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22.選挙の結果、そして・・・・・。


 演説会終了後、投票用紙が配布される。

 当然、僕は【井野加奈子】と投票用紙に記入する。


 選挙管理委員が集めて、回収する。

 あとは開票作業を待つのみ。


 1回目の投票。全体の過半数を取れれば、そのまま当選。

 過半数に満たなければ、後日、決選投票となる。


 長い放課後だった。

 「開票はその日のうちにわかるよ。ドキドキするけれど見に行きましょう。」

 瀬戸会長の提案で、その日の放課後は開票を待つことにした。


 手ごたえとしては十分にあり得る話だった。

 あとは運動部などの、結束が強い部活に所属している、他の候補者との組織票との戦いだが、候補者が何人かいるため、組織票は上手く分裂しているようだ。

 それにバレーボール部は、瀬戸会長の推薦もあってか、加奈子に流れる。

 そういう意味では加奈子もすでに組織票は獲得している。


 「どうでしょうか。」

 僕は瀬戸会長や葉月に聞いてみる。


 「大丈夫だと思うよ。そしてすごくよかったもん。輝君のスピーチ。」

 葉月は笑顔で言う。

 「そうね。あのスピーチで、1年生の票もこっちに来るはずよ。すごくよかったよ。」

 瀬戸会長は言った。


 「本当にありがとう。輝。おかげで私も緊張せずに出来た。助かったよ。」

 加奈子はそう言いながら、バレエの発表会の後のような表情でやり遂げたような顔をしていた。


 「それでも加奈子ちゃんは緊張しているね。これをやりながら待ちましょう。」

 そういって、瀬戸会長はトランプを取り出す。


 僕たちは瀬戸会長の持ってきたトランプをやりながら、この長い時間を待っていた。

 結果は、明日になればわかる話で、別に明日の朝確認するのでもよかったのだが。


 「明日の朝一で確認するのはなんかキツくない。」

 と葉月が言う。

 「そうね。当選できた場合は、まあいいとして、落選したら結構、嫌なテンションで明日一日を過ごすことになるのよ。それは輝君と加奈子ちゃんが一番わかっているんじゃない?ピアノのコンクールとか、バレエのコンクールとか実際そうでしょ。」

 瀬戸会長が的を射たかのように指摘する。


 確かにそうだ。

 コンクールで予選落ちして、その悔しさを抱えたまま、丸一日過ごすのは流石に、精神的にきつい。

 コンクール終了後の、一日の夕方に結果を確認が出て、一晩眠って、次勝つために進む作業をやる。これの繰り返しだ。


 僕は加奈子の顔を見る。

 瀬戸会長の指摘に、お互い深く頷く。

 どうやら、メンタルのコントロールの仕方は同じなようだ。


 そして、瀬戸会長のバレーボール部も、かなりの長距離遠征でなければ、負けた試合の後は現地解散して、お互いまっすぐ家に帰るという。

 というより、勝った試合の後もそうしているのだという。


 確かに、後日振り返りや反省をする方が客観的に見れてやりやすいのかもしれない。


 瀬戸会長の方を見る。

 【そうでしょ。】

 というような顔をしている。


 「でも、こうして過ごしていると、橋本君や加奈子ちゃんの気持ちが少しわかる気がするわ。」

 瀬戸会長はトランプのカードを切りながら、笑顔を見せる。

 「そうだね。私もわかる気がする。」

 葉月もそれに続く。


 「試合だとすぐに結果が分かるけれど。こういう時は待つときの方が緊張するわね。」

 瀬戸会長はそう言いながらカードを配る。


 「まあ。なれますよ。」

 僕はそう言いながら、配られたトランプのカードを見る。

 そして、加奈子の顔を見る。

 加奈子も頷いているようだ。



 そうして、トランプのゲームをいくつかやっていると、時間はあっという間に過ぎて行った。


 「そろそろよね。見に行きましょうか。」

 瀬戸会長に言われて、僕たちは席を立つ。


 廊下の掲示板。

 そこには、張り出されたばかりの真新しい紙が張り出されていた。

 そして、何か赤いものが一つ突き出ている。



 その突き出た赤いものの正体はその紙の正面に来てみて判った。

 それは、赤いバラを催した、造花だった。


 その造花の横にこう記されていた。

 【2年C組、井野加奈子、511票】。

 花園学園の全校生徒は850人前後で毎年推移している。したがって、過半数の目安はだいたい、420から、450票前後。450票取れれば、確実に当選となる。候補者は、全員がそこを目標にしている。


