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24.バレエの仕上げ


 夕方近くになり、新生徒会の初日の業務を終える。

 「今日はこれで解散にしましょう。加奈子も輝君もバレエに行かないとだよね。」

 葉月は言った。


 「そう、だね。コンクールの決勝も近いし。」

 加奈子はそう言いながら資料を片付け始める。

 

 「そうだよね。二人とも、生徒会選挙も、中間試験も片付いたし、ここから一気に仕上げをやるんだよね。」

 葉月の言葉に頷く、僕と加奈子。


 「え?待って待って。ハッシー、バレエなんてやっているの?あれだよね。ターラララララーララー、とか言いながら踊るやつだよね。」

 結花は白鳥の湖の有名な主題を口ずさみ、目の色を変えて、驚いた表情をする。


 「マジっすか?上司ぃ。上司って、本当は女の人だったんすか~。俺もそれ見たことあります。女の人しかいない奴ですよね。」

 義信はそう言いながら、驚いている。


 「違うよ!!」

 加奈子は今日いちばんの大声を出す。

 それに驚く、結花と義信。


 「おっ、加奈子ちゃん覚醒ね。」

 瀬戸会長は言った。


 「実際に踊るのは私。輝はね。輝はね・・・・・・。」

 だんだんと声のトーンが高くなる。


 「その、ターラララララーララー、ラ―という音楽をピアノで演奏してくれる人なの。本当にすーっごく、ピアノ上手いんだよ。あと、バレエは女の子の方が当然多いけど、男の子のバレエダンサーもいるのよ。そういう人はね、すっごくシュッとしてて~。とにかく、輝は本当にピアノがすごく上手くて。私が出るバレエのコンクールで、伴奏をしてくれるの。」

 ここまで、一息で言う加奈子。興奮冷めやらぬ状態だ。


 「マジぃ?ハッシー、ピアノ弾けるの?すごいじゃん。何で言わないの?」

 結花はさらに驚きの表情を見せる。


 「そうなんすか。いや~、ピアノっすか。ますます尊敬しますよ。上司!!」

 義信も興奮冷めやらぬ状態だ。


 「いやいや、結花さんや、磯部君、だって、何か特技があるはずだよ。むしろその風格からすると、二人とも中学時代は運動部でした、という感じがするんだけど、僕はそっちの方がうらやましいというか。」

 僕はそう言いながら少し遠慮がちに言う。


 「全然♪。一応、中学まではソフトテニス部だったけど。人に誘われて入って、やる気が起きず、最終的にはいろーんな部活に助っ人で入ったって感じ。」

 結花が言う。


 「おお、鋭いっすね。上司!!そうっす。オイラ、ラグビー部でした。で、俺のことは名前で呼んでいいですよ。」

 義信が言った。


 なるほど。二人とも、まさに中学の部活が二人の正確に反映されていた。


 「やっぱり、僕はそっちの方がうらやましい。」

 僕はそう言いながら、少し暗い表情になる。

 いや、文化部でも多少運動できる方が絶対いい。そうすれば安久尾のような輩に絡まれないのに・・・・。


 「どうしたんすか、上司。」

 義信が聞いてくる、少し暗くなった僕に対して、心配そうに見つめる。


 「ああ、すみません。うらやましく思っただけです。僕は僕で、頑張ります。」

 僕はそう言いながら、皆と同じように資料を片付け、帰り支度を始める。


 「そうね。みんな違ってみんないい。私も加奈子ちゃんや文化部の人達と出会って、うらやましく思ったけど。私はやっぱり、バレーボール部や生徒会で活動する方がいい。二人も生徒会がそんな場所になってくれると嬉しいかな。」

