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45.離の夜、その2


 家に帰る僕。

 そして、僕の後を、史奈、葉月、加奈子、結花、そして、早織がついてくる。


 家に帰る道中、薬局に寄って、ベッドの枕元にある同じ箱を購入する。

 そして、5つ目の箱が4つの箱に並べて置かれた。


 5つ目の箱には。『早織』と名前が書かれている。

 「ふふふ。誰が一番先に箱の中身が無くなるか競争ね。」

 史奈はそう言って早織に言う。


 早織も頷く。だが、その顔は、怒っているような表情ではなく、むしろ、一緒に楽しんでいるようだった。

 コミュニケーションの高い、葉月、史奈、結花が必死で、早織に、暗黙のルールを説明した。


 最初こそ戸惑ったものの、早織はもともと、おとなしい性格だからなのだろうか。

 生徒会の先輩やクラスの一軍女子に、逆らえないと思ったのか、そして、僕と一緒に行動できるメリットの高さを選んだのだろうか。

 そのどちらを選んだのかもわからないが、何か希望に満ちているような。そんな気がした。


 「あの。私。自信ないですけど、負けませんから・・・・・・。」

 一通り、話を終えると、早織はそう言いながら、頷いた。



 「ありがとう。そして、ごめんね。八木原さん。本当はいけないことだとわかっているんだけど、どうしても輝君を助けたかったからなんだ。」

 葉月はそう言って、少し、深刻そうな顔をした。


 そう話しているうちに、僕の家に帰り、農家の離に着いた僕たち。

 「輝君。大丈夫?例のこと、つらいことかもしれないけど、八木原さんに話しても・・・・・・。」


 ゆっくり、ゆっくり頷く。

 そうだろうな。この話をしないと、こういう関係になっている状況を説明できなかったし、最後まで早織に納得してもらえないだろうとも僕は思っていた。



 「そしたら、八木原さんにお話しするね。知っておいて欲しいことだから。そして、どうして、こんな関係になっているのか、私たちしか知らない輝君の秘密を話すね。」

 葉月はゆっくり、ゆっくり口を開いた。

 そうして、僕の方を見る。僕は頷く。


 「輝君。本当は私たちと同じ学年なの。つまり、八木原さんとは一つ年上なんだ。どうしてかというとね、前の高校を強制的に辞めさせられたからなの。」

 葉月の言葉に、早織は耳を疑う。そして、ごくっと。息を飲む。


 ここからは僕が話した方がよさそうだなと思い、僕が話すことにした。


 前の高校のこと、僕は今までどんな活躍をしていたかということ、中学のピアノコンクールの成績が、安久尾たちの息のかかった審査員によって、金の力で書き換えられたこと。

 そして、安久尾の罪を全て、僕に濡れ衣を着せて、退学にさせられたこと。


 話の途中からやっぱり僕は涙が出てきた。

 それを見かねた、史奈が代わりに話の続きを話してくれた。


 「私たちもね。偶然同時にそのことを知ったの。だから、こうして、助けてあげたいと思って。こういう関係になっているのね。」

 史奈がそう話し終える。


 そして、加奈子が歩み寄り。

 「だから・・・・・。お願い。八木原さんも輝のこと、助けてあげて。みんなで、助けて、乗り越えて欲しいの。だから・・・・・・。だから・・・・・・・。」

 加奈子は早織の手を強く握る。その目には僕と同じで涙がこぼれる。


 早織はひたすら泣き続けた。

 やがて涙でぬれるからだろうか、眼鏡が汚れるからだろうか。眼鏡をはずす。


 本当に可愛らしい顔から流れる涙を見て、何か申し訳なさをひしひしと感じる。


 「ごめんね。橋本君。こんなに・・・・・。苦しかったのに・・・・。無理なお願いをさせて。」

 早織は、そういって自分を責めている。

 どうやらこちらの立場も考えずに、新メニューの話をお願いしたことを責めているのだろうか。


 首を横に振る僕。


 「そんなことは全然ない。むしろ、料理、みんなで作るの楽しかったし。八木原さんとも仲良くなれたらと思う。本当にごめん。こんな、ことになって。」


 僕も涙を拭き、僕と、早織はお互いのことを見つめ合う。


 「ありがとう。一緒に、いてくれて。今は少しずつ、辛くなくなっている。」

 僕はそう言うと、早織も泣くのをやめる。


 「うん。良かった。」


 早織はそう言って、僕に近づき、両腕を背中に回す。


 「橋本君。本当に、ありがとう。」

 早織の声は少し明るくなる。


 「ありがとう、八木原さん。」

 「名前で呼んでもいい?輝君。とかで。」

 早織の言葉に、僕は首を縦に振る。


 「私も、早織って呼んで欲しい。」

 早織はそう言いながら、笑っている。


 「もちろんだよ。早織。」

 僕は、早織のことを初めて名前を呼ぶ。


 それを見ている生徒会メンバーたち。


 「ふふふ。これで、早織ちゃんも私たちの仲間ね。」

 史奈はニコニコしながら喜んでいる。


 「輝君。モテモテ。私も頑張らないと。」

 葉月はうんうん、と頷き、気合を入れる。


 「当然、私が一番よね。」

 加奈子は今まで、バレエの発表会で仲を深めたのか、自信に満ちている。


 「何を言っているんですか?最近は私の指揮を見てくれましたよーだ。」

 結花も笑っている。


 「私だって。」

 早織は一呼吸置く。


 「私だって、負けないもん!!」

 早織はそう言って、僕の唇に彼女の唇を重ねる。



 「わーっ、いいなぁ。私も。」

 それを見た葉月。

 「そうね。私も欲しい。」

 史奈も同じだ。


 「「「「私たちも、一緒にいい?」」」」


 生徒会メンバーが声をそろえて言った。


 ゆっくりゆっくり首を縦に振る僕。

 断ることはできなかった。

 こうして、心の傷を癒してくれる。


 いけないこととはわかっていても・・・・・・・。

 何かを求めようとする僕。それに応えようとする、仲間の姿がそこにあった。




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●現在執筆中の別作品もよろしければご覧ください。

 1.忍者翔太朗物語~優秀な双子の兄だけを溺愛する両親のもとで奴隷のような生活をして育った忍者のお話~URLはこちら↓

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