28.離の夜
うろ覚えだった。
茂木と会ってから僕は断片的な記憶しかなかった。
ゆっくりと中学生部門の発表を一緒に見た。
だれがどんな演技をやったのか覚えているわけがなかった。
だがしかし、音楽はとても好きだ。流れてくる音楽が、だんだんと、だんだんと取り戻していった。
藤代さんが準優勝し、打ち上げ会場に向かい、原田にこの家まで送ってもらった。
そう、僕が暮らしている伯父の家に。
伯父の家、つまり亡くなった祖父母の家は代々続く農家だ。
建物も母屋と離の2つある。
母屋は伯父夫婦が、そして、離れは僕が今使っている。
その離に、初めて、僕と伯父夫婦以外の人が来ている。
瀬戸会長、加奈子、葉月、そして、結花の4人。
心配でここに残ってくれたのだった。
僕は伯母の指示通り、ポケットから離れのカギを取り出し、4人を離れに招き入れた。
「輝。絶対大丈夫。お友達を大切にね。」
伯母はそう言うと、母屋に戻っていった。
僕はこくりと頷く。
4人を僕が使っている部屋に通す。
部屋の明かりをつける。
僕は、ベッドに座り込む。
同じように、加奈子と葉月が僕の両隣に座る。
瀬戸会長と結花は、僕と向かい合い。
瀬戸会長は僕の机に備え付けられている椅子に座る。
結花は、ピアノの練習に普段使用している、電子キーボードの椅子に座る。
少し沈黙。
そして、重い口を僕は開いた。
「今日は、本当に、ごめんなさい。無様な所を見せてしまいました・・・・・。」
僕は4人に頭を下げる。
「顔をあげてよ。輝!!」
加奈子が、僕の背中に手を当ててくれる。
「今日は、ううん。私のために、入学してから、ここまで、頑張ってくれて、本当にありがとう。」
加奈子は途中から涙目になる。
「そうよ~。本当に頑張ったのは橋本君。あなたよ。」
瀬戸会長はそう言いながら、僕の顔を見る。優しい表情だ。
「ありがとうございます。」
僕はそう言いながら頭を下げる。
「本当に許せない。ここにいる人たちはハッシーを退学にさせた人を絶対に許せない。一緒に戦う。だから。いつでも相談していいんだよ。」
結花はそう言うとこちらを見てくる。
なぜだろう、普段のギャルっぽい見た目はどこへやら。何か懐かしさを感じる。
「でも、輝君と巡り会えて、本当に良かった。私たち、決めたんだよね。」
葉月は隣で僕の耳元で言う。
「みんな、準備はいい?」
葉月はお互いの顔を見る。お互いに頷きあう4人。
そして、瀬戸会長と結花が立ち上がり僕の方へと来る。
「えっと、今から、輝君を元気にするおまじないをするね。」
葉月は何だろうか。みんなの気持ちを代弁するように言った。
他の皆はその気持ちが先攻し、声が出せなそうな顔をしている。
かくいう、葉月も緊張している。
「へへへ。ハッシー、これなーんだ。」
結花は、ウィンクしたようにこちらを向いて、リモコンのようなものを見せる。
それは、この部屋の照明のリモコンだった。
「えっと、部屋の電気のリモコンだよね・・・・・・・。」
僕は応える。
結花はコクっと頷き。
「こんな目立つところに置いちゃだめだよ~。まあ、いいのだけどね。せーっの。」
結花はそのリモコンで、部屋の照明を全て消した。
そして、結花は、その照明のリモコンを部屋に投げ捨てる。
真っ暗な部屋に、ポン。という、照明のリモコンが落ちた音がした。
「ちょっと、結花さん・・・・・・。」
慌てて取りに行こうとするが、何だろう。4人に阻止されてしまう。
「大丈夫よ。橋本君。私たちを信じて。」
瀬戸会長が言った。
「輝・・・・・・・。お願い・・・・・・。ちょっとの間、我慢してて・・・・・・・。」
加奈子の声。とても緊張している。
コクっと頷く僕。
「輝君、目を閉じて、深呼吸して・・・・・。リラックス。リラックス。そう・・・・・。」
葉月は僕の耳元で、囁く。そして、深呼吸をする。
僕は葉月の言った通り、目を閉じ、葉月の呼吸に合わせる。
スーッ。ハーッ。
スーッ。ハーッ。
何回か、これを繰り返す。少し落ち着いたようだ。
