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119.放課後にて


 僕が学校に登校して、クラスに入ると、昨日の衆議院議員選挙の話題でもちきりだった。


 衆議院議員選挙は僕たちの住んでいる地域では大波乱の結果に終わり、その理由に僕がかかわっていたのだった。

 メディアでは、匿名で報じられたし、どうやら安久尾と反町の犠牲者は、僕とマユ以外にも居たようだったが、心音や結花のSNS。赤城兄妹のYouTube。

 そして、加奈子の父親に、車で送ってもらったが、やはり校門の前にもマスコミが待機していたので、クラスメイトや学校のメンバーは知ることになった。


 「おはよう、橋本君。いろいろ大変だったね。」

 「ごめんね、もっと私たちが力になってあげれば。」

 そんな声が、沢山聴かれたが。


 「あ、ありがとう。で、でも僕は大丈夫。生徒会の皆と仲良くやれたから・・・・。」

 と、僕は少し微笑む。

 するとどうだろうか。

 なぜかわからないが、目に涙が流れる。


 それを見逃さなかったクラスメイト達。

 さらに慰め、甘やかしてくれるのだった。


 「ハッシー、お疲れ様。私もいろいろと大変だったけど、今、ハッシーを見て、すごく、せいせいしている気分。敵をぶっ飛ばしたから。」

 結花が駆け寄って抱きしめてくれる。


 「ひ、輝君、本当に、良かったね。」

 同じクラスメイトの早織。昨日から一緒に居てくれて、事の顛末は分っていた。

 早織も、僕に駆け寄り、握手をする。


 「ありがとう。結花、早織。2人が、生徒会に入ってくれたから・・・・・。」 


 「「うんっ。」」

 結花と早織はにこにこと笑っている。


 僕のことが心配だったからだろうか。

 クラスを飛び越え、葉月、加奈子、史奈、そして、義信、赤城兄妹、さらには心音と風歌までやってきたのだった。


 みんな心配していてくれたのだった。


 「良かったわ、選挙が無事に終わって、上手く仕掛けが作動しないか、心配していたのよ。」

 「輝君、安久尾たちにぎゃふんと言わせられて本当に良かったね。」

 葉月と史奈がニコニコ笑っている。


 他のメンバーも同じだった。


 今日一日はそんな日が続く。


 一日が流れていくたびに、ネットのニュースや、大手のニュースサイトからは次々と、安久尾と反町たちの不祥事が明らかになっていく。


 【安久尾建設社長、安久尾竜次氏(安久尾元衆議院議員の弟)、収賄で逮捕へ】

 【反町高校、理事長逮捕、来年度より、反町高校は統合へ】

 【安久尾氏長男、万引き、わいせつなどで書類送検、逮捕へ】


 時間が進んでいくたび、安久尾と反町の悪事が詳細に明らかになって行く。


 そして放課後、理事長室。

 僕は理事長の慎一(葉月の父親)、雲雀川市長の宏司(加奈子の父親)と一緒に、マスコミの人達の取材に応じた。


 今朝はいきなりの登場でびっくりしたが、僕が被害者側の人間であるという理解を示してくれたのか、僕に寄り添ってくれる形で話が進んだ。

 今の、今まで、安久尾にされてきたこと、この高校に来た経緯。そんなことを話した。

 多少突っ込んだ質問もあり、高校生の僕では、上手く言葉が話せない部分もあったが、そこは、理事長と、市長がフォローしてくれた。


 思い出すことは辛いが、今は隣に全力でフォローしてくれる人がいる。

 本当にありがたかった。


 「最後ですが、今、このようなことを受けて、橋本君の、率直なお気持ちをお聞かせいただければと思うのですが。」

 マスコミの人達は頷いている。

 どうだろうか。マスコミの人達は大げさに記事を書くのだろうか。


 「そうですね。確かに、その時は、こんなことになったことを非常に後悔して、泣き叫んで、怒りの気持ちもありました。むしろ、それしかなかったといっても過言ではありません。でも・・・・・。」

