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73.別荘の夜イベント


 食事とナイトプールを楽しんだ僕たち。

 水着から普通の服に着替えて、居間に集合する。


 「それじゃあ、人数が多いので・・・・・・。まだまだイベントしますかね。」

 原田はそう言いながら、僕たちを外に連れ出す。

 すでに、お酒の缶を何本も飲んでいるので、少しぼーっとしながらのイベント開始の第一声である。


 「折角だから、楽しまないとね~♪」

 原田はそう言いながらニコニコ笑う。


 「ここまで楽しんでいる先生は久しぶり。」

 加奈子は僕に耳打ちをする。

 おそらく、ここに来ている人数が例年より多いからなのだろう。


 僕たちは原田のいう通り、別荘の外にでた。

 「それじゃ、毎年恒例、肝試し大会、やりますっ。」

 原田は酔った勢いのまま司会進行を進める。


 「いつもは、私とヨッシー、加奈子ちゃんと雅ちゃんペアでやっているのだけど。今年は人数が多いし、かつ、いつものように加奈子ちゃん雅ちゃんでペアくむと・・・・・。」

 加奈子の表情が少し不満げになる。

 そして、他のメンバーも不満気になる、先ほどのビーチバレーの時と同様の表情。

 それを確認する原田。


 「いろいろと、問題が起こりそうなので・・・・・・・。先ほどのバレーボールと同様にここでもクジでペアを決めるぞ!!」

 原田は再び、クジの入ったビニール袋を取り出した。


 「今度は少年、お前は最後に引いてもらって、良いか?」

 「はい、大丈夫です。」

 原田の言葉に反応する僕。


 「ヨシッ、それじゃあ、じゃんけんなりして、残るメンバーのクジの順番を決めてくれ!!」

 原田はそう言うと、再びジャンケンが盛り上がる。


 「「「「最初はグー、ジャンケンポン」」」」

 何だろうか、これから、肝試し大会というのに、あまりにも、その声でお化けが逃げるような声だった。


 クジを順番に引いていき、最後に自分の番が回ってきた。

 当然、残り1枚。

 その1枚を僕は引く。


 「さあ、少年、数字を言ってくれ!!」

 原田の指示で、僕は紙にかかれている数字を言う。

 

 「2番。」

 僕は数字を言った。


 「ヨッシャ―!!」

 高らかに叫んだのは結花だった。


 「ふふふ、ここは結花ちゃんに譲ってあげましょう。行きの車と言い、バレーボールのペアと言い。」

 史奈が頷く。

 他のメンバーも同じように頷いた。


 「やったわね。結花、楽しんでいってらっしゃい、お天道様は見ていたのよ。」

 心音がポンポンと叩き、嬉しそうにしている結花を落ち着かせる。


 心音と結花は同じ中学校の先輩後輩の間柄。


 「いい?ここで、嬉しさのあまり空回りすると、橋本君に嫌な印象を与えちゃうかもだからね。落ち着いてね。」

 心音はさらに結花の耳元で囁く。

 その言葉に深呼吸する結花。


 「それじゃあ、少年と結花のペアからスタートだな。」

 原田はスマホを取り出して。僕たちに地図を見せる。


 「いいか、この道をまっすぐ行くとトンネルがある。まずは、このトンネルを抜ける。トンネルを抜けたすぐの道を右に、海沿いの方に曲がる。後はランニングとサイクリングのコースになっているから、一本道だ。岬をぐるっと回っていくと再びここにたどり着くことができるが、その手前の砂浜がゴールだ。

