39.新メニューお披露目
「あ~。あ~。あ~。あ~。あ~。」
義信の裏声がいい感じに響く、生徒会室。
「係長、お疲れ様です。調子はどうですか?」
その裏声と、彼の本来の声色のギャップが少し面白い。
「合唱コンクール?大分いい調子だよ。結花の指揮も凄く成長していきたし。」
今日の音楽の授業の感想を普通に言う。
「おお、いいっすねぇ。いいっすねぇ。そんで係長は安定の伴奏でしょう。きっといい感じに歌えるんでしょうなぁ。」
義信はそう言いながら、笑っている。
僕は結花の方を見る。
結花も笑っている。
「本当に、マジでハッシーすごいよ。なんかちょっと自信がついてきた。」
結花も笑顔になりながら義信に応える。
「いいっすねぇ。1年B組は。僕らE組は、確かに、『旅立ちの日に』で有名ですが。なんか、まとまらないといいますか。僕もこんな感じですし。」
義信はそう言いながら笑っている。
「ははは。そうなんだね。そういう時あるさ。」
僕はそう言いながら、義信の肩を叩く。
「そうっすよね。それならいいすね。」
義信はそう言いながら、僕と結花を席に促した。
「ふふふ。みんな、頑張っているようで、何よりね。」
史奈はそう言いながら、笑っている。
今日も、彼女は生徒会室に来ていた。
「会長~。そんなところに居ないで、手伝い、行かなくていいんですか?」
葉月は史奈に向かって言う。
手伝いとは、バレーボール部のことだろうか。
「ふふふ。そうね。こうして、輝君の顔も見れたし、バレー部の方にも顔出そうかしら。」
史奈は僕の方に向かって、手を振ってくる。
そうして、生徒会室の方の扉に向かい、バレー部の方に向かうが。
「わからないことがあれば、lineしてね。待ってるから・・・・・。」
史奈は僕の正面に来て、両方の手で、僕の頬を触り、さらに両手を僕の背中に回す。
「うん。わかったよ。史奈さん。」
僕は彼女の耳元で、言う。
「ふふふ。待ってるね。」
そういって、史奈は生徒会室を出て行く。
「あちゃ~。余計火に油を注いだか。」
そう思いながら、嫉妬の顔を浮かべる葉月。
「ふふふ。葉月。私も負けないわよ。さっきのは、私じゃ絶対できなかったけど。」
「そうですよ。葉月先輩。私もいますよ。勿論、前会長だって、どんな手を使ってくるか・・・・・。」
結花が続きを話そうとすると、再び勢いよく、ガラガラと生徒会室の扉が開く。
史奈が勢いよく、扉を開ける。
「はいは~い。集合!!」
「こ、今度は何ですか?」
葉月が史奈に向かって言うと。
てへぺろ~。という顔を史奈はしている。
「さあ、入って入って。」
史奈はそう言いながら、1人の生徒を生徒会室に通した。
その子に入ってきた人物はよく知っている人物だった。
黒ぶち眼鏡の奥から、早織の緊張した瞳が伝わってくる。
「あ、あの・・・。失礼します。」
恥ずかしそうに頭を下げる、早織。
「みんなに、用があってきたみたいよ。私が様子を見て声をかけてきたんだけど。へへへ。」
史奈はゆっくりと笑う。
さあ、さあ。
と史奈の表情をみて、早織は勇気を振り絞る。
「あ、あの、み、皆さん。この間はありがとうございました。新メニュー。次の週末から。出るので、食べに来てほしくて。その・・・・・。」
早織はそう言いながら、早織の家族の経営するお店。【森の定食屋】の新メニューのチラシを配る。
そこには、先週末に、僕たちの家で、作った料理のイラストが並ぶ。
「す、すごい。もう、新メニューが出るんだね。」
葉月は興奮しながら言う。
「はい。家族みんなに話したら是非って。」
早織は少し恥ずかしくなりながらも、笑顔でいた。
「それで、橋本君に、お願いがあるんだけど。」
早織は、さらに、顔を真っ赤にしながら、週末の朝に畑の野菜を届けに来てほしいことを告げた。
もちろん、断る理由もなく、伯父に話を伝えると、言っておいた。
少し楽しみが増えた今日一日。僕たちは力いっぱい、生徒会の仕事をこなしていった。
そして、再び、週末の朝を迎える。
僕は、伯父のトラックに乗り込み、市場に行くついでに、畑の野菜を【森の定食屋】に届けた。
「おお、雰囲気もいい店じゃねえか。」
伯父はそう言いながら、駐車場にトラックを止めて、野菜や果物が入った段ボールを取り出す。
早織は、早朝にもかかわらず、待っていてくれた。
「あ、ありがとうございます。」
そういいながら、僕と、伯父に頭を下げて、野菜の入った段ボールを運び入れた。
「それじゃ、お昼にまた。」
僕は、そういって、伯父の運転するトラックに乗り込む。
「うん、待ってるね。」