 「でも・・・・・?」


 僕は正直に答えた。

 確かに最初はそうだったかもしれない。

 だが、マスコミの人達に聞かれて、整理すると、今、そんな気持ちが微塵もない。


 「はい。今は。こうして、立ち直ることができました。ここまでの過程で支えてくれた人、出会った人には感謝してもしきれません。むしろ、この学園でたくさんの人と出会うことができました。その点に関しては、こういうきっかけをくれた人に、感謝しないといけませんね。」


 最後は皮肉っぽかったかもしれないが、それが正直な気持ちであり、今の全てだろう。


 マスコミの人も、笑って頷いてくれた。


 一通りの取材を終え、理事長室を出る。

 今日お世話になった、理事長と、市長。つまり、葉月の父親と、加奈子の父親に頭を下げる。


 「おーっ、いたいた。橋本君。」

 僕が頭を上げた後、横から声がする。

 茂木が大きく手を振っている。これまでにない笑顔で。


 茂木は僕の目の前で、立ち止まり、持っていた紙を広げた。

 「賞状、関東ピアノコンクール金賞、橋本輝君。右は、関東ピアノコンクールに置いて、優秀な成績を収めたのでこれを賞します。」

 茂木はそう言って、僕に賞状を手渡してくれた。


 「あ、ありがとうございます。」

 僕は茂木に頭を下げる。


 「こちらこそ、遅くなってすまなかった。昨日の選挙の後、安久尾君の悪事がバレて、当然、このコンクールの審査員たちも賄賂を受け取っていたことが判明したんだよ。そして、新しい審査員のもと、大急ぎで採点して、君が金賞1位、全国出場だ。おめでとう!!勿論、緑さんも、全国出場だよ。2人で頑張ってね。」

 茂木は僕の肩をポンポンと叩いてくれた。


 何だろうか、今までもらったどの賞状よりも、それは重く、どの賞状よりも、特別な感じがした。


 居合わせた、理事長と市長から拍手をもらう。


 「良かったね。輝君!!」

 「本当に良かった。改めて君にお礼を言おう。ありがとう!!」

 理事長と市長は嬉しそうだった。


 すぐに生徒会室に向かい、マスコミの取材のこと、茂木から賞状を受け取ったことを報告した。


 「やったー!!」

 自分のことのように喜ぶ葉月。


 「「おめでとう!!」」

 「おめでとう、やったわね!!」

 結花と早織、そして史奈はニコニコ笑っている。


 「おめでとう、輝!!」

 加奈子は感慨深そうに言った。瞳の奥には嬉しさと、愛おしさがまじりあう。


 「ありがとう、加奈子。加奈子のおかげで。」

 加奈子は僕の言葉を遮って、抱きしめてくれた。


 「にへへっ、これで輝君と一緒に全国に行ける・・・・。」

 偶然遊びに来ていた風歌。ニヤニヤと嬉しそう。


 そうして、僕のマスコミに囲まれた長い一日が終わった。

 校門を生徒会メンバーと風歌で抜け、学校を出る。


 一日の終了はいつもの生徒会メンバー。

 ここがやっぱり落ち着く。


 そうして、それぞれ帰路に就く。

 僕も、コンクールの行きに使用した自転車を原田のバレエ教室に止めていたので、それを取ってから、家に向かった。


 風のうわさで知ったのだが、安久尾五郎は高校を退学になったらしい。

 そして、これまでの悪事がバレて、総スカンを食らっているそう。

 さらには、安久尾建設も含めて、多額の損害賠償の支払いで借金に追われているのだとか。

 そして、反町高校も、僕以外に安久尾や反町の手によって、無実の罪で退学になった人が居たそうだ。

 そのような人達からも、損害賠償が請求されているのだという。


 だが、僕はもう、知らないことだ。


 今ここに居る、仲間たちと、これからも頑張ろう。そう思える一日、いや、入学してからの日々を過ごしていたのだった。


最後まで、ご覧いただきありがとうございます。

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●現在執筆中の別作品もよろしければご覧ください。

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