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120/120

120.早織のお店で~Final~

全120話。今回で最終回となります。


 【森の定食屋】。八木原早織が経営しているお店。

 僕も、このお店の新メニューを開発したことがある。その時が懐かしい。


 生徒会のメンバー、葉月、加奈子、史奈と出会い。クラスメイト、結花と早織と出会い。コーラス部で心音と風歌。さらには、幼馴染、マユとの再会。

 すべてが詰まった雲雀川の地。


 【森の定食屋】にはテラス席がいくつか用意され、そのテラス席の先には、綺麗な庭があって、いろいろな花が施されている。


 「ここで結婚式をする人もいるの。」

 早織の言葉を思い出す。素敵なガーデンウェディングが出来そうで、事実、結婚の雑誌でも紹介されるほど。


 その早織のお店の2階部分に僕は居た。

 白いタキシードを着て。


 呼吸がだんだんと荒くなってくるのが自分でもわかる。

 こういう衣装はピアノの演奏会でも、とうてい着ないだろう。


 「・・・・輝。」

 加奈子の声。

 僕は振り返る。


 「お待たせ、輝。」

 ウェディングドレスに身を包んだ、加奈子。

 細身のマーメイドドレスと呼ばれていて。加奈子にぴったり。


 結婚式が行われる。そう。

 僕と加奈子は、お互い、ピアノとバレエで惹かれ合い・・・・・。


 「ありがとう。輝。私で、本当に良かったの?」

 僕は頷く。

 今さら何を言っているの?