 この砂浜は、昼間、皆で海水浴をした場所だ。場所は分ると思う。

 そして、右に曲がるタイミングも、サイクリング、ランニングコース入り口という看板があるから、わかると思うので、参考にしてくれ。」


 原田が、肝試しコースを説明する。

 僕も一緒にスマホを取り出し、地図アプリで、コースを確認する。


 僕は原田に向かって頷く。

 「ヨシッ。それじゃ、行ってこい。」

 そう言って、僕と結花を送り出す原田。


 「ふふふ、結花、しっかりね。橋本君の言うことをよく聞いて。」

 心音がそう言って、送り出す。

 僕と結花は一歩一歩、歩き始めた。


 夜の暗闇に視界が遮られ、皆の姿が見えなくなる。

 「改めて、よろしく、結花。」

 僕は結花に言うが。


 「う、うん、よ、よろしく、は、ハッシー。」

 結花が少し震える。


 「お、思ったより暗いとこじゃない?ここ。」

 結花が僕に言う。声が少し震える。


 「そう・・・・。かな?ここまでは、伯父さんの家の周りと似ているけど。」

 僕が今居候している伯父の家、伯父の家も大農家で、周りは畑と山ばかりの場所で、こういう景色が広がる、すなわち夜も周辺の明かりは、伯父の家くらいになる。


 以前、原田が僕を伯父の家まで送り届けたとき、とても暗かったような話をしていたよな。


 「そ、そうだよね。あの家の周りも、そうだよねー。」

 結花は僕が伯父の家の周りと一緒という言葉を発した途端、手をぎゅっと握る。


 「あ、あたしも、その家に行ったことあるし、ここなんて、へっちゃら、へっちゃら。」

 明らかに強がる結花。

 ひょっとして、お化けが怖い・・・・・・。

 という質問はしないようにした。


 どういうリアクションをするか想像できたし、おそらく結花のプライドがそれを許さない。

 クラスの一軍女子、そして、キラキラのヤンキー系女子として。


 ここは手を繋いで、黙って歩こう。

 「は、ハッシーの手、温かくてよかった。」

 結花は安心する。


 僕は頷く。


 「それは、何より。さあ、進もうか。」

 正直に言うと、僕も少し緊張して、お化けが怖い。

 小さいときは、祖父母も生きていたため、よく伯父の家に遊びに行った。その時、よく、伯父がノリノリで、怖い話をした。

 しかも、伯父の家周辺の、近くの祠だったり、畑だったり、裏山だったりを題材にした。

 そのせいで、伯父の家に泊りに行ったとき、夜はトイレに行けなかったことを覚えている。


 今は、慣れてしまったし、だんだんと伯父の家に住んでいるうちに、暗いのも慣れていた。


 だがしかし、ここは明らかに知らない土地。何だろうか。当時の思い出がよみがえる。

 懐中電灯を照らしつつ、スマホを見つつ、地図があっているか確認する。


 僕と結花のためにも、速く終わらせなければならない。迅速かつ正確に。


 だが、僕と結花は同時に立ちすくんでしまった。

 目の前に巨大なトンネルが現れる。

 最初にして、最大の難関。


 「は、ハッシー、と、トンネルだね。」

 「あっ、うん。トンネルだ。」


 おそらくこれが原田から指示されたトンネルだろう。

 だが、このトンネルは、明らかに薄暗い。

 幸いにも明かりがあるが・・・・・・・・。

 かなりの遠い感覚で明かりが設置されており、暗い所がはっきり見える。


 「いい、そーっと、そーっと、入るわよ。」

 「うん、そーっと、そーっとね。」


 明らかに歩く姿がゆっくりになり、僕と結花はトンネルに入った。

 最初は明かりがついているから安心するが。


 一気に明かりが遠のき、暗い場所に差し掛かる。


 「ま、まっくら、何も見えない、ハッシー、居るよね?」

 「う、うん。い、いる。」


 僕は思わず結花の手を掴む。

 ものすごい勢いでその手を握り返す結花。


 ピタ、ピタ、と音がする。

 水の水滴だろう。


 だが、その水の水滴が不幸にも結花の額に落ちる。


 「ぎゃぁぁぁぁー!!」

 結花の叫び声。

 さらに、その叫び声が、トンネルの奥にこだまして、声が跳ね返ってくる。

 僕たちは思わず、お互いを抱きしめた。


 「は、はあ、はあ、はあ、はあ。」

 「は、はあ、はあ。」


 お互い、呼吸を整える。


 「はあ、びっくりした、水滴か。」

 「それは、こっちのセリフだよ、結花。そうだね、水滴が落ちたんだね。」


 僕たちはお互い顔を見つめる。


 「は、ハハハッ、ご、ごめんねハッシー。」

 「う、うん、僕の方こそ。ごめん。」


 「本当は・・・・・。」

 「ホントは・・・・・・。」



 「「とても怖くて、こういうの苦手なんだ。」」


 お互いに、打ち明ける僕と結花。


 なーんだ、そうなんだ。

 そこからはお互い笑い合いながら、トンネルを抜けて、指示された道を右に曲がり、サイクリングロードに入った。


 僕は、結花に小さかった頃の記憶を話した。それで、この場所で、当時のことも思い出したことを。


 「ああ。あのおじさん、ノリがいいもんね。そういう話、好きそうだし、子供にしてそう。」

 そう言って、無邪気に笑う結花がそこには居た。


 懐中電灯の先に、明らかに、先ほどまでみんなで遊んでいた、海の砂浜が見えた。

 そのころには、僕も結花も笑っていた。


 「ゴール!!」

 「やった、ゴールだ!!」

 僕たちはお互いに抱き合った。


 「夜の潮風が気持ちい。」

 結花が素直な感想を言う。

 「そうだね、そして、やっぱり。」

 僕は結花に上の方を指さす。


 空を見上げる結花。

 都会では見られない、満点の星がそこにはあった。


 「きれー。」

 「うん。」


 僕と結花は、夜の潮風に当たりながら、そして、ゴールした喜びを満天の星空に祝福されながら、他のペアの到着を待つことにした。





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●現在執筆中の別作品もよろしければご覧ください。

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 2.元女子魔道学院に異世界転生した男子の僕が入学するとどうなるのか?※このシリーズの異世界転生編です。⇒なかなか更新できず、すみません。

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3.只今、構成中。近日アップします。

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