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46.反町市の建設現場にて


 反町市。東京からほど近いこの町。

 反町市のプロジェクトとして、駅を一つ作ろうとしていた。


 当然、このプロジェクトを企画したのは、この反町市とまったく同じ苗字を持つ政治家。反町太郎(そりまちたろう)だった。彼は古くからの武家の出身で大地主。だからこの町の名前の由来も彼の先祖からきている。

 「いや~先生には大助かりですよ。本当に本当に感謝しています。ここに駅ができれば・・・・・・。」

 そういいながら、地元住民はニコニコしながら、駅の完成を待ちわびている。


 建設を担当するのは、この反町市の隣、北反町市(きたそりまちし)に本社を構える、安久尾建設(あくおけんせつ)だった。

 安久尾建設の社長の兄、安久尾次郎(あくおじろう)はその北反町市選出の国会議員で、実質、反町太郎の秘書を務めてから、国会議員になった人物だ。

 その、安久尾次郎の息子が、橋本輝を退学に追いやった張本人。安久尾五郎(あくおごろう)だった。


 そんな建設現場の朝だった。

 いつものように現場監督が指揮にあたる。

 

 「今日も、皆の安全、そして、利用者さんが気持ちよく利用できる駅の完成に向けて頑張っていこう!!」

 現場監督はそう言って、朝の朝会を終える。


 だが、異変に気付く。


 「あの・・・・・。監督。」

 業務開始時間からしばらくしたとき、作業員の一人が声をかける。


 「どうした?」

 監督は作業員に聞く。


 「今日来るはずの10トントラックが来ていないんですが・・・・・。あれが来ないと作業できませんし。」


 「ああ。確かにそうだな。道路事情により、遅れているんじゃないか?」

 はじめはそんな風に答えた。


 だが、何時間待っても10トントラックは来なかった。


 「10トントラック、遅いなぁ。」

 少しため息をついた、現場監督。彼は重い腰を上げて、スマホを取り出し、10トントラックの運営している会社に電話をかけた。


 電話はつながる。そして、電話に応対するものが現れた。


 「はい。瀬戸運送(せとうんそう)です。」

 電話の受付はそう言った。


 「ああ、安久尾建設の者だが、反町市の新駅プロジェクトの担当の人はいらっしゃいますか?」

 現場監督はそう言って、瀬戸運送の担当者にかわってもらうように指示した。



 一方電話の向こうの瀬戸運送本社。

 安久尾建設から電話を受け取った人物は、まるで、この電話を想定していたように深呼吸して。


 「社長、例の件で、お電話です。」

 「了解した。」

 瀬戸運送の社長は、そういって、電話に向かう。


 「もしもし、社長の瀬戸ですが・・・・。」

 そういって、電話応対をする。


 「あー、安久尾建設だが、今日予約した10トントラックが来ていないのだけど。」

 現場監督が荒々しく声をあげる。


 「はい。確認します。」

 瀬戸社長は一呼吸置く。だが、パソコンを見る素振りもなければ、ファイルを確認する素振りもせず、電話をしばらく保留にして、1分間待つ。



 そして。

 「大変申し訳ありません。こちらのシステムに不具合が発生しまして。本日の予約ができていない状態になっておりました。」

 瀬戸社長は謝る口調をするが、彼の眼もとはすまなそうな表情など、一切なかった。


 「おいおい、何だよ。そしたら、いつ来るんだよ!!」

 現場監督はさらに声をあげる。


 「申し訳ありません、あいにく、1か月以上、予約でいっぱいでして・・・・・・。手配できるのは早くても1か月後になります。」

 「はあ、なんだそれ!!ふざけるな!!」

 現場監督は声を荒げるが・・・・・・。


 「申し訳ありません、そちら様への違約金はお支払いしますので。」

 「そうだな、そうしてもらわないと困るよ。そして、金だけじゃない。社長に報告して、これからは、お前たちとの取引は無しだ!!」


 「はい。申し訳ありません。それで結構でございます。」

 瀬戸社長はすんなり、取引停止と、違約金の支払いを受け入れた。

 「ふん。潔いじゃねえか。覚えてろよ。」

 そういって、現場監督は電話を切り、急いで、他の運送会社を探すように、部下たちに命じた。


 同じタイミングで、受話器を下ろした、瀬戸運送の社長。

 社長はほっと、胸をなでおろす。


 「よし。取引停止、奴らとやっと手を切れたよ。」

 社長はそう言って、瀬戸運送の社員に報告する。


 「よかったっすねー。社長、そういう意味で、娘さんの友達に感謝しないとですね。」

 「ああ。そうだな。史奈にも帰ったら報告しないとな。」

 社長は笑っている。


 そう、この社長の娘は、つい最近まで、花園学園で生徒会長をしていた、瀬戸史奈だ。

 つまり、史奈は瀬戸運送の社長令嬢だった。


 実は長い間、瀬戸運送は、安久尾建設にこき使われてきたのだった。

 先ず、トラックを手配したのに、お金が払われないし、未納分が数多くある。

 その他、瀬戸運送の社員たちに無理難題を押し付ける。

 これが原因で辞めてしまった社員もいるほどだ。


 取引を停止してもよかったのだが、やめられない事情がいくつかあり、なかなか取引を停止できなかった。


 だが、そんな時、取引停止を決定づける要因が入ってきた。

 それは、史奈が輝と出会ったことだ。


 史奈は輝の一件を父親に話していたのだ。

 安久尾建設の社長の息子が原因ということで、ピンと来たのだった。


 「これで、よかったさ。こちらの違約金も、奴ら、安久尾建設からの未納分で相殺される。」

 「そうですね。いや~。本当に良かったです。」


 そういって、瀬戸運送のメンバーは胸をなでおろしたのだった。




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