第????:4話
会社の人らが優しすぎてビビった今日この頃でございます。心配掛けんようにやってかないとなぁ。読んでくれてるひとも食事だったり健康だったりには気を付けて。
まぁそれはともかく投稿だオラァ!!
ピピピピッ。
『5時です』
「……ぅ」
軽快な電子音と共に、設定した起床時刻を告げる吹き込み音声が流れる。
ピピピピッ。『5時です』ピピピピッ。『5時です』ピピピピッ。『5時です』ピピピピッ。『5時です』ピピピピッ。『5時です』ピピピピッ。『5時……』
「……ん喧しいッ」
五月蝿い。果てしなく五月蝿い。
降りていた瞼を開き、瞳に光を取り入れる。
電子音と音声が、ピタリと止んだ。
「……くぁ……」
片手で口を覆いながら欠伸をして、辺りを見渡す。
遠くの高い山の向こうから仄かに漏れてくる日光に淡く照らされて、広場の全てが青みがかっている。早朝特有の光景。空の色だ。
山とは反対の方向にある空には、まだ星が見えた。
朝と、夜。その二つが混在する空の中間地点が、今、俺の頭上にある。
明るい空色から暗い藍色へ。暗い藍色から明るい空色へ。
移り変わるそれらの見せる素晴らしいコントラスト。汚染され過ぎた現在の日本の空では、こうも鮮やかな景色は見られない。
似た空は見れるかもしれないが……それでも、藍の空に浮かぶような星々と朝の明るい空が混じり会うこの姿には敵わないだろう。
透明感からして違うからな。明るい空にまで、うっすらと星が見える。
ベンチの背に凭れて上を見上げ、じっ……と空を見る。
次第に、二つの空の均衡が崩れていく。
ゆっくりと、藍が空色に侵蝕され……
「ーーようッ!! ブヘァッ!?」
美しい自然を観賞している俺の前に、ヌッ、とむさ苦しい男の顔が飛び込んでくる。反射的に殴った俺は悪くないと主張したい。
人の安らぎを邪魔する者こそが悪いのである。
「いって~……何でいきなり殴る!?」
「あ゛?」
「!? いきなりどうしたライン!?」
此奴、自分が何をしたのか分かっていないらしい。おめでたい輩だ。
ちなみに。『ライン』と言うのは、俺の『How』でのプレイヤーネームだ。とあるアプリからもってきたな? とよく言われるが、違う。
単なる偶然だ。
「お、お~い、ライン?」
「……すまんな、ナイガ。悪気はない」
「い、いや、別にいいぞ? ただ何が気にーー」
これはただ単に、そう。
お前が悪い。
「お前が悪い」
「ーー触ったのか、って何で!?」
あ。しまった口に出てたか。対応が面倒だぞこれは。
この不躾な奴は、ナイガ・トヴハンク。俺が此方に来て初めて出来た友人で、何時何処に居るかも分からない、神出鬼没な俺に付き合う、(一応)良い人間である。
「悪い、口が滑った」
「そうか……ん? それなら本音じゃねぇか!!」
チッ。気付くなよ。
「一体俺が何をしたと!?」
「朝の空の観賞という俺の安らぎを邪魔した」
「それだけで俺は殴られたのかよ。そんな珍しいモンデもないだろ?」
「そう思っているのはお前らだけだ。俺らの所ではもう見ることの叶わん景色なんだよ」
「そんなに汚れてんのか? そっちの空は」
「あぁ。季節が逆転するなどと言う数十年前の説が、与太話では済まなくなりそうな程だ」
それくらい現在の日本、いや、世界の環境は汚れている。これは空も例外ではない。昔の、世界を巻き込んだとある騒動のあとからずっと、環境をどうにかしようと議論が交わされているが、何処も自国のことでそれどころではないようで、今のところは誰も研究していない。
「うへぇ。こっちに遊びに来るわりに大変なんだな、来訪者の世界も」
来訪者、というのは。
この『イグニス』の世界において、他世界の存在を示す。
つまりは、俺たちプレイヤーのことだ。
そして会話からも分かる通り……俺の友人は、NPCである。
何故NPCが友人なのか?
それは、『How』のAIが高度すぎて、プレイヤーとNPCの見分けがつかなかったからだ。
商隊の護衛依頼を切っ掛けに知り合って話すようになったのだが、当時は全くの違和感なく、モンスターの弱点だったり面倒な点だったりについて語り合っていた。
護衛の依頼が終わり、ナイガの口から「最近やたらと来訪者が多いよな~」という言葉が出てようやく、俺はナイガがNPCであることに気が付いた。
この世界では、プレイヤーとNPCを見分ける紋章やカーソル等が存在しない為、この様なことがよく起きる。『How』のプレイヤーの間では、この事に敬意を表して、住人たちのことは『NPC』ではなく『イグニスの民』と呼ぶのが通例となっている。
「にしても、久しぶりだな! 大体2年半ぶりか?」
「? いや、百数年ぶり……おっと」
「はっ? ひゃ、百?」
「冗談だ。そうだな、2、3年ぶりだな」
ーーはは、盛大に間違えた。そうか、オンラインの加速倍率は三倍だったな。シングルプレイの高倍率でプレイしていると忘れそうになる。
「冗談に聞こえななかったんだが!? ……でもまぁ、百年も経ってないし冗談か」
「あぁ、そうだ。冗談だ」
「やたら冗談を強調するな?」
「気のせいだろう」
「そうか?」
「そうだ」
此奴、時折鋭くなりおるからなぁ。現実の彼奴もそうだが、疑われたらすぐにそれを払拭しないと不味いことになる。過去、それでしこたま掘り下げられた。その時はどうにかなったが、今度はどうなるか分からない。
気を緩められん。
「……ま、いいか。それよりこれからーー」
『おーい、ナイガ! さっさと行くぞー!』
ナイガの言葉を遮るかのように、噴水の向こうから声が飛んでくる。
今の冒険仲間だろうか?
「呼ばれたみたいだな?」
「ーーだな。言いたいこともあったんだが……じゃ行ってくるわ。またなッ」
「応、また」
呼ばれた方に走っていく姿にひらひらと手を振りながら、再び空を見上げる。
「また暇になったな」
あの移り変わっていく色は見る影もなく、ただ青く澄み渡る空だけが広がっていた。
ストック6話までしかないけど頑張ろー。フリーダム!!
プロットなんて書いてねぇぜ☆