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93.ヒーローの言葉


 メイド衣装の試着を終えて、満足そうにしている結花。さらには僕にサプライズで何かを依頼することに成功した生徒会メンバーの一行。


 赤城兄妹のアトリエで、今日の予定を全てを終えて満足そうにしている、結花と生徒会メンバーたち。


 だが、僕はここからが本題だった。


 「お、お待たせしました。橋本君。」

 うんうんと緊張して、何度も頷く赤城兄妹の双子の妹、未来。


 そう、ここからが、赤い兄弟のもう一つの顔、【赤鬼メイド】という、コスプレユーチューバーとしてアニソン動画投稿を行っている彼ら。

そう言うわけなので、文化祭の企画の一つ、【花園学園グランプリ】で僕のピアノ出演とコラボすることになった。


 今日はその打ち合わせも兼ねている。


 「あ、あの、良かった、忘れられたかと思っていたよ・・・・。」

 僕は半分冗談交じりを入れながら緊張をほぐしていく。


 「わ、忘れていません。ぼ、僕たちに、きょ、協力してくれて、あ、ありがとうございます。」

 隼人が頭を下げる。


 「あ、あの、い、嫌ならやめても・・・・・。」

 未来が言うが。


 「ううん。別に、こちらこそ、すぐにでも二人に協力したいのに、諸事情で、こんな形になってしまって、申し訳ないです。」

 僕は頭を下げる。


 本来であれば、【赤鬼メイド】のYouTubeに出演する予定だったが、コンクールや、安久尾建設の問題などで、こういう形になってしまったのだ。

 少なくとも、安久尾との問題が解決しない限りは、動画出演は難しい。僕の動画出演がバレれば、安久尾が有名コスプレイヤーである未来を狙いに来るだろう。

 そうなれば、瞬く間にこの双子の兄弟は犠牲になってしまう。僕の中で、それを避けたかった。


 「い、いえ、いえ、そんな。最初は、みんなの前で、ドキドキしましたが。憧れの人と共演できるのが嬉しいです。」

 未来はニコニコと笑いながら、ぺこぺこと頭を下げていた。


 と、挨拶はこんな感じで。


 「待たせて、ごめんね、ハッシー。というわけで、本題に入る前に、緊張をほぐすためにも、練習だと思って、生徒会メンバーにも二人のもう一つの顔を見せなきゃね。」

 結花はウィンクしながら、隼人と未来を見る。


 「えっ、そんな、まだ、心の準備が・・・・・・。」

 「え、そ、そのきゅ、急に・・・・・。」

 急に緊張する赤城兄妹だったが。


 「さあ、さあ、緊張しなくても二人なら、大丈夫・・・・・。」

 結花は更衣室と同じく、アトリエの隣にある衣裳部屋に行くと。


 「あ~、あった、あった。これもメイドカフェっぽくて。気に入ってたんだよね~。これと、これだね~。」

 結花は衣装部屋から目当てのを探し出し、赤城兄妹を連れて、更衣室へ。


 数分後。

 金髪に、メイドカフェの店員のようなコスプレで現れる未来。何だろうか。動物の耳、うさぎの耳のようなものを模倣しているのだろうか、そんなカフェの店員の衣装。

 こんなキャラクター、どこかに居たような・・・・・・。


 「うわぉ!!」

