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32.結花の指揮練習


 「あ~。あ~。あ~。」

 生徒会室へ行くと、義信の裏声が生徒会室に響いていた。

 その歌声を聞いて、微笑んでいる、史奈、葉月、加奈子、そして、結花。


 「遅くなってすみません。」

 僕はそう言って、挨拶をする。


 「いいよ。大丈夫。それに今日の仕事は終わったよ~。こうして雑談中。こっちもごめんね、パパが話したいといって、呼び出しちゃってさ。」

 葉月はそう言いながら、僕を椅子に座るように促す。


 「すみません、ありがとうございます。おかげで、もう一度ピアノが出来そうです。」

 「そう、良かった。パパ、すごく心配してたよ。」

 葉月はそう言って、笑っていた。


 「あー。係長、お疲れ様です。合唱コンクールの練習、苦労しますよねぇ。女性の声に合わせるなんて。ああ。苦労しかないっすね。」

 義信はそう言いながら僕に近づいてくる。


 そうか・・・・。彼は伴奏や指揮ができるわけでもなく、歌わなきゃいけない人だ。

 少し苦労するだろうな。


 「そうね。今年の一年生で入った男の子、心配よね。不利にならないかしら・・・・・。」

 史奈は義信の練習を見ながら、心配そうに見つめる。

 高校生にもなると、大半の男子生徒は変声期が終わっている。僕もそうだ。



 「ああ。僕はピアノ伴奏なので。結花に推薦されて・・・・・・。」


 「「「ああ。ああ。ああー。」」」

 史奈、そして義信、さらに葉月までもが、ああ、そうだった。

 彼はピアノが弾けた。しかもプロ級レベル。ということに気が付いた。


 「みんな、今まで輝の何を見てきたのよ。私はそれしかないと思ったよ。」

 加奈子は得意げになって言った。


 「そうだね。ごめんね、輝君。そしたら、1年B組は楽勝かな。輝君もあれだけできるし。」

 葉月は得意げになって言う。


 「そうね。きっと、1年B組は1年生の中で有利ね。」

 史奈も続ける。


 「そうっすね。きっと係長なら。素晴らしい伴奏をしてくれるに違いありません。」

 義信は僕の肩を叩き、そう言った。


 「ふう。そうよね。今日も、伴奏、初見っていうのかな。楽譜をもらって、一発で弾けちゃったし。」

 不安そうに緊張しているのは、その、僕と同じクラスの結花だった。

 パチパチパチパチ。生徒会室に拍手が鳴り渡る。


 「そうしたら、無双できるじゃん。やったね、同じクラスで良かったね。結花。」

 葉月が得意げになって言う。


 「そうね。そうしたら、別に不安もなさそうだけど。どうしたのかしら。」

 史奈が結花の目を見るように答える。



 「私が指揮を振ることになって。」

 結花はぽつぽつと不安そうに答えた。


 その瞬間、生徒会室の僕以外のメンバー全員が、驚きの表情を見せる。


 「す、すごいっす。頑張りましょうよ。生徒会の最強バッテリーっすよ。」

 義信が結花に向かって言う。


 「そうね。これで、生徒会も一歩前進ね。」

 史奈が結花に向かってウィンクする。


 「みんな、簡単に言いますけど・・・・。私はやったことないから困ってるのー。」

 結花はそう言いながら、不安を漏らす。


 「あー。確かに、緊張するよねー。」

 葉月は結花に向かって寄り添うように言った。


 「そう、だからハッシーを待って、今日から教えてもらおうかと。指揮の経験もあるみたいだから。」

 結花はそう言うと、僕を見た。


 「お願い。助けて。ハッシー。」

 結花は僕の手を取っていった。


 「わかった。わかった。任せといてよ。」

 僕は結花に笑顔で言う。

 彼女はとても安心したみたいだ。


 「早速やっていこうか。」

 僕は荷物を下ろし、生徒会室のホワイトボードを借りる。


 「まあ、指揮っていうのはとても重要で、皆の演奏を一つにしないといけない。これが一つの役割。つまり、演奏者のリーダーだね。だから、演奏の全責任を指揮者が負うことになる。」

 結花はさらに緊張する。

 少し言い過ぎたかな・・・・・・・。まあでも、知っていてもらいたいことだから全部話しちゃおうか。


 「さらに言うと、それが前提、なんだけど、演奏者は一人一人、個性があって、演奏をリードするけど、あまり統率過ぎるのも良くない。それを承知したうえでの全責任を負うことになるので、そこが指揮の難しい所なんだよね。」

 さらに結花は緊張した。ドキドキしている表情がこちらにも伝わってくる。


 「心配しなくても大丈夫。本来であれば、そういう意味では僕のピアノ伴奏も結花の指揮に合わせなくちゃいけないんだけど。今回は僕がリードして、サポートするね。そのためのお話だから。」

 結花は少し安心して頷く。

 ちなみに、今まで結花さんと僕は読んでいたが、結花と呼べるようになったのは、あの夜、加奈子のバレエコンクールの決勝の夜の一件以来だろう。


 「うん、ありがとう。ハッシー。」

 そういいながら結花は僕を見る。



 僕は、ホワイトボードにペンを走らす。

 船についている錨のような絵を描く。


 「基本は、課題曲の『校歌』も、自由曲の『瑠璃色の地球』も、これを描くようなイメージで振れば大丈夫。今回は初めての指揮なので、利き手で振って、この、船の錨のようなものを書いてみようか。」

 結花は右手を出して、一緒に錨を描く感じで振っていく。


 「書き順は。1、2、3、4。という順番で。」

 ホワイトボードの絵をもう一度ゆっくり書く。

 結花は頷く。


 「行くよー。」

 「1、2、3、4。1、2、3、4。・・・・・・・・・・・・・・。」

 結花は僕の動きを見て、見よう見まねで振っていく。


 だんだんと動きが良くなってきたので。『瑠璃色の地球』を試しに僕が歌う。1番が歌い終わったところで僕は止める。

 結花の表情はだんだんと笑顔になる。


 「どう?なんか。リズムがあってきているのを少し感じた?」

 僕は結花に向かって言った。

 おそらくこの結花のご満悦の表情は何か手ごたえがあるのだろう。


 「うん。うん。すごい。すごいよ。ハッシー。そんなに難しくないんだね~。」

 結花は自分の指揮が様になったようで本当に満足したようだ。


 「まあ、先ずはこれに慣れて行って。校歌の指揮はまた今度にしよう。まずはこれができるようになって、次のステップに行くという感じで。まあ、結花は今日はかなりできたし、明日には次に行けそうだね。」


 「うん。うん。ありがとね。ハッシー。」

 結花は少し元気になったようだ。


 こうして結花の指揮練習がスタートした。

 次の音楽の授業までまだまだ余裕がある。僕も頑張らないと。そう思った。


最後まで、ご覧いただきありがとうございます。

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