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54.いざ、合宿


 「おーっ。少年。元気だったか?」

 バレエ教室には原田の声がする。

 「よろしく頼むよ。今日から冬のクリスマスコンサートに向けての合宿だ!!」

 原田はそう言いながら、僕の肩を叩く。


 この合宿の少し前、夏休みで、合唱コンクールの合間を縫って、原田と、そして、ピアノを見てくれることになっている、音楽の藤田先生の姉でもある、岩島晶子先生、と簡単な打ち合わせを行った。


 今までも岩島先生のレッスン、および、藤田先生にも相談していたが。

 「橋本君も、ピアノコンクールに向けて動かないとね。」

 そんな話が寄せられ。

 バレエスタジオのクリスマスコンサートと同時期に開催される、ピアノコンクールに向けて動き出すのだった。


 「まあ、心の問題もあるし、時期的に忙しいこともあるし、難曲を仕上げるよりも、すでに弾ける曲から選びましょうか。橋本君もあちこちで伴奏を引き受けて忙しいわけだし。」

 岩島先生はそうウィンクしながら、僕の方を見る。

 僕もそれに頷く。


 そういう意味では、すんなり曲が決まった。

 課題曲はショパンのワルツもしくはマズルカとつく曲から2曲選ぶ。ただし地区大会はそのうち1曲を弾くことになる。

 その他は、ショパン、バッハ、ハイドンの中から、自由曲を2~3曲か選択する。加奈子のバレエコンクールと同様で、自由曲は地区大会と全国大会で異なっていることが条件だ。