 「す、すごくよく、似合ってる。」

 未来のコスプレに驚いている一同。



 「じゃ、未来ちゃん、ヨロシク♪」

 結花が未来の肩をポンポンと叩く。


 「えっ、ちょっと、本気なの?そうそうたる先輩の前で・・・・・。」

 何だろうか、すでに未来のスイッチが入っている。

 やはり、コスプレをする前よりかは、堂々としているが、何だろうか、礼儀正しさもある。

 今回のコスプレは、そういうキャラクターなのだろうか。


 だけど。

 「まあ、まあ、そう言わずに、はい、差し入れ。」

 結花が、コーヒーを差し出す。

 それを飲み干す未来。


 すると・・・・・・・。


 「イェーイ!!」

 さっきまでのテンションはどこへやら。


 「皆、こんにちはーぁ。」

 未来がものすごくハイテンションで元気に声をかける。


 「こ、こんにちは。」

 僕はそのテンションの差に驚いて、声が裏返る。


 「んー。元気が足りないかなぁ。こんにちはーぁ!!」

 未来の言葉にさらに盛り上がる、僕たち。


 そして。

 「それじゃあ、聞いてね。レッツゴー!!」

 未来の言葉に、隼人は赤鬼のお面をかぶり、【赤鬼メイド】のライブが始まったのだった。


 「す、すごい、本当の【赤鬼メイド】だ。」

 ニコニコしながら見ている風歌。


 「これ、YouTubeで見たことある。」

 未来と同じように興奮している葉月。その言葉に頷く、加奈子と史奈。


 僕も、未来の歌に手拍子を合わせるが。

 「一体、何が起きたの?」

 と、結花に尋ねる僕。


 「ああ、未来ちゃんのコスプレしているキャラクターは、コーヒー、カフェインを入れると酔っぱらって、テンションが上がるキャラクターね。」

 結花がニコニコ笑いながら、説明している。


 「ああ。なるほど。」

 その言葉に大きく頷く僕。

 未来のすごいところは、まさにそれだ。コスプレが好きで、コスプレをしているキャラクターを完璧に演じることができるのだった。


 未来と隼人の赤鬼メイドのアニソン演奏が終わる。


 「未来ちゃん、すごーい。シャ○ちゃんだね。」

 葉月はニコニコしながら拍手する。


 「わ、私も、結構アニメ好きで、皆の動画、よく、見てる。あ、会えてうれしい。」

 風歌は僕に出会ったときのように、興奮気味で、未来と隼人に握手を求める。


 「「あ、ありがとうございます。」」

 流石双子、声が揃う。


 「そして、ここからは、師匠、橋本輝さんに是非。文化祭の、【花園学園グランプリ】に一緒に出ていただくということで、打ち合わせをいただきました。」

 隼人が頭を下げる。


 「うん、うん。すっごくいいと思うよ♪」

 「ええ、私も反対しないわ。むしろ【花園学園グランプリ】出場は大歓迎!!」

 葉月、史奈が言う。

 加奈子も頷いている。


 「で、橋本君はなにがやりたい?アニソンに限定しちゃって、申し訳ないんだけど。」

 未来が聞いてくる。


 「えっと、何でもいいよ。むしろ、ほとんど、僕はクラッシックピアノばっかりだったし、こういう最近のアニメに結構疎かったり。今コスプレしているキャラクターも有名だったりするのかな?」

