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60.合宿の後半


 ここからの合宿は実にスムーズだった。

 僕は、何クラスかのピアノを担当し、原田からの評価も比較的良かった。

 「ヨシッ。みんないいぞ。少年も、午前中の練習よりかはスムーズに動いてたな。」

 原田の言葉に反応する。

 にっこりと笑う僕。


 次の練習は、中学生Aクラスのステージ練習。藤代さんが在籍しているクラスである。

 曲目は・・・・・。ハイドンの『ピアノソナタ第50番』か。


 一瞬思った。この曲を僕のピアノコンクールの自由曲にしてもいいなと。

 だが、それも一瞬で思いとどまった。


 「あれ、このクラスの伴奏は必要ないのですか?僕、本番でも、ピアノ弾きますけど、いいのですか?」

 僕はそう原田に聞いたが。


 「ああ。これだけは録音のものを使おうと思ってな。あれだ、少年。お前に負担掛けたくないし。そうだな。これだけは唯一、外国の、プロの人に演奏してもらった、貴重な音源があるんだよ。そっちを使わせてくれるか。」

 原田は、別に何でもないと思って、この曲は、伴奏に入らなくて大丈夫と言ってくれた。


 「ああ。悪いね。橋本君。この曲だけは、裕子ちゃんの意見に従ってくれると助かる。」

 吉岡は僕の肩を押さえて、遠くを見るように言った。


 「は、はい。わかりました。」

 何だろう、不思議な感じがする。

 それ以上、聞いてはいけない何かが先行してしまった。


 確かに、渡された、曲目の一覧では、『橋本君は夏合宿の練習のみでOK、それ以降の練習、本番時は別の音源を使用。』と書いてある。

 他のクラスの発表などは、全て、ピアノ曲は僕に伴奏を依頼されているのに・・・・・。


 「ふふふ。輝君。すっかり、やる気があっていいわね。でも、ここは先生たちのお言葉に甘えましょ。輝君の都合もあるし。あまり負担をかけたくないのよ。ほら、中学生のクラスの練習は結構遅いじゃない。」


 隣に座り、符めくりを手伝ってくれている史奈。


 「ああ。確かにそうですね。」

 僕はそう言って、練習を開始した。


 曲を止めつつ、動きを確認しつつという段階なので、僕は原田の指示のもと、ハイドンの『ピアノソナタ』を弾いて、進めた。

 僕も、普通のテンポより、大分遅めに弾いていた。


 夕食直前の練習は、皆で合同ステージ、くるみ割り人形の練習に入る。


 「悪いね。橋本君。ここだけ、加奈子ちゃんを借りてくね。」

 吉岡は僕にそう内緒話をして、ポジションにつく。

 吉岡の隣に、加奈子。


 なるほど。やっぱり。

 藤代さんが、『金平糖の精』の役ならば、加奈子は、主役の『クララ』そして、吉岡は、『王子様』の役だ。


 クララと、王子様のカップル。吉岡の言葉の意味は分かったが、別にそういう役なので、ヤキモチとか、そういう感情は一切起きなかった。


 むしろ、主役で踊っている加奈子にますます魅了された。



 そうして、夕食を済ませ、2日目の夜を迎える。

 大浴場で、お風呂を済ませ、自分の部屋へと向かう。上の生徒たちのフロアからはざわざわとしている声。

 2日目の勉強会もとても賑やかだな。


 そうして、僕の部屋に行き、学校の課題の取り組む。

 今日も、周りが静かなせいか、時間が過ぎていくのを忘れていたのだろう。


 「トントントン。」

 と扉をノックする音が聞こえる。


 昨日も同じようなことがあった。

 まあ、いいだろう。原田からも、よろしくと言われているし・・・・・。


 僕は部屋の戸を開けるが。


 そこに居たのは史奈だった。


 「ふふふ。遊びに来ちゃった。」

 てへぺろ~。という顔。

 やはり史奈らしい。


 「ははは。そうですよね。どうぞ。」

 そうして、僕は部屋に史奈を通す。


 「へえ。学校の課題か。偉いわね。」

 史奈は笑いながら言っている。


 課題に取り組む、僕を横からじっくりと見つめる史奈。


 「ところで、輝君。昨日の夜はどうしてたの?」

 史奈の質問は、嘘をつく余地がないほど、的を射ており、そして、ニヤニヤしている顔の裏に、ものすごい表情の史奈がいることが分かった。


 「史奈の、思っている通りです。」

 僕は小さく、つぶやく。


 「そう、じゃ、今夜は私ともしちゃいましょう。」

 史奈はそう言って、僕の頬にキスをする。


 胸をなでおろし、ホッとしながら、椅子から立ち上がる僕。

 僕は顔の表情を緩め、史奈と抱きしめる。


 やはり、普通の女性の平均以上の史奈の胸が僕の身体に当たってくる。

 そのせいだろうか、昨日より少しドキドキする。


 だが、そのドキドキは一瞬で、かき消される。


 「トントントン」

 再び、扉をノックする音が聞こえる。

 僕は扉を開けに行く。

 扉を開けるとやはり、加奈子が立っていた。


 「あーっ、会長ずるい!!」

 「あら、いいじゃない。減るもんじゃないんだし。」


 「輝。今日も・・・・・。私と、一緒に・・・・・・。」

 加奈子はまだまだ、恥ずかしそうだった。

 「もー、先に来たのは私よ。」

 史奈はそう言って、僕の方に我先にと歩み寄ってくる。


 「まあ、まあ。夜遅いし、落ち着いて。僕は、ここから動きませんし、皆さんも好きなだけ居ていいですから。」

 僕は2人をなだめる。


 その後は、やはり・・・・・・。

 僕は2人の生まれたままの姿を見て、原田からもらったという袋も開封していた。



 そこからは、あっという間に合宿は過ぎていった。

 朝は、ジョギングをして、マユにすれ違ったら手を振り、サポートでピアノを弾き、夜は史奈と加奈子が僕の部屋にやってくる。

 それを合宿が終わるまで、繰り返していた。

 

 


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●現在執筆中の別作品もよろしければご覧ください。

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