50.コーラス部
「あっ、来てくれた!!」
心音の元気溢れる声がする。
僕は放課後、音楽室の扉を叩き、心音たち率いるコーラス部の見学に行ったのだった。
一応、伴奏を頼まれるが、正式な入部ではない。ここでは助っ人。
そう思いつつ、僕はみんなに自己紹介をした。
「1年B組の橋本輝です。よろしくお願いします。」
「わぁ。本当に来てくれた。」
「待ってたよ。」
「合唱コンクール見てたよ、ピアノ伴奏、すごかったね。」
そんな声が、一気に飛び交う。
「ゴホン、とりあえず、橋本君には、コンクール迄は助っ人という扱いにします。最優秀伴奏者賞という実績で、自由曲の伴奏をしてくれます。そして、ここで橋本君さえよければ、指揮者か伴奏者として、コーラス部に加わってもらいます。」
一喜一憂している、コーラス部員たちに心音たちがまとめる。
心音の言葉に緊張感が一気に伝わる部員たち。
「それじゃ、今日は橋本君にも慣れてもらうために、コンクールの練習をしましょう!!校内の合唱コンクールではなく、一気にレベルが上がるので、皆緊張感を持ってね。風歌は橋本君のサポートをお願い。」
「「「はい。」」」
皆、心音の言葉に返事をする。
僕は拍手に送られてピアノに向かう。
「・・・・・はい。・・・・。これ、自由曲の楽譜。・・・・。自由曲はこの曲集の2曲目。・・・・・。課題曲の伴奏は、私がやる。新しく作曲して、出来た曲だから、橋本君、知らないと思う。」
ピアノの傍で風歌が待っていてくれ、そういって楽譜を差し出してくれた。
楽譜といっても、曲集。つまり、『混声合唱組曲』の楽譜だ。
その混声合唱組曲のタイトルを見たとき、ああ、あれかと思った。有名な曲で、花の名前のタイトルの詩を曲にしたものだ。
皆が発声練習をしているときに、僕は少しばかり、ピアノの練習をする。
今日は、風歌がサポートしてくれる。
自由曲を頭から弾いてみる。
「やっぱり・・・・。すごく・・・・。上手い。初見でも、こんなに、弾けるなんて。」
風歌は笑っている。
「いや。曲は前から知っているよ。聞いたこともあるからね。僕も、実は中学時代は合唱部だった。」
僕は風歌に言った。
風歌は笑顔になる。
「・・・・。えっ。・・・・そうなんだ。まあ・・・・。そうだよね。・・・・・。部活、やってないのかと思った。」
風歌は顔を真っ赤にしながら、微笑む。
「ははは。まあ、中学校なら、部活はやるかな~。高校も部活で悩んだし。生徒会に誘われるまで。」
僕は笑いながら、話す。
「ああ、そうなんだね。」
そういいながら風歌は笑う。
部員全員の発声練習が終わったところで、いよいよ曲に入る。
自由曲の指揮は、心音だそうだ。
心音の指揮は本当に躍動感がある。
さすがは最優秀指揮者賞を取っただけのことはある。
今弾いている自由曲は割合静かな曲調なので、もっと大きな、雄大な曲を振るとどうなるのだろうと思う。
僕も、合わせやすく思い切り伴奏をした。
最初の通し練習が終わる。
「うん。やっぱり、橋本君、いいね。メリハリもあるし、男の人だからバシッと力がある弾き方。」
心音は頷く。
「それじゃあ、橋本君のピアノに合わせるということで、フォルテのところもう少し、音量をください。全体的には静かな曲なので、こういうところがせっかくピアノを弾いてくれるので、合わせちゃいましょう。」
心音の指示で。再び練習をする。
風歌は常に僕の隣に座り、符めくりをしてくれる。
だんだんとコーラス部の声のメリハリが大きくなり、心音が満足そうにしたところで。
「それじゃあ、今日の練習はここまでにします。今日は良い感じでした。素晴らしい伴奏をしてくれた橋本君に拍手。」
心音はそう言って、拍手を送り、最後は部員全員が、
「「「ありがとうございました!!」」」
とお礼を言われて、今日の練習を終えた。
「お疲れ様。すごく良かったよ。」
練習を終えて、心音が僕のもとに歩み寄る。
「・・・・・。うん。とても・・・・。良かった。」
風歌も満足そうだ。
「みんなには気を引き締めて欲しいという意味で言わなかったけど、今年は県大会を突破して、関東大会、全国大会まで行きそうな気がする。」
心音はそう言って僕の傍に、僕と風歌にだけ聞こえるようなトーンで言った。
「ああ。そう。それはよかったです。」
心音と風歌が頷く。
「それじゃあ、ごめん、皆にはああいってしまったのだけど、このまま、コンクールの伴奏、お願いできるかな?」
心音が両手を合わせて、頭を下げる。
関東大会・・・・。全国大会・・・・。
少し不安な要素が僕にはあったが。
結花たちが背中を押してくれたこともあるし。まずは県大会ということであれば、このまま、頑張ってみようと思った。
「はい。大丈夫です。コンクール、一緒に、頑張ります。」
そういって、僕は心音と風歌に頭を下げた。
二人はとても喜んでくれており、お互いに握手を交わした。
心音は僕が手を握ると一緒に握り返し、風歌は、握手をすると、今日いちばん頬を赤く染めていた。
「よろしくね。橋本君。」
「わ、わぁ。えっと、よろしく・・・・。お願いします。」
心音と風歌はそう言って返事をした。
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