「じゃあ。始めるよ。」
葉月が言った。
僕は言われるがまま、コクっと頷く。
「輝君が・・・・。」
「橋本君が・・・・・。」
「輝が・・・・・・。」
「ハッシーが・・・・。」
「「「「元気になりますように・・・・・・・。」」」」
両方の頬と額の左右に何か軽い感じ物もが押し当てられる。
何か安心感がある。
それと同時に、僕の鼓動が速くなる。
何だろう。その速い鼓動で抵抗して振り切ってもいいのかもしれないが。
そう、何かに身を任せるように、僕の身体を何かにゆだねる方がよっぽど落ち着く、ということを僕の心は言っている。
僕もそれを前から知っているようだった。
肩の力、腕の力、全ての力を抜いていく。何かに任せるかのように。
「ふふふ。」
瀬戸会長のかすかな声が聞こえる。それと同時に、両手を誰かの手が繋いでくれる。
この部屋には僕の他に4人しかいない。しかも全員が女性。いや、女子生徒。
女の子の手。何だろう。僕の手と少し違う。
「橋本君。だーれだ。」
瀬戸会長の声が横からする。
その声と同時に、僕の唇が何かで覆われる。
覆われた何かは分った。
でも、誰のだろう・・・・・・。瀬戸会長は確かに横で手を繋いでいる。
右手が離れる。しかし、明らかに今度は違う人の手が僕の右手を繋ぐ。
「ハッシー。今度はだーれだ。」
結花が得意げな口調で、僕に聞いてくる。
「・・・・。結花・・・・・・。さん。」
僕は静かにいう。
「手を繋いでいるのはね。でもこれはだーれだ。」
結花のニヤニヤした声が聞こえたと同時に、再び僕の唇は誰かの唇に覆われる。
先ほどの唇が覆われた時間よりもとても長い。
夢中で何かをしているようだ。
そして、次の瞬間、僕はとてもドキッとした。
舌を絡めている。抵抗は出来なかった。
僕も、舌を伸ばし、相手の舌に触れた。
お互いの唇から離れた僕。今度は左手が離れる。
だが、しかしすぐに左手がまた誰かにつながれる。
左の耳元から加奈子の声。
「輝・・・・。今度は誰だと思う。」
同じように唇が覆われ、舌を伸ばして、絡めてくる。
そうして、右手の結花の手が再び離れる。
そして、再び右手がすぐに繋がれ。
「輝君。最後の問題だよ~。だーれだ。」
右手を繋いでいるのは葉月。だけど・・・・・・・。
正面から再び、唇が覆われる。今度は舌を絡めず、数秒間止まった後、お互いの唇が離れる。
「はい。目を開けていいよ。」
葉月の声で目を開ける。
だが、部屋の照明は相変わらず暗く。まだどこに誰がいるのかわからない状況。
僕の右手には葉月の手。
左手には加奈子の手が相変わらず繋がれている。
そして。
「私たち、みーんな、輝君のことが好きになったの。だからお願い。誰を彼女にするか選んでほしいな♪」
葉月は僕の耳元で囁く。
「と、言ってもすぐに決められないでしょうから、高校にいる間は、4人で一緒に居ましょう。変わりばんこに日替わりでデートするとかでも全然いいから・・・・・・。」
瀬戸会長の声。
どうしよう。わかっていたけど、答えられない僕がいる。
「嬉しいです。僕も、みんなのこと好きです。」
「「「「よかった。」」」」
4人の小さな声がそろう。
「それじゃ、決まりね。ハッシーは自分に素直になって、楽しんでいいんだよ。前の学校で嫌なことがあった分、その権利は沢山あるんだからね。」
結花の声。少し涙ぐむ。
「輝。輝は特別だよ。」
加奈子の声が左の耳元で囁く。
「ありがとう。みんな。」
僕は少し涙ぐむ。
「ふふふ。じゃあ、もう一回目を閉じよっか。」
葉月の声で、僕は目を閉じて、こくりと頷く。
「じゃあ、もう一回ね。だーれだ。」
葉月が再び囁く。再び僕の唇が誰かの唇で覆われる。
それを繰り返す度、両手も誰かの手が交代でつながれる。
何回か繰り返してだろうか。
結花の手が右手に再び繋がれる。
「だんだん熱くなって来ない?ハッシーそういえばずっと、ピアノの衣装のままだよね。ワイシャツ着て、ネクタイして。」
言われてみればそうだ。さっきから何かは分らないが、体がとても熱い。
