11.葉月の家(理事長の家)
百貨店を出て、交差点を役所の方面へ向かうと、すぐに水路が出てくる。
水路には、桜並木があり。さらに、水路沿いには公園があり、入学したばかりの4月のこの時期は、今日も花見客でにぎわっていた。
「そうだ、桜の季節だったわね。ごめんね、輝君。ゲームセンターじゃなくてこっちに来ればよかったね。」
瀬戸会長が申し訳なさそうに言った。
「少し覗いて行かない?私の家は、この公園を横切ればすぐだから。」
と、葉月が言ったので、僕たちはその提案に乗ることにした。
本当に桜は美しかった。
ピンク色の桜は本当にこの町と、この公園を彩っていた。
「ここはね。城址公園といって、昔、お城があったんだよ。」
葉月が教えてくれる。
確かにところどころに城壁らしきものがある。
そして、公園のところにも一段高い場所があるのも納得だ。この高い場所が本丸か、天守閣の場所なのだろう。
「さっきの水路は城の濠。この公園やその先にある市役所とかを囲うように水路が流れているんだ。」
そういいながら僕に説明してくれた。
桜の花びらが、その濠の水に浮かんでおり、ピンクの絨毯を作る。本当に幻想的だった。
「本当に綺麗です。」
僕は素直に感想を言う。
「そうだね。小さいころから遊んでたな。この場所で。」
葉月は笑いながら言う。
「私も、よく来た。」
加奈子はそう言いながら同じように笑う。
そんな感じで、公園を横切り、少し行くと。マンションを含めた住宅街に突入する。
おそらく、駅から近いこともあり、この町の中では一番の高級住宅街なのだろう。
マンションや周りの家も明らかに立派な門があったり、厳重なセキュリティがあるようなマンションの入り口が目立つ。
その中の一つ。
大きな門のある家に、到着する。
立派な木でできた表札には『花園』と名前が彫られている。
「ここだよ。どうぞ。」
葉月はそう言いながら、門を開けてくれた。
といっても、大きな門は車専用の門であり、僕たちはその脇にある小さな門から入った。
さすがは理事長の家という佇まいだった。
僕が、その貫禄に驚いていると。
「まあ、代々花園学園を切り盛りしてきたからね。それに、周りの家と比べたら、うちは、そこまですごくないよ。」
葉月は笑いながら言っていた。
確かに、そりゃそうだよな。花園学園を代々切り盛りしていれば、それに相応しい、家だった。
門をくぐり、家の玄関に入る。
「ただいまー。お姉ちゃん。輝君だよー!!」
葉月は明るい声で呼ぶ。すると、葉月のお姉さんが出てきた。
「こんにちは、改めて、本当にありがとう。私も、子供もとても元気だよ~。」
葉月のお姉さん、つまり、僕が助けた妊婦さんは無事に出産して、元気になっていた。
「葉月の姉の、大野弥生です。結婚して、妹とは苗字も違うし、普段は違う家、丁度輝君の家の近くに旦那と住んでいるけれど、子供が生まれてからはしばらくここにいます。ゆっくりして行ってね!!」
弥生は笑いながら僕たちを迎えてくれた。
「本当に元気そうでよかったです。お邪魔してすみません。」
僕は頭を下げるが。
「気にしないで、私も会いたかったし。輝君ならいつでも、大歓迎だよ。今度はパパとママがいるときにまた遊びに来てね。会いたがっていたから。」
弥生はそう言いながら、僕たちを家に上がらせてくれた。
最初に小さなベッドがある部屋に上がらせてくれた。
ベッドの上には、弥生の息子、つまり生まれた赤ん坊もとても元気そうで、すやすやと寝ていた。
「赤ちゃん、無事でよかったね。本当に輝君。でかした!!」
瀬戸会長は僕の肩をポンポンと叩く。僕は少し顔を赤くする。
「か、かわいい。」
加奈子は赤ちゃんに見とれているようだ。僕と同じ、真っ赤な顔をして。
「さあ。ゆっくりして行ってね。葉月、お茶とか、お菓子とか用意するから、取りに来るのよ。」
弥生はそう言って、僕たちを2階の葉月たちの部屋に案内してくれた。
家の二階に上がり、葉月の部屋に入る。
葉月の部屋はとてもきれいに整理整頓されていた。
女性らしいそんな部屋だった。
「さてと。まずは、生徒会選挙に必要なことをおさらいしておくね。」
そういって、葉月と瀬戸会長は僕にいろいろと説明してくれた。
「で、推薦人の演説なんだけど、輝君、今日の出来事から、輝君の思うようにまずは話してみて。」
瀬戸会長はウィンクして、こちらを見ている。
僕は頷き、少し喋ってみる。
「この度、加奈子先輩の推薦人となりました。1年B組の橋本輝です。加奈子先輩は今年から共学になり男子生徒が少ない中で、僕を生徒会に温かく迎えてくださり、本当にありがたかったです。
また、勉強も優秀で、食事にも気を使っており、勉学、体調管理も本当によくできる人だと思います。
どうか、皆さんの清き一票をお待ちしています。加奈子先輩が会長になれば、本当にこの学校が温かい雰囲気になると思います。」
少し早口に、僕は喋ってみた。
「うん。うん。よくできました。初めて、そして、参考にする物がない中で結構よかったと思います。これでも十分演説会に対応できるかなと。ただ、温かく迎えてくれたのは、私と葉月ちゃんも含んじゃうから、生徒会でやってみて、加奈子の良さをもう少しアピールする必要があるかな・・・・・。」
瀬戸会長の目は笑っていた。
葉月も同じで、うんうんと頷いている。
当の加奈子は、恥ずかしがりながらも、照れながら頷いていた。
「そうしたら、ジャーン!!」
葉月が取り出したのはDVDだった。
「去年の演説会のDVDがあるので、みんなで見ようか。テレビがあるのは隣の広い部屋なので、そっちに行きたいと思いまーす。」
葉月はそう言いながら、僕たちを隣の部屋に案内した。
隣の部屋の扉を開けて、僕たちに入るように促すと。
「じゃあ。お姉ちゃんから、お菓子とお茶を取ってくるから、ちょっと待っててね。」
葉月はそう笑って大きな部屋を出て行った。
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