 つまり、上位の大会に行けば行くほど扱う曲は増えていく仕組み。


 「加奈子ちゃんのバレエの曲から選べば?」

 一緒にいた原田の提案に頷く。


 「ちなみにクリスマスコンサートは、コンクール報告のステージを兼ねて、『レ・シルフィード』を扱う予定だ。行ってくれれば、少年のテンポに合わせて振付するぞ。」

 原田は続ける。


 「そうね、そしたら、無理して自由曲で、バッハやハイドンを選ぶより、ショパン一択で良いかもね。」 

 岩島先生もそれに同情する。


 そうして課題曲として、選んだのは、『マズルカニ長調、Op33-2』、『華麗なる大円舞曲、Op18』であった。


 「加奈子ちゃんの自由曲は、君の自由曲にもしよう。あとは、この前、子供たちの前で弾いてくれた、あれ、カッコよかったな。」

 原田はそう言って『英雄ポロネーズ』のメロディーを歌う。

 自由曲は、加奈子の自由曲でもあった、『Op42、大円舞曲』そして、『英雄ポロネーズ』が選ばれた。


 「あと、1曲選べば、万全な状態で行けるけど。まあ、そこは様子を見ながら決めればいいか。エチュード系が選ばれてないから、そこから優先的に選ぶのを決めておいてね。」

 岩島先生の言葉に頷く僕。

 勿論、ショパンの、エチュードと、名のつく曲もいくつかレパートリーがある。


 「まあ、先ずは場数を踏んでみましょう。合宿も、『レ・シルフィード』をやるみたいだし、そこで数をこなしてね。」

 岩島先生の言葉に頷き。

 方向性が決まる。



 そうして、今日。バレエスタジオの合宿初日を迎えた。


 「直前で悪いな。少年。これが練習用の楽譜だ。」

 原田からそう言われて、事前に楽譜を受け取る。

 「まずは、うちのバレエスタジオに協力してくれてありがとう。バイトも兼ねているから、謝礼は勿論支払おう。」

 原田はそう言いながら、冬のクリスマスコンサートのステージ構成を放してくれる。


 まず最初のステージは、今年のコンクール報告会。課題曲の『レ・シルフィード』を全員で踊る。

 そして、県の入賞者、加奈子によるステージ発表。入賞できなかったが予選での評価が良かった子たち、数人の発表。


 第二ステージは学年などで振り分けた、各クラス毎の発表。

 そして、メインの第三ステージ。チャイコフスキーの『くるみ割り人形』だ。

 ここでは、コンクールのもう一人の入賞者藤代さんのコンクール報告も兼ねるという。

 そう。藤代さんの自由曲は、この『くるみ割り人形』の中の、『金平糖の踊』だった。

 故に、この演目の主役級の一人、金平糖の精の役も自動的に、藤代さんになる。


 当日は、『金平糖の踊』に入る前に、藤代さんが入賞したというアナウンスも入るらしい。


 勿論、第一、第二ステージもあり、時間の関係上、半分くらいカットしての『くるみ割り人形』だが、ステージ構成を見るに、楽しそうな演目だった。


 「少年は、練習はピアノを弾いてもらうが、本番のピアノは、『レ・シルフィード』と、加奈子ちゃんの発表と、いくつかのクラスの演奏をお願いします。『くるみ割り人形』は当然、茂木先生に頼んで、オーケストラの音源を発注する予定だ。」


 そう原田は楽しく説明をする。にこにこと笑っている原田。とても珍しい。

 見ているこっちまで、楽しくなってしまう。


 

 そんなこんなで、改めて、今日。県の合唱コンクールの直後ではあるが、このバレエスタジオの前に来ていた。

 なのだけど、そこには珍しい顔がいた。


 「ふふふ。輝君と加奈子ちゃんを一緒にサポートするわね。マネージャーは得意だから。」

 そう言って笑って立っている史奈の姿。


 「な、なんで史奈がここに・・・・・。」

 僕は少し驚いている。


 「ああ。マネージャー出来てもらうことになった。なぜなら。」

 原田は、バレエスタジオの面々が乗る予定のバスを指さす。


 『瀬戸運送バス』と書かれている。

 『瀬戸運送』・・・・・・。


 「ふふふ。元生徒会長の瀬戸史奈です。そして、『瀬戸運送』はお父様が社長をしている、会社なの。」

 史奈の言葉に目が点になる。

 な、なんと、史奈は社長令嬢だったのだ。


 「ああ。バスの送迎ということで、社長令嬢自ら一緒に来てもらうことになったんだ。ちなみに、『瀬戸運送』はここら辺では有名な運送会社だよ。トラックとか、バスとかな。」

 

 僕は改めて、驚く。

 「す、すごい。そんなすごい方だったのですね。その、史奈・・・・・。様。」

 「ふふふ。そんなに驚かないで良いわよ。それに、これからもいつも通りに接してくれると嬉しいわ。」

 史奈はテヘペロ。という顔をしながら、笑っていた。

 いやいや、さすがに、恐縮してしまう。むしろ、僕といや、史奈以外の美女とも関係があることに対して、大丈夫なのだろうかと思ってしまうが。


 「ふふふ。大丈夫よ。心配しないで。加奈子ちゃんだけじゃ心配だから、私も来たのよ。」

 耳元で史奈は囁いた。


 「も~。会長。そんなこと言っていないで、速くバスに乗りますよ。輝も、急いで、出発時間はもう過ぎているだからね。」

 加奈子は少し心のどこかに何かをためているような表情をしていた。

 それに気づいた原田は、加奈子の肩を叩き、親指を立てる。


 その原田の表情を見て、安心する加奈子。


 僕たちは、史奈の父が社長を務める、『瀬戸運送』のバスに乗り込んだ。

 バスはとても大型で、かなり余裕がある。


 「ちょうど、大人数の団体さんがキャンセルになったから、大サービスで、バス余計に配車しちゃったの。」

 史奈はさらに、テヘペロ。という表情をし。


 「さあ、さあ、輝君は昨日はとても頑張ってからの今日だから、バスの中でゆっくり休んで休んで。この時くらいは隣は加奈子ちゃんに譲ってあげるわね。」

 史奈はウィンクして、僕をバスの一番前の窓際の席に案内する。

 その通路側の隣の席に加奈子。通路を挟んで、通路側に史奈、その隣の窓際に原田という一番前の座席だった。


 「それじゃ、よろしくお願いします。」

 原田の一声で、バスは予定の時間を少し過ぎてはしまったが、合宿に向けて出発したのだった。


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