表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

56/120

56.合宿の夜


 ホテルの僕の部屋。

 しばらくゆっくりした後、持ってきたテキストを開いて、学校の課題を実施する。

 この合宿、このバレエスタジオの生徒も、部屋ごとにそんなことをやっているのだそうだ。


 「結構大変でさあ。私は部屋中引っ張りだこで、自分の課題ができないのよね~。」

 加奈子はそんなことを言いながらも笑っている。


 バレエ団の生徒の中でもトップ、そして、テストの成績も学年1位の加奈子。一切手を抜かない。

 つまり、わからないところを教えるのも、加奈子の役目だった。


 僕のいる部屋は、加奈子の部屋と、フロアが違うため、そんな加奈子の様子を見ることはできないが。

 「加奈子ちゃん。」

 「加奈子先輩!!」

 と、いろいろな生徒から声がかけられるところが容易に想像つく。



 この部屋はかなり静かなせいか、大方、課題を終わらすことができた。しかも、こんな状況が、あと数日続く。

少なくとも夏休みの後半で、手が付けられない状況は避けられそうだ。

僕も、うん。夏休みは課題をやらないときがかなりある。



 課題を終わらせ、明日の楽譜を整理する。

 明日もかなりみっちりだ。


 『トントントン』

 扉をノックする音が聞こえる。

 それに気づく僕。

 気のせいかと思うが一応、扉の前に立つ。


 さすがに、山奥のホテル。お化けが出てくると怖い自分がいる。


 だが。

 『トントントン』

 もう一回ノックする、音が聞こえる。

 僕は気のせいが、確信に変わる。


 恐る恐る扉に手をかけ、ドアノブを回す。


 扉を開けた瞬間、僕の視界は一瞬、見えなくなる。


 「輝!!よかった。」

 加奈子のほっとした声。そして、僕の背中に腕を回す、加奈子。


 「か、加奈子、なんでここに?」

 僕は驚きの声をあげるが、加奈子は彼女の口元に人差し指を当てる。


 「しーっ。バレちゃうから。早く扉を閉めて。」

 僕は慌てて部屋の扉を閉める。


 「輝!!」

 加奈子は唇を僕の唇に当てる。そして、お互いの舌も合わせる。


 お互いの顔が離れる。

 キョトンとする僕。


 「お、起きててくれてよかった。何してたの?」


 「ああ。学校の課題と明日の楽譜の読み込み。1人で集中できたので、かなり終わった。」

 僕は加奈子に向かってそういうと。


 「そ、そうなんだ。私は、予想通り、皆から質問攻めにあって、皆の学校の宿題教えてたよ。そんで、消灯時間はとっくに過ぎているんだけど・・・・・・。輝、起きてるかな・・・・・。と思って。」


 加奈子の言葉に、僕は慌ててスマホを見る。

 スマホの時計はもう既に日付が変わっていた。


 とても集中していたのだった。


 「と、言うことは、加奈子は・・・・・・。」

 「ぬ、抜け出してきちゃった。そ、その・・・・・。これ・・・・。原田先生から餞別と謝礼。」

 とたんに緊張する加奈子。おそらく真面目さがまだ抜けないのだろう。

 消灯時間後に部屋を抜け出して、こちらに来るとは。


 原田からの選別は、案の定、例の、小さな袋だった。


 「あの、私が、自分で、抜け出してきちゃったんじゃなくて、先生から、その・・・・。ここは修学旅行とかではないんだから、消灯時間後だって、ある意味、自由だよって。自分が高校の頃は何度も抜け出したって。これ、渡されて・・・・・・。」