早織はそう言って、見送ってくれる。
そして、お昼時を迎えた。
生徒会役員全員で、早織のお店に向かう。
今回は史奈の午前中の部活が終わるタイミングを待って、学校に集合して、お店に行くことになった。
「だって、皆が、一生懸命考えた、料理なんでしょ。それは、食べに行くわよ・・・・・・。」
そういいながら、史奈は足取りは軽いが、顔は渋い顔をしている。
苦手な野菜が入っていなければいいけれど・・・・・。
そんな表情だった。
史奈、義信と徒歩組にペースを合わせたため、小一時間くらいして、森の定食屋に到着する。
「へえ、おしゃれなお店ね。」
史奈は定食屋の外観を見るなり、少し気に入る。
「すみません、沢山歩かせてしまって。」
僕は史奈に謝るが。
「気にすることないわ。部活でも、このくらいの距離は走るわよ。」
史奈はそう言って、ニコニコ笑う。
義信も同じだった。
良かった、と安心する。自転車組の、僕と、葉月、加奈子。
そうして、僕たちは、【森の定食屋】の扉を開ける。
「いらっしゃいませ。」
早織に頭を下げられ、出迎えられる。
「あっ。来てくれたんだね。」
早織は笑顔で迎える。
お店の中を見るとビックリ。
僕以外にも他のお客さんがいる。
「すごいね。お客さんが、かなり来てくれているね。」
僕はそう言いながら、笑う。
「うん。事前に宣伝をしたからかな。まだまだ、満席というわけにはいかないけど、少しお客さんがもどってきたかな。」
早織はそう言いながら、僕たちを席に案内する。
「みんなの分は予約席みたいな感じにしているから、大丈夫だよ。」
早織はそう言って、案内した席に僕たちを座らせた。
「さて、注文は・・・・・。みんな、聞かなくてもわかります。新メニューですよね。」
僕たちは頷いた。
「それじゃ、カレーと天ぷら定食がありますので、カレーの人。」
そう聞くと、全員カレーに手を挙げた。
「皆さんカレーですね。デザートも付けますか?」
これも満場一致で頷いた。
そうして、季節のカレーが運ばれてきた。
何だろうか。プロの料理人が作ったからだろうか。
確かにカレーなのだが、この間とは全く違う、よりスパイスが効いていそうなカレーが出てきた。
一口目を食べる。
本当に美味しい。
「さすが、輝の畑ね。」
加奈子はそう言って、カレーを食べる。
「まあ、正確には伯父さんの畑だけど・・・・・・。」
僕はそう言いながら、ゆっくり食べ始める。
「いやいや、どっちでもいいじゃないですか、係長ぅ。本当うまい。」
モリモリと早口で食べる義信。
「本当に、プロの料理人が作ると、マジで映えってるじゃん。食べる前にインスタしちゃおう。」
おもむろにスマホを取り出し、写真を撮る結花。
「あ、私も私も。」
と葉月も同じようにスマホを取り出す。
「しまった。」
という表情をする、加奈子と僕。
「そうだ。写真、撮っておくべきだったね。輝。」
加奈子はそう言うと。
「そうですね。でも、デザートは写真、撮りましょう。」
僕は加奈子とお互いに目を合わせて、笑う。
史奈もおいしそうに、黙々とカレーを食べている。
その表情は野菜が苦手、という表情ではなさそうだ。
「瀬戸会長、大丈夫ですかぁ?」
結花が聞いてくる。
「何言ってるの?カレーだったら、はじめから言ってよ。カレーならどんな野菜が入っても、大好きよ♪」
なるほど、確かに、カレーであれば、子供からお年寄りまで、皆が食べられる料理だ。
小学校の頃、給食の人気メニューもカレーだった理由も、これを見てうなずける。
本当に料理をおいしそうに食べる史奈の姿が、そこにはあった。
そして、デザートが運ばれてくる。
ラズベリーソースのアイスクリームだ。
こちらも、アイスクリームの質が違うからだろうか。本当に美味しそうに見える。
今度は忘れずにスマホで写真を撮る、僕と加奈子。
お互いに、親指を立てて、笑顔になる。
「本当に冷たくて最高!!」
味わいながら食べる葉月。
「マジ、最高じゃね。良かったね、八木原さん。」
結花がそう言うと早織は笑っていた。
「ホント・・・・・。ウマいっすね。」
義信が少し弱々しく言って居る。
だが、どうしたの?と、声をかけるものは居ない。
僕もそれを見て笑っている。
うん。勢いよく食べて、頭がキーン、となった義信の姿がそこにはあった。
「私たちは味わって食べようね。輝。」
加奈子が笑っている。
「うん。そうだね。」
僕も笑っている。
久しぶりに活気に満ちた食事のひと時がそこにはあった。
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