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34.森の定食屋


 葉月、結花とともに昼食を食べるために、伯父の家から出て、自転車を走らせる僕。

 雲雀川を渡らず、そのまま高校がある方向へと北上していく。


 「あたしの家は、高校から見て北の方にあるから、ハッシーたちと真逆なんだよね。あたしの家に向かってる感じがする。」

 結花はそう言いながら、僕たちとともに自転車を走らせる。


 ちなみに、この町の中心部は雲雀川の向こうにある。

 よって、こちら側は畑や一軒家などが目立つ。故に、こちらの地域も広い家がかなり多い。


 川の向こうの市役所のビルとほぼ平行になったところで自転車の歩みを止める。

 ちょうど、川の向こうでは葉月の家、市役所、駅、そして百貨店と家電量販店の交差点が並行してある場所だ。


 「直線を引けば私の家が近いね。川の橋を渡らないといけないので、道のり的には輝君の家の方が近いけど。」

 葉月はそう言いながら、自転車を止めて、僕に歩み寄る。


 「そうだね。ここから橋があれば葉月の家の方が近いよね。」

 僕はなれない敬語を一生懸命使う。


 「うん。だんだんと、慣れて行こう。そばに居るからね。それに輝君は私と同い年なんだから。」

 葉月はそう言いながら歩みを止める。


 「ははは。それもそうだね。」

 僕は葉月のリアクションに頷いて笑う。



 そういいながら、自転車で数分、5分もかからないで走っていると、看板が見える。


 【森の定食屋】とその看板には記載されている。


 「定食屋だ。」

 僕はその看板を指さす。


 「いいんじゃない。値段決めて入ってみよう。」

 葉月はそう言って、僕を促す。


 【森の定食屋】と名乗る建物は少し古いが、それがまた価値をあげてくれそうな佇まいだった。

 おしゃれなレンガで作られ、蔦が屋根まで伸びている部分がいくつか散見される。


 昔の甲子園球場ほどではないが、その蔦がこの建物のアクセントとなり、印象的だ。

 建物も少し大きく中も広々としている予感がする。

 そして、花壇が備えられており、季節の色とりどりの花が植えられていた。


 僕たちは早速、店頭に置かれているメニュー表を見て、値段を確認する。

 定食はほぼほぼ3桁の値段で食べることができるようだ。

 さらに、定食以外にも洋食メインのスパゲッティーだったり、パンだったり、オムレツのメニューもある。


 そして、葉月と結花を虜にしたのはデザートだった。


 ちなみにメニューは全て手書きで、それぞれにメニューのイラストが描かれた物であったが、本当にそのイラストが食欲を誘う。


 「ここしかないよね。」

 「うん、超おいしそー。」


 葉月と結花の提案に僕も頷く。


 僕たちは早速【森の定食屋】の扉を開ける。

 カランカランと扉の鈴が鳴る。


 「いらっしゃいませー。」

 定員に頭を下げられるが、その定員が頭をあげるとお互いにびっくりした。


 目が合う。と。


 「「「えっ。」」」


 僕と結花、そしてその店員の目が点になる。


 その店員はこの間の音楽の授業で、僕に話しかけてきた、黒ぶち眼鏡のクラスメイトだった。


 「・・・・。橋本君に、北條さん。それに・・・・・。理事長の娘さんでしたよね。」


 黒ぶち眼鏡の女子生徒は驚いたような表情で名前を言う。


 「ああ。こんにちは。ここでバイトしてるんだね。えっと・・・・・。」

 僕は緊張気味に声をかける。


 「あっ。そういえば、自己紹介してなかったね。八木原早織(やぎはら さおり)です。」

 黒ぶち眼鏡のクラスメイト、早織は僕たちに自己紹介した。


 「改めてよろしく、僕は、橋本輝。で、生徒会で一緒に仕事をしている、花園さん。こちらは僕と結花のクラスメイトです。はい。」

 僕は葉月に声をかける。


 「生徒会役員の花園葉月です。よろしくね。」

 葉月は早織に笑顔で話しかける。


 「そんで、私は、北條結花。八木原さん、改めてよろしく。」

 結花も楽し気に自己紹介をする。


 「うん。よろしく。北條さんもよく知ってる。クラスで目立ってていいなと思ってます。そして、先日は本当にごめんなさい。」

 早織は頭を下げる。


 「いいって、いいって、気にしていないから~。八木原さんはここでバイトしてるの~?すごーい。」

 結花は興味津々な表情を浮かべる。


 「う、うん。ママとおじいちゃん、おばあちゃんが一緒に経営しているお店なんだ。だから、バイトというか、手伝い・・・・・。かな。」

 早織はそう言って、説明する。


 「へぇ。やるじゃん。このお店、結構おしゃれだし、最高だね!!」


 結花は早織に笑顔で言う。


 「ありがとう。そういってくれると嬉しいな。」


 早織の案内で、僕は席に着く。

 裏庭というのだろうか、このお店の庭園が見渡せる席に案内される。


 本当にすごくきれいな庭だった。

 薔薇がいくつか植えられ、さらに季節の色とりどりの花が植えられている。

 中央の芝には、古い鐘と、ブランコが置いてある。


 「すっごーい。マジ映えるじゃん。」

 結花はそう言いながら、スマホで庭園の写真を撮る。


 「ありがとう。実際に、ここで結婚式する人も居てね。」

 早織は、少し照れたように言う。


 「うんうん。結婚式、マジ最高!!」

 結花はそう言いながら、僕の方を見る。

 さらに興奮した顔で葉月も僕の方を見る。


 「そうだね。結婚式、こんなところでできたら素敵だね。」

 僕はそう言いながら、結花と葉月をなだめる。



 早織からメニューが渡され、僕たちはそれぞれの好きなものを注文する。

 料理を待っている間は、本当にこの庭園に心を奪われてしまう。


 十分くらいで、料理が運ばれてくる。

 「おまちどうさま。」

 早織は丁寧に料理をそれぞれ置いてくれた。


 【揚げナスと豆腐ハンバーグの定食】が僕の目の前に置かれる。

 本当に揚げナスの生姜と大根おろし、ハンバーグのソースの香りがおいしさをそそる。


 葉月は【唐揚げ定食】。結花は【ベーコンのスパゲッティー】とスープとパンがそれぞれ、目の前に置かれていた。


 本当に美味しかった。絶品だった。


 「すごい美味しい。」

 僕は早織に感想を言う。


 「ありがとう。みんな喜ぶと思う。」

 早織はそう言いながら、笑っている。


 「マジで、美味しい。本当に来てよかった。」

 結花は少し興奮状態。


 「本当。こんなに美味しいのに、お客さん、空いているのがおかしいくらい。」

 葉月はそう言いながら、目の前の【唐揚げ定食】を味わっている。


 「・・・・そう、だよね。」

 葉月のリアクションに、早織は少し暗い表情を浮かべる。


 「あ、ごめんね。全然、そんなわけじゃないから。」

 葉月は早織の表情を察したのか、すぐに謝る。


 「・・・・。だ、大丈夫です。デザート、あるんですけど、食べますか?」



 「「「もちろん!!」」」

 僕たちは早織の提案に賛成する。デザートも大いに期待できそうな、そんな昼食のひと時だった。

 



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●現在執筆中の別作品もよろしければご覧ください。

 1.忍者翔太朗物語~優秀な双子の兄だけを溺愛する両親のもとで奴隷のような生活をして育った忍者のお話~URLはこちら↓

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