 「私は、あなたが高校時代、一緒に居た他の人より・・・・・・。」

 加奈子はその言葉を言い、少し戸惑いながらも、両手で、両方の胸を押さえて、その両手は大きく半球を描いた。


 「はははっ、確かにそうかもしれない、でも。」


 「でも・・・・・?」

 加奈子は食い入るように僕を見つめる。


 「このドレスは他の誰より加奈子が似合ってる。その・・・・・。」

 僕も恥ずかしがりそうに、両手で、縦の線を描く。

 バレエを小さいころから習っていて、今も、プロのバレエ団で活躍する加奈子。綺麗な体のライン。わかっただろうか。


 「ふふふっ、ありがと、輝。」

 加奈子はそう言ってにっこり笑った。


 「さあ、行こうか。皆待ってる。」

 僕は手を伸ばし、加奈子と手を繋ごうとするが・・・・・。



 「ちょーっと待った!!」

 階段を勢いよく駆け上がる葉月。


 そして驚く僕と加奈子。

 なぜなら、葉月は光り輝く純白のウェディングドレスを着ている。そのドレスは綺麗な刺繍が施されて・・・・・。

 「輝君。私と約束したよね。結婚しようって。今からでも遅くないよ!!パパからも許可もらってる!!」

 葉月はニコニコ笑っている。


 「あらあら、そうはいかないわ、葉月ちゃん、加奈子ちゃん。」

 階段を駆け上がってきたのは葉月だけではなかった。葉月の後ろに史奈が大人びたように上がって来た。


 そして史奈も、肩の部分が露出し、胸の谷間を覗かせた、白地のウェディングドレスを着ていた。

 「私だって、本気よ~。ねえ、このまま、私と式、乗っ取っちゃおうかしら。」

 史奈はニコニコしてウィンクしている。


 「ちょっと待って。」

 史奈が手を差し出してきた瞬間、別の声。だけど、その声は、加奈子でも葉月でもなく。


 「ハッシー、私とこのまま式しちゃおう!!」

 結花が勢いよく、階段を登って来た、彼女もまたウェディングドレスで、綺麗なアクセサリーが施されている。


 「ひ、輝君。ここは、私のお店よ、私が主役!!」

 結花のその後に、早織が一気に声をあげてやってくる。

 早織もウェディングドレス。そして。


 「にへへっ、ご、ごめん、輝君、やっぱ、勇気でなくて、仕度してて、遅くなった。」

 風歌も階段を上がって、僕たちの控室にやって来た。

 当然、風歌もウェディングドレス。

 早織と風歌のウェディングドレスは、とてもシンプル。

 だけど、風歌は若干ピンク地の生地だろうか。


 「あーっ、抜け駆けずるい!!ひかるん、わたしと一緒だよね。」

 同じような感じで、マユも階段を駆け上がってやって来た。


 「ねぇ、結婚するなら私とだよね。」

 「まって、ハッシーは絶対渡さない!!」

 「輝君は私のものだもん!!」

 そうして取り合いになるが。


「残念ね、結花。」

 その声にピンと反応する僕たち。

 なんと、そこに居たのは心音だった。

 結花と同じ、アクセサリーを多く施されたウェディングドレスを着ていたが、結花とは違い青地。


 「いえいえ、橋本さん、私とはどうですか?」

 そして、その輪の中に藤代さんも入ってくる。彼女は、うん。白無垢で角隠しまで被っている。


 「輝君!!お待たせ!!」

 元気な声が飛び交ってくる。


 「あ、あの、妹をよろしくお願いします!!」

 どさくさに紛れて、赤城兄妹の双子の兄、隼人が頭を下げる。


 双子の妹の未来もウェディングドレスを着ている。だが、声はとても元気な声。

 おそらく、何かのキャラクターが来ていたウェディングドレスに似せた物で、ドレスのデザインも彼女たちが作ったのだろう。よくできている。


 って、感心している場合ではない。

 僕は、一体、何人の、『何等分・・・・・・』おっと行けない行けない。ゴホンッ。何人の花嫁と取り合いになっているのだろうか。


 「良いすね、大統領!!ウハウハで最高っすね。」

 参列してくれて様子を見ていた義信は、僕に笑いながら声をかける。


 「違う、違う、ここは結婚式で、僕のパートナーは、当然1人だけで、そのパートナーは・・・・・・・・・・。」




 「うわぁっ!!」

 「ぜぇ、ぜぇ、はぁっ、はぁっ・・・・・・・。」

 見慣れた天井。伯父の農家の離屋の天井。

 服は何も生まれたままの姿の僕。


 「さ、さむいっ。」

 そのせいか、一気に体が冷え込む。11月の中旬の週末。季節はいよいよ冬へ向かう。

 北関東のこの場所は内陸に近く、冬場は一気に冷え込む。もう、そんな時期だろう。


 「・・・・・輝君、今日もありがとう。」

 葉月のすやすやとした寝顔。

 「輝・・・・。」

 加奈子の寝言、つぶやき。

 結花、史奈、風歌、早織、そして、マユ。

 加奈子とマユ以外の胸は大きく上下して再びドキドキしてしまう。

 加奈子とマユは、他のメンバーと比べて、胸のふくらみが小さいが、加奈子はバレエ、マユは陸上ということもあり、その分体のラインがはっきりしていて・・・・・。


 皆、全員、生まれたままの姿ですやすやと眠っている。

 さすがに、大分時間がたったので、体が冷え込むだろうと思い、暖房のスイッチを入れる。

もう、そんな時期だ。


 結婚式の一幕は夢だった。ある意味、夢で安心する僕。


 ここの週末を迎えるまでは長かった。

 マスコミの対応は学校の取材で、市長と理事長のフォローもあって、完了したが、それでもマスコミの人、週刊誌の人達が訪問してくることもあって、簡単ではあったがお話をした。

 バレエ教室でも話題が持ちきりになり、心配してくれた人への謝罪とお礼をする。

 勿論、花園学園でそれぞれ心配してくれたメンバーにも。


 そして、マユの方にも取材が来たらしく。

 「ちょっと大変だったぁ~。」

 とマユが疲れた顔で話し、時には一緒に取材を受けて、お互いにフォローし合ったのだった。

 といっても、マユにフォローされっぱなしの僕だったが。


 そうこうしているうちに、実家、つまり、僕の父と母から郵便物を転送してもらう。

 僕あての郵便物で、送り主は、反町高校の新理事長。

 そこには謝罪の手紙と、必要があれば高卒認定試験のフォローと認定が取れ次第、高校の卒業証書の授与、もしくは来春より統合された高校での無条件での入学許可、大学の受験フォローなどが丁寧に書かれていた。