 なるほど。そういうことか・・・・・。

 確かに、真面目な加奈子には、そうした原田の後押しが必要なのかもしれない。


 そして、僕のバッグの中にも、まさかの事態を想定して、『加奈子♡』と書かれた、例の、小さな袋の箱詰めが入っている。持ってきてよかったと思った。


 とりあえず、加奈子をベッドに座らせる。

 やはり、加奈子は消灯時間を無視して、ここに来たことが少し億劫のようで、彼女の心臓の音が僕でも聞こえる。


 だが、ベッドに座れば座ったとしても、加奈子の心臓の音はより激しくなるし、一向に収まる気配すらない。

 それに引っ張られて、僕の心臓と、呼吸の音がだんだんと早くなる。


 「輝。」

 小さな声で、加奈子が言う。

 「一緒に、いい?」

 僕は頷いて、お互い唇を重ねる。


 お互い来ていた服を脱がせて、そのままベッドに横になる。


 「どうかな?私って。もっと、よく見て欲しい・・・・・。」

 加奈子が僕に問いかける。


 薄暗い中でもわかる、バレリーナの綺麗なライン。

 バレエの衣装を着るためか、下着が重複しないように、面積の少し小さなセクシーな下着。

 それを見ただけで、正直ドキドキする。


 「どう?輝?見てくれてる?」

 「うん。」

 僕は深く頷く。


 「綺麗なシルエット。すごく素敵。」

 ありのままを言う、僕。


 「うん。そう。」

 加奈子は少し暗い声。


 「どうしたの?」

 加奈子の自信の無い声に僕は、反応する。


 「私、綺麗かな?かわいいかな?って。会長も、葉月も、結花も、そして、早織も。みんな。みんな。大きくて、ずるい。」

 加奈子は両手で、自分の胸を押さえる。

 確かに、あの4人は、女子高校生はおろか、普通の女性の平均以上はある。


 「早織なんか特にずるい。眼鏡を取ればかわいいし、校内合唱コンクールの夜だって。服を脱げば・・・・・。結花も勿論・・・・。あの二人は後輩なのに・・・・。」

 あの夜、確かに、早織の服を脱げば、飛び切り大きな胸元が現れた。

 そして、結花も、葉月たちに負けない大きさだ。そして、自分よりも後輩という事実が加奈子には突き刺さる。


 なんで、自分だけ・・・・・・。そんな現実が重くのしかかっているのだろう。


 「大丈夫。大丈夫だよ。加奈子には、加奈子しかない、ものがあるから、シルエットは一番凄くきれい。」

 「シルエットって?」

 加奈子はもう一度聞き返す。


 「体のライン。スタイルがいいということだよ。」

 僕は、恥ずかしながらもそれを伝える。


 「ありがとう。良かった。」

 少しホッとしたのだろうか。加奈子は安心する。


 「ねえ。輝。」

 加奈子の声。


 「今日は、私だけを見てくれる?」

 加奈子の言葉にドキッとするが。


 「勿論。」

 僕は、そういって、深く頷いて、思いっきり、加奈子を抱きしめる。


 「ひ、輝。ご、ごめん。」

 加奈子は急に謝る。


 「ど、どうしたのです?」

 「シャンプー、合宿で、いつもと違うし、自分の持ってきたの、少ないから。その、練習の汗とか匂いとか・・・・。」

 加奈子の言葉にドキッとする。


 そういえば、最初に農家の離で抱きしめたときと同じ感じがする。

 あの時は、バレエコンクールの後だった。必死になって、ずっと、傍に居てくれたからだろうか。そう言ったところに気を遣ってなかった。


 「大丈夫。言うまで気付かなかった。」

 僕は内心ドキドキしているが。あまり気を遣わせたくないと思って、加奈子にそう言った。


 「そう、よかった。」

 再び、唇を重ねる僕と加奈子。


 「今日は、私が、全部、スッキリさせてあげる。パンパンだよね。」

 加奈子の緊張した声、そして、緊張して、震えた手で、その、パンパンになっていると思う箇所を指さす。


 深く、深く、僕は頷いた。

 勿論、ここまで来て、断るなんて、僕は出来なかった。




最後まで、ご覧いただきありがとうございます。

少しでも続きが気になる方はブックマーク登録と高評価、いいねをお願いいたします。


評価は一番下の【☆☆☆☆☆】マークからできます!!


本当に、皆さんのリアクションが励みになっています。ありがとうございます。



●現在執筆中の別作品もよろしければご覧ください。

 1.忍者翔太朗物語~優秀な双子の兄だけを溺愛する両親のもとで奴隷のような生活をして育った忍者のお話~URLはこちら↓

 https://ncode.syosetu.com/n1995hi/

 2.元女子魔道学院に異世界転生した男子の僕が入学するとどうなるのか?※このシリーズの異世界転生編です。

 https://ncode.syosetu.com/n7938ht/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