい。性格からして、彼女も陰キャで、こういうアニメをよく見ていたのだろう。ほぼほぼ所見演奏に近い感じなのに、昨日今日と一夜漬けで覚えた感じがしない。
風歌と双子のギータとヴォーカルに合わせて、対応していく僕。
「おかしいな、僕も陰キャで、アニメとかは色々見ていたのになあ・・・・。ごめん、何か、ついて行くのがやっとだね。」
と、笑いながら頭を下げる僕。
当然、未来の今コスプレをしている、プ○キュアのアニメも見たことがあるが、さすがに毎日、毎日見ているというわけではない。
「ううん。輝君もナイス。初めてなのに、すごく上手い。」
風歌はニコニコ笑いながら言う。
「そうだよ。聞いてて、このままでも十分、【花園学園グランプリ】に対応できそう。」
一緒に居た葉月も頷く。
それに呼応するかのように、うんうんと頷く。生徒会メンバー。
「そうなのかな。でも、もうちょっと、音源を聞いておかないと、そうしたら、もっと、堂々と弾けそう。」
僕は皆にそう言って、笑い返す。
「うんうん。流石、輝君。」
葉月は頷く。
「そうね。頑張らないとね。」
史奈もにこにこと笑う。
加奈子も頷いた。
このあと数回ほど、通しで練習するが、まだまだ、周りの音を聞きながら、伴奏を改善していくことになりそうだった。
そうして、ここのアトリエでの練習は一区切りして、赤城兄妹に見送られ、アトリエを出発する。
途中で、百貨店のフードコートで昼食を取り、生徒会メンバーと別れて、続いてやってきたのは原田のバレエスタジオにほど近い、岩島先生のピアノ教室。
もう一つの練習。風歌とともに、コンクールの練習に取りかかる。
岩島先生が、笑顔で迎えてくれ、ピアノが二つある練習室へ通される。
「連弾部門の方が課題ね。お互い、ピアノの個人部門の方は、曲が仕上がった状態にあるから。」
僕と風歌はお互い顔を見合わせ、頷く。
早速、個人で練習してきた部分を急ピッチで合わせに行く。
幸いにも、2台・連弾部門の方は、『上位の大会で、地区大会で披露したものとは別の曲を演奏しなければならない。』という、ルールはなく、課題曲の『2台ピアノのためのソナタ』、自由曲の『春の声』の二つで行ける。
「うん。お互い、レベルが高いから、すぐに出来そうだね。」
岩島先生が頷く。
それを見た僕と風歌は笑顔になる。
曲が決まって、楽譜をもらってからだろうか、僕も伯父の家の離屋で一人、練習をしていた。
この高校に入学してからずっとそうだった。
本当に、充実していて、ありがたい。
「とりあえず、全て通してできればOK。後は、2人で本番でどれだけできるかかなぁ。細かい調整は関東大会まででも間に合うから。」
岩島先生が笑う。
「と言いますと。」
僕が岩島先生に尋ねる。
「ああ。例年、2台・連弾部門は、この県では出場者が少なくて、大体の年が、弾き終わって、審査員がその場で賞を渡す仕組み。賞を渡されれば、関東大会に進めるから。茂木先生曰く、今年も今のところそんな感じだって。」
岩島先生が言う。
なるほど。確かにそうだ。
そういえば、僕が中学時代に出場していたコンクールも、この部門の参加者は少なく、個人部門の出場が多い感じだ。
だけど、岩島先生の言葉に、甘えて、ゆっくりできないことは僕も風歌も分っている。
関東大会になれば、当然、出場者も多くなり、優劣がつけられる。それまでに頑張らなければならない。
皆からくれた、最大のチャンス。もう一度、舞台でピアノが弾ける最大のチャンス。逃してたまるか。
そんな気持ちで、残りの時間の練習を過ごした。
「よしよし。良い出来。今日はここまでにしましょう。県のコンクールまででも、レベルはさらに、上がりそうだね。」
岩島先生がニコニコ笑いながら、言った。
「さてと、橋本君はこの後、裕子のところだよね。個人部門の曲は仕上がっているから、井野さんと息を合わせられるようにね。」
岩島先生がさらに続けた。
「はい。ありがとうございます。」
僕は頭を下げ、レッスン室を出て行く。
風歌も一緒に頭を下げる。
「ありがとう。風歌。」
「うん。輝君なら、大丈夫。また、学校で。」
風歌が抱きしめてくる。
僕は頷き、風歌の背中に手を回す。
「うん。本当に、本当に、ありがとう。」
僕はそう言って、お互いの身体が離れ、風歌と別れた。
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3.只今、構成中。近日アップします。