 ということは。

 511票ということで、1回目の投票で見事過半数以上を獲得し。加奈子は生徒会長に当選したのだった。


 「やったー!!」

 葉月が大きな声で言う。

 「おめでとう、加奈子ちゃん!!」

 瀬戸会長、つまりこの瞬間から、瀬戸“元”会長はそういいながら笑っていた。

 だが、温かく迎えてくれたのには変わりはないので、僕の中では瀬戸会長だ。


 「あ、ありがとうございます。」

 加奈子は棒読みの状態の反応だったが、それもまた加奈子の性格。

 表情はとても嬉しそうだ。


 「ほら、輝君も何か。声をかけてよ。」

 葉月はそう言いながら、


 「あ、あの、本当におめでとうございます。」

 僕も棒読み状態だった。


 「輝、本当にありがとう。」

 加奈子は僕の両手を強く握ってくれた。


 喜びを噛みしめる僕たち。だが、以外にすぐに現実に戻される時間がやってきた。


 「おーい。君たち。」

 振り返ると、僕の担任の佐藤恵子が立っている。


 「騒がしいと思って見に来たが、今回の2人の主役の登場だな。1人は勿論、井野さん。そして、もう一人は・・・・・。お前だ。橋本。」

 佐藤先生は僕の肩をポンと叩く。


 「スピーチ、本当によくやった。おそらく、お前のスピーチが良くて、1年生の多くが井野さんの票に流れたのだろうな。」

 佐藤先生は頷く。


 「水を差すようで悪いが、中間試験、頑張れよ。井野さんの部下として、恥ずかしくないように。そして、お前たちも、生徒会役員として恥ずかしくないような得点を取ってくれよ。井野さんの任期はその中間試験が終わってからだからな。はい。解散。」

 そういって、佐藤先生は去っていった。


 「そうね。中間試験よね。」

 瀬戸会長は何やら、ズーンと来たような感じだった。

 「私も・・・・。」

 葉月も何やら、気が重くなっていた。


 「まあ、輝君と、加奈子なら大丈夫だよね。私たちの分まで。」

 「うん。うん。そうよね~。」

 葉月と瀬戸会長は深々と頷いていた。




 そうして、2日後。中間試験が始まった。

 生徒会メンバーと加奈子でやった勉強会。

 それに、思い出したくはないが、前の学校でやっていた内容と一緒だったため。手ごたえはあった。


 生徒会の選挙、バレエの発表会。

 とても忙しくて、勉強に割ける時間がなかったのも事実だが、それでもベストを尽くした。


 そして、テストが返却される。

 担任の佐藤先生の教科は英語なので、英語のテストを返却するのだが。

 「なんだ。水を差さなくてもよかったな。」

 そういいながら、答案を渡してくれた。

 満点ではなかったが、数問間違えたくらいの得点であった。

 流石に、教科書範囲以外の演習問題も含まれており、そういったときの、長文読解時は知らない単語も出くわすときがあるので。間違えた原因はほぼそれに当たるのだが。

 「まあ、ここはほぼできないさ。故に一年次の最初のテストの平均点は低く出る。次も同じような演習問題を出すから、勉強して慣れて行ってくれ。そうしていくうちに平均点は上がっていき、受験や模試に対応できるという仕組みだからな。」

 佐藤先生はそう言いながら、テストの答え合わせと解説を行っていた。


 そうして、他の教科の答案も返却される。

 やはり一度やっているというところが功を奏したのか、数学と地理は満点で返却された。


 それもあって、毎回の定期テストの度に、掲示板に上位10名が張り出されるのだが。その10名の中に僕が含まれていた。



 「ハッシー、凄いじゃん。やっぱり東京の方の学校はきっとガチガチにやりこんでいたんだよね~」

 クラスメイトの結花はそう言いながら笑っていた。


 「ま、まあね。」

 もちろん、生徒会メンバーにも、僕の素性は話していないので。結花にも当然話していない。

 僕は、少し照れながら、結花の話に笑っていた。


 この日の放課後から、加奈子を生徒会長とする、新しい生徒会が始まる。

 少しドキドキ、ワクワクしながら、僕はこの日の授業を終えて、生徒会室に向かったのだった。

 


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●現在執筆中の別作品もよろしければご覧ください。

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