今まで、何かに身を任せていたから本当に体の感覚が鈍かった。
誰かの手が、僕の額と、首元、そして、背中を優しくなでてくれる。
「ほんとだ、汗びっしょり。」
撫でてくれたのは葉月だった。
「輝君。もう一回、深呼吸しようか。目、閉じているよね?」
葉月の声がする。
僕はこくりと頷く。
「うん。ずっと閉じててね。」
誰かの手によって、ネクタイが外される。
そして、ワイシャツのボタンが一つ、一つと、外されていく。そして、ワイシャツを脱がされ、上半身は下着一枚になる。
抵抗することを試みたが、手がぎゅっと繋がれている。
それに、ここも、流れに身を任せていたいと、心が言っている。
「輝君、ピアノ弾くから、指、すごくきれい。」
葉月の声がする。
「ほんとだ。これで私を、一位にしてくれたんだよね。」
加奈子の声。
双方の手首を持たれ、両手一本一本の指が、葉月、加奈子の口の中へ。
そして。
「輝君、もう一回ね。だーれだ。」
葉月の声。唇が覆われる。と思ったら・・・・・・。
顔が覆われる。何か柔らかいもので。
何だろう・・・・・。僕は思ったが。
葉月と加奈子が僕の両手を顔を覆っていたそれに触らせる。
やわらかい。そして、何かわかったと同時に、脳みそがとろけてしまう。
はあ、はあと聞こえる、瀬戸会長の吐息。
「どう?橋本君。Gカップあるよ。」
瀬戸会長が聞く。
何も答えられず、喉を鳴らす僕。
「答えが分かったところで、目を開けていいよ。」
葉月の声に従って、目を開く。
部屋の照明は相変わらず暗い。
だが、目が慣れてきている。
みんな全員、さっきより体のシルエットがはっきりしている。
それは目が慣れてきただけではないようだ。
全員、上半身が裸だった。そして、着ている服は最後の一枚のみ。
「どうかな?輝君。」
「とても、綺麗です。その、わからない、何かなんだか。」
加奈子を除いて、瀬戸会長は勿論、葉月も、結花も、おそらく女性の平均値以上ある胸のふくらみが目立つ。
そして、加奈子は。そこだけは他の3人より小さく、恥ずかしそうな顔をしていることが分かったが、バレリーナなのだろう。加奈子のシルエットだけはっきり、綺麗な線がそこにはあった。
そして、加奈子の着ている最後の一枚も、他の3人より面積が大分小さくて、ドキドキする。
「それじゃあ、ハッシーも。」
結花はそう言って、両手を伸ばし僕をベッドに押し倒す。
そして、ズボンのベルトを外して、一気に下ろした。
「ふふふ。橋本君もとても男の子らしい体ね。」
瀬戸会長が僕に向かって言う。
「でも、一か所、パンパンに張ってそうなところがあるね。」
葉月がどきどきしながら恥ずかしそうに言う。
「ホントだ。加奈子会長。どうすればいいですかね~。」
結花は少しニヤニヤした声で言う。
加奈子が僕の隣に寝そべってくる。加奈子の身体はこれ以上ないくらい熱い。
「ねえ・・・・・・・・。輝・・・・・・・・・・。その・・・・・・・・・。」
耳元で加奈子はとても恥ずかしそうに言っている。
それを見ていた葉月がつかさず、もう片方の隣に寝そべって反対側の耳元で囁く。
「パンパンなところ・・・・・・・・・。スッキリしてみない・・・・・・・・・・。」
僕の鼓動も早くなる。
夢を見ているのだろうか。
ごくッと喉を鳴らす。
もう、わからない。流れに、全ては心の赴くままに。この身を任せるしかなかった。
答えは分っていた。
だが同時に、4人全員、傷つけてしまうのが怖かった。
「大丈夫・・・・・・。輝の今抱えている心の傷より・・・・・・。痛く・・・・・。無いから・・・・・。全部・・・・。」
加奈子の言葉。僕の一番、聞きたい言葉のように思えた。
僕は、夢の中にいるのだろう。
緊張していた。心臓の音が聞こえる。
僕は、ゆっくり、ゆっくり、首を縦に振った。
最後まで、ご覧いただきありがとうございます。
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