 僕は素直にみんなに聞いてみる。

 確かに、いろいろアニメやゲームは大好きでよく見たりプレイしたりするが、それでも、有名どころしか見ていないし、あまり趣味に合わないものはみなかったりする。

 まして、最近のアニメは、安久尾のこともあり、尚更だ。


 「うん、うん。結構有名。私でも知ってる。アニメにもなって、結構、面白かった。」

 葉月はニコニコ笑いながら話す。


 「そ、そうだね。アニメは確か、3期くらいやって、出てくる、お、女の子、みんな可愛い。」

 風歌がさらに付け足す。


 「へへへ、2人に説明取られちゃったなぁ。まあ、そんな感じで有名だよ。」

 結花がニコニコ笑う。


 「私は、あんまり知らないなぁ。」

 「そうね。男の人のオタクが受けそうだなという感じ。でも、チラシとかで、かなり見たことあるから。さっきのコスプレは、あぁ、ってなったわね。」

 加奈子と史奈が頷く。確かに、社長令嬢と、僕と同じで、ずっとクラシックバレエに居た加奈子。こういう分野も少し、疎そうだ。


 「そしたら、2人に決めてもらえばいいんじゃない。ハッシー。大丈夫、ハッシーどんな楽譜渡されても凄く上手いもん!!」

 結花の言葉に僕は頷く。


 「そしたら、2人は何がやりたいの?さっきの、ご○○さ?シャ○ちゃん?」

 結花の言葉に赤城兄妹が顔を見合わせる。

 2人は深呼吸して頷きあう。


 「そしたら。師匠に。」

 「うん。是非やって欲しい曲があるの。とってもピアノが綺麗な曲。」


 兄妹の案内で、衣裳部屋に連れて行かれる僕。


 前にも来たことがあるが、ここにはアニメのコスプレ衣装がいっぱいだ。


 未来は衣装を一つ取り出す。

 「これ、なんだけどさ。」

 さすがに、カフェインの酔いが溶けたのだろうか。未来は少し、テンションが下がっている。


 だが、未来のテンションは気にならなかった。


 未来が取り出した、衣装とカツラに僕は吸い込まれた。

 水色をベースにした綺麗な衣装とカツラ。

 海の色なのだろうか、氷の色なのだろうか。本当に良く作りこんである。


 未来がこの衣装を着なくてもわかる。

 この衣装は、僕が小さかった頃からずっと、ずっと、日曜の朝にやっている、あのシリーズだ。


 そして、この衣装を着ている、キャラクターも見たことがある。

 さらに言えば、このシリーズは唯一、僕が全話見たことがある作品だった。

 お話の内容が、全話とてもいいストーリーでかなり気に入っている。


 確かこのキャラクターのキャラソン、つまり、キャラクターソングが、ものすごく印象に残り、歌ランキングで、このシリーズの、オープニングやエンディング曲よりも上位に来ていた。


 だから、この衣装を見たときにピンと来たのだった。


 「これは、僕も知っているよ。プ○キュアだね。確か、このキャラクターの、キャラソン、すごく有名で、聞いたことある。」


 確かに、あの曲は、ギターではなく、ピアノと弦楽器のストリングスでやるからとても美しい。


 「すごく、憧れ。この、ヒーロの言葉が印象に残って。」

 未来の言葉にすぐにみんなが反応する。


 「うんうん。本当にこのシリーズはお話もよくて。」

 「そうそう。」

 満場一致で、頷く。

 やはり、日曜朝のヒーローの言葉はやっぱり、心に響くものがある。


 実際に、このキャラソンが使われている場面をスマホの動画で確認する。

 やっぱり、とても感動的だ。

 初めて、誰かに敷かれたレールではなく、自分の意思で未来を選ぶ。


 僕は頷く。

 「これ、やっぱり、最高。唯一、このシリーズは全話見たことがあってさ。かなり、楽しくて、感動する話がたくさんあって。今見ると、僕も、頑張らないとと思う。」

 何だろうか。僕も勇気が湧いてくる。


 よし。やってみよう。僕はそう深呼吸する。

 このキャラソンは、確かに、ピアノと弦楽器のストリングスが必要だ・・・・・・。


 そう思ったとき、僕の頭の中に、はてなマークがある。

 そして。

 「ピアノやるけど。やっぱり、この曲、弦楽器、欲しいよね・・・・・・。」

 思ったことを口にしてみる。


 「私、それ、やる・・・・・・。」


 手を挙げたのは風歌だった。

 「このアニメ、大好き。恥ずかしいけど、今も、日曜の朝、見てる。きっと、未来ちゃんもそうだよね。」

 未来は風歌の言葉に頷く。


 「ストリングスは、エレクトーンや、シンセサイザーで代用できると思う。ある?かな?私も、この女の子、好き。頑張ろうって、思った。」

 風歌の言葉に頷く、赤城兄妹。


 聞けば、キーボードも、シンセサイザーもあるとのこと、動画を始めたときに、買ったらしい。いつか、出来る人を探して、保管しておいたのだそうだ。


 「あ、ありがとうございます。風歌先輩。」

 にこにこと笑う未来。


 「ありがとう風歌。ごめん、負担掛けさせちゃって。」

 僕からも頭を下げる。


 「いいの、ひ、輝君がこうして、頑張っているから。私も・・・・・・。」

 風歌は頷き、ニコニコ笑う。


 その言葉に、深く、深く、お礼を言って、頭を下げる僕。

 確かに、安久尾建設との一件はいわゆる、『()()()』だったのかもしれない。


 でも、こうして、ここに居ることは本当に、何か、元気をもらっている。


 「うん。頑張ろう!!」

 僕はそう言って、練習に取り掛かかろうとするのだった。


最後まで、ご覧いただきありがとうございます。

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●現在執筆中の別作品もよろしければご覧ください。

 1.忍者翔太朗物語~優秀な双子の兄だけを溺愛する両親のもとで奴隷のような生活をして育った忍者のお話~URLはこちら↓

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 2.元女子魔道学院に異世界転生した男子の僕が入学するとどうなるのか?⇒なかなか更新できず、すみません。

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3.只今、構成中。近日アップします。

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