 瀬戸会長はそう言いながら、笑顔になる。


 「「はい。」」

 結花と、義信は、瀬戸会長の言葉に頷く。


 「にしても、会長って、バレエの話をすると、とても明るくなるんですね。普段もそっちの方がいいっすよ~。」

 義信がニヤニヤ笑いながら言う。

 「あー、それ、私も思いました~。」

 結花が笑う。


 「そうね。加奈子ちゃん、もうちょっと、笑顔で行ってみようね。」

 瀬戸会長がニコニコしながら、加奈子に言う。


 「はい。」

 瀬戸会長に逆らえない加奈子。


 「さあ、それじゃあ。また明日。」

 「そうね、また明日にしましょう。そして、よかったら、コンクールの決勝。北條さんも磯部君も、一緒に見に行かない?私も、葉月ちゃんも行くんだけど。」

 相変わらず、てへぺろ~。というような表情で、提案してくる、瀬戸会長。

 その提案に、結花と義信の表情が緩む。


 「「え?いいんですか?」いいんすか?」


 「「もちろん♪」」

 瀬戸会長と葉月は声をそろえて言った。


 「来ていいよね。橋本君、加奈子ちゃん。」

 瀬戸会長はそう言うと。

 僕と加奈子は頷く。


 「ふふふ。決まりね。」

 瀬戸会長が優しくウィンクする。




 そうして、今日の仕事を片付け、バレエスタジオに向かう。


 「ヨッ。少年。成績すごくよかったんだってな。」

 バレエスタジオの講師、原田裕子はそう言って、僕の肩を叩く。


 「プリンシパルと専属ピアニストは、生徒会長にして、成績10番以内。これはいい宣伝になるな。絶対。」

 原田はそう言いながら、今日も張り切って、レッスン室に僕たちを案内した。


 加奈子は練習着である、レオタードに着替え、準備運動の柔軟を始める。僕はその間にピアノを準備する。

 何度も行っている作業。だが、終始無言だった。


 「それじゃ、早速合わせてみるか。」

 原田の言葉に反応して、僕たちは課題曲と、自由曲を合わせていく。


 決勝の課題曲は、ショパンの『マズルカOp33-2』。

 自由曲は予選に引き続いて、『ワルツOp42「大円舞曲」』だ。


 やはり、さすがの加奈子も、ここ数日は生徒会選挙と、中間試験に本腰を入れていたのだろう。

 動きが前回合わせたときよりも、格段に良くなっている。


 「ヨシッ。やっぱり完璧なプリンシパルでも、さすがに生徒会長選挙と中間試験に力を入れていたようだな。それが終わって再びコンクールの決勝一本になると全然動きが違う。いや、さらに良くなったという感じだな。それは、少年。お前にも当てはまるぞ。今日はこのまま仕上げて行って、それでコンクールに臨みますか。」


 原田は、そういいながら、加奈子の細かい動きを指摘しながら、確認していく。

 メモを取る加奈子。


 「少年は、テンポ落とさず、そのままでいいからな。細かい動きの確認などで、こちらで指示しない限り、いつものテンポで頼むぞ。」

 原田はそう言いながら僕に指示する。


 そのような動作を行いながら、僕たちはコンクールの決勝に向けて最後の仕上げと、最後の調整を行った。


 生徒会選挙が終わり、中間試験が終わり、短い期間ではあるが、再び集中して、バレエコンクールの決勝に備えていくことになった。


 生徒会の仕事をして、バレエスタジオのいつもの放課後のルーティーンに戻り、すっかりそれになれた僕。

 本当にすぐに、5月の最終週、そして、週末はもう6月という時期を迎えた。

 そう、この週末にバレエコンクールの決勝が行われる。


 「ヨシッ。完全に仕上がって、行けそうだな。緊張せずに行こうぜ!!加奈子ちゃんも少年も、絶対いいパフォーマンスができるぞ!!」

 原田はそう言いながら、コンクールの決勝で披露するバレエの全体通しの練習を終えると、笑顔で話していた。


 「決勝ということで、今回は事前に披露する場所は無いのだが、二人なら緊張せずに出来ると信じているからな!!」

 原田はそう言いながら、今日のレッスン。つまり、コンクールの決勝前最後のレッスンを終えた。


 「輝。」

 改めて、加奈子は僕に向かって言う。その瞳は本当にキラキラした、小さな瞳だった。

 「本当にありがとう。本当はもっと、輝と踊りたい。だから、決勝で優勝して。その後は・・・・・・・。」


 その後は・・・・・・。全国大会とかが待っているのかな。


 「全国大会ですか?」

 僕は少し戸惑う。勿論音楽をやっている人にとっては、どんな小さな大会でも、より上位の大会に出場できればとてもうれしい。

しかし、もしかしたら、安久尾や前に通っていた反町高校の人に会うかもしれない。そういう意味で戸惑った。

そうなったら・・・・・・・・。


 「輝。どうしたの?」

 加奈子は僕の目を見つめてくる。


 こんなに素敵な人が居る。それならば・・・・・・・・・。たとえ、誰かに何を言われても平気だと思う。


 「ごめんなさい。何でもないです。僕ももっと加奈子先輩となら一緒にバレエで踊って、ピアノを弾いてもいいかなと思いました。だから、行ってみたいです。よりレベルの高いコンクールに。それこそ、このコンクールに全国大会があるのなら、その大会に。」


 僕は、大きな声で言った。加奈子と同じく、真剣なまなざしに表情を変えて。


 「そうだよね。一緒に、頑張ろうね!!」

 加奈子は頷く。


 そうして、僕たちは原田に見送られながら、バレエスタジオを後にした。


 コンクール決勝、絶対勝つぞ!!



最後まで、ご覧いただきありがとうございます。

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●現在執筆中の別作品もよろしければご覧ください。

 1.忍者翔太朗物語~優秀な双子の兄だけを溺愛する両親のもとで奴隷のような生活をして育った忍者のお話~URLはこちら↓

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