3.伯父の家
■改訂履歴
・初めて出てくる登場人物、固有名詞にフリガナを入れました。
夏休みだった。
しかし、僕は夏休み以後も、この部屋に引きこもる予定だ。退学になった今、何もできない。
外に出るのさえ億劫になる。
「ピンポーン!!」
そんな時に、家のチャイムが鳴る。
僕は扉を開けると、そこには伯父の進が立っていた。
僕の祖父母と伯父は農家だった。祖父母はすでに亡くなっているが、農家は伯父が継いでいる。
そして、この町に仕事に来ている、僕の父親に定期的に実家で収穫した畑の野菜を届けてくれる。
今日も、この夏にとれた、段ボール一杯の野菜を持ってきた。
「どうしたんだよ。輝。暗いじゃないか。」
伯父はそう言いながら、野菜の入った段ボールを置き、玄関に置く。
「おまけに、その肌の色はなんだ?少しは日焼けでもしたらどうだ?」
伯父はさらに続ける。確かに、伯父は農作業をしているので、随分と日焼けしている。
「いくら、お前の特技が、家の中でやるものでも、それでも去年は少し焼けた肌だったぞ!!」
伯父は元気のない僕を心配しているようだった。
「大丈夫。何でもないよ。野菜、いつも、ありがとう。」
僕はボソッ、ボソッと声を出す。
「どうしたんだい、こんなしけた面しやがって。何があった?話してみろや!!」
伯父は世話を焼くように、何があったか聞いてくるが。
「ごめん、伯父さん話したくないんだ。」
僕はそう言って、伯父さんの顔を見る。
「まあいいや。久しぶりに着たんだ、弟にも会っていかないとな。仕事から帰ってくるまで、上がらせてもらうぞ!!」
そういって、伯父は家に上がった。
僕は伯父に冷たい麦茶をさしだして、麦茶の入ったグラスをテーブルに置くと、そそくさと自分の部屋に戻っていった。
「なんだかなぁ、これが反抗期という奴なのだろうな。」
伯父はそう言って、麦茶を飲みほした。
さて、その夜。
僕の部屋をノックされた。
ノックした人物は伯父の進だった。
「よっ、輝。荷物まとめろ!!」
進はそう言って、部屋に入ってきた。
「弟、つまりお前の父親から、大方話は聞いた。辛かったなぁ。ここにいるのもあれだ。俺のところに来い。俺はなぁ、子供が居ないし、農家の後継ぎもいない。一緒に来て、農作業、手伝え。」
伯父はそう言って、僕の肩をポンと叩き、抱きしめる。
ありがたかった。心に染みた。
僕は黙ってゆっくり頷いた。
荷物をまとめるのにそこまで時間はかからなかった。
伯父はその夜、一泊して、翌朝、僕の荷物を伯父の運転するトラックに積んで、僕と一緒にトラックに乗り込んだ。
「じゃあな。輝はしばらくうちで預かる。すまねえな。」
伯父はトラックの窓を開けて、僕の両親に挨拶する。
「兄貴、ありがとう!!」
「本当に、ありがとうございます。」
僕の両親は伯父に頭を下げた。
そうして、伯父はトラックを発進させた。
伯父のトラックは高速道路に入り、車を一気に飛ばしていく。
「輝、昨日は悪かったな。」
伯父は素直に昨日のことを詫びた。
僕は、黙って首を振る。
「その、ありがとう。伯父さん。」
「いいってことだ。お互い様だ。どうだ、お前からも話せそうか?退学になった理由とか。」
伯父は優しい口調になる。
「あっ。うん。」
僕は頷き、退学になったことを話した。話しながら涙が出た。
「まったく許せんな。引っぱたいてやるのに・・・・・。まあ、しばらくは俺のところでゆっくり暮らせ。」
伯父はトラックをさらに走らせる。
途中、サービスエリアで休憩をしながら、県を跨ぐ。
そうこうしているうちに、伯父の家。農家に到着。
母屋と離れが二つあり、その背後の周囲を竹やぶと林で覆われている。
母屋と離れの前には広大な畑や田んぼ、そしてビニールハウスがいくつか点在しており、それがすべて、伯父の畑だ。
伯父は毎朝、僕が乗ってきた、トラックにつめては市場に野菜を出荷しに行っている。
そんな感じの日々を伯父は送っていた。
「とりあえず、離れ、全部使っていいぞ!!必要なものはあるからな。後は、そうだな。畑、手伝え!!」
伯父は、そういって、僕の荷物を離れに運んでくれた。
離れにはいろいろと設備が充実している。
キッチンもあれば、風呂も、トイレもあり、母屋とそんな変わらない。
それに、楽器や本棚もいくつかあり、本が並べられている。
「お前の、じいちゃんとばあちゃんが生きていたころは離れを使っていたんだがよ。まあ、最後は、介護状態だったし、リフォームしたし、設備は良い。好きに使いな。」
そういって、伯父は母屋に入っていった。
確かにしばらく使ってなさそうだったが、離れの各部屋の状態は良かった。
伯父には感謝しかない。
「あ、ありがとう、伯父さん。」
僕は伯父に頭を下げると。
伯父は大きく手を振って、母屋に入り、運転の疲れを休めているようだった。
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