 どうやら、過去の年度を遡れば、僕以外にも被害に遭った生徒がいるらしい。

 その方々全員含め、一斉にフォローしますというような内容だった。


 「どうする?輝。」

 実際に両親から電話もかかってきたが。


 「ううん。再入学する必要はないし、受験や高卒認定のフォローも必要ないよ。僕はもう、花園学園に転入しているし、そこで素敵な友達に出会ったから。」

 と、丁重にフォローを断った。


 そして、この11月中旬を迎えたのだった。

 夢から覚め、だんだんと思い出して来るこの週末の出来事。


 この週末は、ピアノコンクールの全国コンクールが行われ、机の上には3枚賞状が置かれていた。

 【連弾部門、銅賞3位 橋本輝、緑風歌】

 【個人部門、5位入賞 橋本輝】

 【個人部門、7位入賞 緑風歌】

 あとは同じような文章が続く。


 「おめでとう。輝。」

 「輝君、おめでとう!!」

 皆から祝福され、僕はお礼を言った。

 勿論、ここまで、導いてくれた、原田と茂木、藤田先生、岩島先生に深々と頭を下げて。


 「輝君、おめでとう。そして、お帰りなさい!!ピアノの世界に輝君がもどってきてくれて、嬉しい!!」

 風歌はこれまでにない喜びを爆発させていた。

 そう、再びみんなのおかげで、戻って来た、僕が好きだったこの世界に。戻ってくることができた。


 今年は、今の状況を把握するために出場した経緯がある。

 次は金賞1位を目指して、頑張ってみたい、いや、それが駄目でも、もっと他の分野でも音楽にかかわってみたい。そう思った自分がたしかに居た。


 そうして、祝福の中、コンクールからの帰路、原田のワンボックスカーに乗り込んで、生徒会メンバーともども、ここまで送ってもらい、伯父、伯母が畑の野菜を大量に用いてたくさん料理を作り、早織もそれを手伝い、小さな祝勝会をやったのだった。


 花園学園に入学して、半年強。本当に素敵な仲間、友達。そして、恋人たちに出会った。

 ここまでの期間、本当にいろいろなことがあった、密度の濃い、1年だった。

 改めて、机に置かれている賞状を見る。


 夢の中のように、最後には1人に選ばないといけない。でも。

 まだ、良いんだよね。このメンバーと一緒に居て許されるんだよね。少なくとも、高校にいる間は。


 そう思いながら胸に手を当てる僕。

 誰を選ぶことになっても、ここに居るメンバー1人1人に感謝しないといけないな。


 楽しい思い出をくれた。再び走り出す勇気をくれた。そして、安久尾建設の魔の手からすくってくれた。


 「ありがとう。みんな。」

 僕は皆の方を向いて、静かにつぶやく。


 再びベッドに入って寝息を立てる僕。


 明日も朝日が昇る。


 そして、朝日が昇って、皆とおはようのキスを交わす。


 僕たちはここから皆と一緒に、学校へ登校して行くのだった。



――――――完!!そして、ありがとう!!――――――――――


皆様、本当に最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!!

今まで、投げやりで途中で止まってしまう小説しかありませんでしたが、今回は、無事に、追放した側(安久尾建設)のざまぁ部分を迎え、ピアノコンクール含め、輝君の高校一年次の生活、無事にハッピーエンドを迎えることができました。


最後のお願いです。ブックマーク登録と高評価、いいねをお願いいたします。

評価は一番下の【☆☆☆☆☆】マークからできます!!


本当に、皆さんのリアクションが励みになりました。ありがとうございました。


●今後は下記の新規連載小説を更新しつつ、こちらの『ピアノ少年』の方は誤字脱字、表現などの修正を実施します。

 ・フィルドランド王国の設立日誌~殉職して転生した警察官の士官学校創設、運営日記~

  ⇒https://ncode.syosetu.com/n4010ik/

  ※異世界転生ファンタジーです。


 そして、作品を書いているうちに、恋愛系、特に現実世界、もしくは音楽のジャンルを取り入れたものが好きということが分かったので、どこかで、恋愛系の小説(この小説の続編を書くか、別でもう一つ用意するか。どちらもアイディアだけは思いついてます。)をまた投稿して行きます。その時は、後書きか活動報告でお知らせします。

 これからもどうぞよろしくお願いいたします。



●更新が滞っていますが、こちらの作品もよろしければご覧ください。

 1.忍者翔太朗物語~優秀な双子の兄だけを溺愛する両親のもとで奴隷のような生活をして育った忍者のお話~URLはこちら↓

 https://ncode.syosetu.com/n1995hi/


 2.元女子魔道学院に異世界転生した男子の僕が入学するとどうなるのか?

 https://ncode.syosetu.com/n7938ht/

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